第十九部「やっぱり金持ちは苦手」【ゆずるう】

※「山鹿 小栗(やまが こぐり)&雨宮 狛(あめみや  こま)ルート」→ゆずるうが終わったら可能



柚夏「...小栗先輩 ...ゆっくり休んで下さいね。」


雨宮「...お喋りは終わったかい?」


と、先程去っていった先輩が戻ってきた。


柚夏「...小栗先輩が弱っている時に、貴方は

   どこに行ってたんですか...。」


 仮にでもフィアンセと言っている大事な人を放置して、何処かに行ってしまうのは常識的にどうかと思う


雨宮「...ちょっと病院側に連絡を、ね。

   小栗君も君と話したそうにしてたし。

   ちょっと癪だけど君にその座を譲った

   って訳さ」


雨宮「...それに彼女、大の病院嫌いでね。こう

   でもしないと病院に行ってくれやしない」

雨宮「本当に困ったものだよね」


柚夏「本当に何をしてたんですか...」


 だからって、小栗先輩の目からわざわざ消える必要もないだろう。その場で電話すれば良いだけの話だ。


...それとも そうしなければならない理由があった...?


雨宮「僕には、ちょっとした能力があるから

   ね。遠くにいても聞こえるんだよ。他には?」


柚夏「...」


雨宮「...僕は今とても機嫌が良いんだ。だから、

   少しなら君の質問に答えてあげても

   構わないよ。」

雨宮「でも、回答はあまり期待しない方が

   良いと思うけどね。」


??「雨宮様。」


雨宮「...金は払っているだろう?

   僕に余計な会話は必要ない。その無駄な

   会話にも頭を使うんだ、やめてくれ」


??「はい。」


 突如現れた、黒服のスーツを着た女性達が小栗先輩を迅速に担架で運んでいった。


柚夏(明らかに医者じゃない人達でしたけど...)


雨宮「君は余計な質問はしない。そして僕は

   余計な回答しかしない。」

雨宮「お互いに余計な干渉は不必要だからね。

   最後に『僕は君が大嫌いだ』という」

雨宮「ありがたい言葉を授けようじゃないか。

   じゃぁね。」


柚夏「..."一言"余計なんですよね。本当に。」


 キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り響く。


柚夏「...呼び鈴!!、、...マズい!!」


 授業ぎりぎりで教室に滑り込み、なんとか遅刻はせずにはすんだのだが、


 結局最後まで授業には集中できずにぼーっとしたまますべての授業が終わってしまった。


柚夏(明日の夜、習復必須だなぁ...。)


柚夏(...美紗が古池グループと付き合ったり、

   朝乃先輩に会ったり...ナルシストの男装を

   した女性に敵意をむき出しにされたり...。)

柚夏(...それにしても、今日は本当に濃い

   1日だった...)


 チャイムが終わると同時に 後ろから声が掛かる。...けれど、今の私には美紗と話す《心の余裕》なんてなかった...。


美紗「柚...」


柚夏「ごめん、流雨に用事があるから...。」


 机の横に掛かっている手提げを持ちあげ、私は席を立つ。


柚夏「...本当に、 ごめん。」


柚夏(...友達に恋人が出来たなんて本当は喜ぶ

   べき事なんだろうけど...。)

柚夏(...けど、これじゃ...まるで、)


柚夏(...私が美紗を拒絶してるみたい。)


 その後、私は美紗から逃げるようにしてすぐさま2年生の教室へと急いだが


 結局流雨とも出会えず...。二年生の教室を後に、私はバイトへと向かったのだった。



※キャプション


 ...店にも寄らず、バイトからすぐに寮に帰宅した私は鉛の様に重くなった身体で布団の上に思いっきり寝転んだ。


柚夏「はぁ...」


 布団の上で仰向けになる私は、自分でも笑えるほど惨めだった...。


柚夏(弁当は購買で買えばいいか...。今日の課題は...)


柚夏「...そっか。...そういえば、明日休みだった」


柚夏(...どうして、こんな子供みたいなこと...

   それに感情...。)


...布団を強く、強く 抱きしめる。そうすると、少しでも安心できるから...。


柚夏「...もう、何も失いたくない。のに...」


瞳から、涙が零れる。...なんて自分は弱い存在なんだろう。


柚夏(...なんて、"醜い"存在なんだろう。)


眼を閉じると、もう一人の完璧でないと許せない自分が問いかけてくる...。


柚夏(私には何もない。)


柚夏「そんなの、分かってる...。」


柚夏(美紗がいなければ良かった)


柚夏(そんなことない...。)


 そんな事、ないと思う...。私は美紗に色々助けられて...だから...。美紗にとって私は必要なんだろうか


私が居なくとも美紗は


流雨だって。私が居るから悲しませてしまった


..."お母さん"


柚夏(...怖い。..."変わってしまうこと"が。

   変わってしまった...あの日から)

柚夏(何もかも。)

柚夏(こんな寂しがりやな自分も。ネガティブな

   自分も、、何もかも...。...大嫌...い...。)


※キャプション


??「こんにちは。柚夏ちゃん!!」


柚夏「...。」


いつの間に寝てたんだろう...。


薄目を開けて、声がする方に顔を上げる。


柚夏(誰...)


 魔法少女を思わせるような杖を持った少女が夢見る乙女のように目を閉じながら自分の両手を包み込むように深呼吸していた。


柚夏(...あ、...夢か)

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