秘めたる恋心（ひめこい）～あなたと私の不思議な夢物語～

第16章「倦怠期の理由、」【みさゆき】

　取り敢えず、調理室から出て屋運の前のベンチの上に座って貰って

　ジー…と赤い紅茶が白いコップに入ってくのを見ながら樹理先輩が座るベンチに持って行く。

美紗「樹理先輩、大丈夫ですよ。」

美紗「ここには誰も居ませんから…前

　　　飲んでた紅茶なんですけどこれ、

　　　良かったら」

樹理「美紗ちゃん…、ありがとう…。」

樹理「…ごめんね。私こんなかっこ悪い

　　　先輩で…」

美紗「樹理先輩は充分格好いい先輩

　　　ですよ。私が苦手な料理も

　　　ぱぱっと作れちゃいますし」

樹理「そうだね…、お皿割りそうに

　　　なっちゃうし…動揺して順番

　　　忘れちゃうし…」

美紗「ははー…大分堪えてますね…」

樹理「.....。」

　樹理先輩は紅茶を一口飲んでから、大きな溜め息をつく。

樹理「…最近ね、ナミが冷たいの」

樹理「私が他の子と話してると急に

　　　何処かに行っちゃたり...、一緒に

　　　いても私から遠ざかっていっちゃ

　　　う…」

美紗「…そうなんですか」

美紗（二人とも仲良さそうなのに...

　　　なんでだろ、）

　奈実樹さんの言ってた樹理先輩ならもっと良い子がいるっていうのがやっぱ関係してるのかな...、

　それが樹理先輩にとって避けられてるって思われちゃってるとか...?

樹理「私、失敗ばっかりしてるから…ナミ

　　　に嫌われちゃったのかなぁ…、、

　　　ナミに呆れられちゃったかな…、、」

　涙声で鼻を啜りながら、泣いてる樹理先輩。本当に心から奈実樹先輩が大好きだっていう気持ちが伝わってくる...。

美紗（樹理先輩は心配だよね...）

美紗「そんな事ないですって、奈実樹先輩

　　　は樹理先輩のことほんとに大事に

　　　思ってますよ。」

樹理「信じられないよ…、だってナミ最近　　

　　　なんか凄い機嫌悪そうだし、

　　　やっぱり私のせいなのかな…」

美紗「機嫌悪そう…?」

美紗(そんなにイラついてるようには見え

　　なかったけど…、お皿の時も子供を

　　叱る母親みたいな感じだったし…)

樹理「うん、...全部ラブレターは断ってる

　　　って言ったのに、凄い急に冷たく

　　　なって…、」

美紗「…えーと、ちょーっと雲行きが

　　　怪しいのですが」

樹理「樹理にはもっとふさわしい人が

　　　おるとか、なんでうちなんとか、、、」

樹理「...失敗ばっかしてるお前がなんで

　　　モテるんだって思われてるん

　　　だよねっ!?」

樹理「私ナミに好かれる為に、皆に慕って

　　　もらう優しい恋人になりたくて」

樹理「敬語で話すようにしてみたん

　　　だけど…、、」

樹理「やっぱり日本語がおかしかった

　　　のかなぁ、頭の悪い人とは付き合いたく

　　　ないなとか、やっぱり思うかなぁ、」

樹理「皆がナミを取らないようにって、

　　　一生懸命お洒落して皆に好かれる　　　

　　　ように努力したの。なのに…ナミは

　　　自分が…」

樹理「自分の事がどれだけ美人かナミは

　　　分かってないのっ!!この間なんて

　　　二年生の子と凄い仲良さそうにお

　　　話してて、あの子絶対ナミを狙って

　　　るよー!!」

美紗(あ、橘さんからシーウェブきてる。)

美紗(音声再生?　なになに…?）

晴華『これ二人で聞いてみて♪』

美紗(何だろう…?晴華さんのおすすめの

　　リラックス出来る音楽とか?)

樹理「私よりナミは多分あぁいう子の方が

　　　良いんだよね…、大人っぽくて

お洒落で可愛くて...」

美紗（樹理先輩も充分可愛くてお洒落です

　　　けどね...）

美紗「樹理先輩、これ橘さんから二人で

　　　聞いてみて下さいですって」

樹理「うぅ…、…美紗ちゃん

　　　私の話。ちゃんと聞いてくれて

　　　た…?」

美紗「再生しますね」

奈実樹「と...、言ってもなぁ...」

　黒い画面で音声を再生すると、奈実樹先輩と誰かが喋ってるみたいだった。

樹理「あれ?　ナミの声?」

??「お互い大変ですね…。自覚のない

　　恋人を持つと…」

樹理「...この声、小栗さん?料理体験の時に

　　　知り合ったんだけど、身体が少し

　　　弱い子で雨宮さんと仲良しの…」

音声を止めて、再度送り主を見る。

美紗(…あの人なんでこんな音声持ってる

　　んだろう、え...?というかこれ流して

良い奴...?)

樹理「ねぇ、ねぇ続きは?」

　樹理さんは続きが気になるのか私のスマホをじっと見詰める。

美紗「これ、聴いて良い奴なんです

　　　かね…?」

樹理「送ってくれたんだもん、多分

　　　大丈夫だよ」

美紗「それなら良いんですけど...」

　再生ボタンを再び押す私。

??「雨宮さんったら...ルシェルさんと

　　仲良くなった事、一切教えてくれて

　　なくてね…」

奈実樹「うちもやなぁ。というかこの間

　　　　なんかラブレター全部断った

　　　　言うてきてなぁ…」

奈実樹「いちいち報告するのも可愛い

　　　　んやけど、報告内容がなぁ...」

奈実樹「あんな顔して、うち以外に興味

　　　　ないのを見せたいんやろうけど」

奈実樹「恋人のラブレター貰ってどうしろ

　　　　いうん...捨てるわけにもいかんし

　　　　読んでちゃんと断れ言うたん

　　　　やけど」

奈実樹「ナミは私がその子と付き合って

　　　　欲しいの...?って泣きそうな顔で

　　　　言われてもうてなぁ...、」

奈実樹「いや、やからて樹理を好きに

　　　　なった子が可哀想すぎる

　　　　やろ...、」

奈実樹「そのわりに周りからはファンが

　　　　増えるし、もう樹理が何したい

　　　　かよぉ分からんくてなぁ...」

奈実樹「あの子小さい頃から可愛いかった

　　　　から髪とかよういじられとって、

　　　　あんまそういうの好きやない

　　　　はずなんやけどな...。」

??「何ででしょうね…?、でも彼女も

　　雨宮さんと同じくらい人気者だから…

　　やっぱり不安なんじゃないかしら」

奈実樹「多分こんな恋人がいたら絶対

　　　　別れたくないみたいなのをしとる

　　　　んやろうけど」

奈実樹「うちがそれで喜ぶ思うとるん

　　　　か、付き合ってからあの子に

　　　　無理させとる自分に一番腹立つ

　　　　んよ」

??「だったらそう言えば良いじゃない、」

奈実樹「でも樹理が悪いわけやない

　　　　しな...そんなんうちの勝手な

　　　　我が儘やろ」

??「女の子は我が儘を言って貰った方が

　　嬉しいものよ」

奈実樹「それが出来たらこんな事には

　　　　なっとらんよ。」

??「私が伝えた方が良いのならそれとなく

　　伝えておくけれど」

奈実樹「別にそこまでせんでえぇよ」

??「そうやってこのまま平行線上にして

　　おくの?」

??「私はもっと自分に素直になっても罰は

　　当たらないと思うわよ。」

奈実樹「...小栗はんが言うと説得力が

　　　　違うな、」

??「...まぁ、私は向こうが何で私の事が

　　好きなのかは分からないけれど」

??「貴女達はお互いが思いあってるように

　　見えるから。ちゃんと伝えておいた方

　　が良いと思うわ」

奈実樹「せやなぁ…。うちは樹理の事

　　　　今でも相変わらず...な、つもり

　　　　やけんど、樹理の方は....どう..

　　　　やろな…ﾌﾞﾂｯ」

美紗「急に悪くなるね、回線…

　　　そして、データが消えていく

　　　周到さ…」

美紗（…あの人本当に何者なんだろ、、）

樹理「...ナミ、」

　奈実樹さんの本当の気持ちを知った樹理さんは良かれと思ってした事が裏目にでてて泣きそうになっていた。

美紗「樹理さんも、奈実樹さんが好きで

　　　した事だって分かればきっと許して

　　　貰えますよ」

樹理「でも、こんなナミが私のこと

　　　好きでいてくれたなんて...、、」

美紗「言われないと分かりませんよね、」

　いや、私が言うよりも本人の言葉を直接聞いた方が効果はあるんだろうけど…

美紗(…なんか、全部橘さんに良いところ

　　もってかれた感…、)

樹理「美紗ちゃん、今日は相談に乗って　　　

　　　くれてありがとう。私、ナミの良い

　　　お嫁さんになるために頑張るね、」

美紗（いや私ただ貰った音声録音した

　　　だけなんですけどね...）

と、樹理先輩はそう言いながら笑顔で両手を使ってガッツポーズする。

美紗「あはは…私も樹理先輩の力に

　　　なれて良かったです」

　でも、樹理先輩がすっかり元気になったみたいで良かった良かった。

　…それに、アリスには泣き顔は似合わないもんね。

樹理「美紗ちゃんもお友達と仲直りするの

　　　頑張ってね。大丈夫、きっと上手く

　　　よ」

樹理「だって、こんなに優しい美紗ちゃん

　　　だもん。私がそのお友達なら、

　　　絶対手放したくないって思うから」

美紗「…樹理先輩、…ありがとうござい

　　　ます。…今の言葉。凄く、嬉し

　　　かったです」

美紗（あと笑顔めちゃめちゃ可愛い

　　　な...、これは奈実樹さんも可愛いと

　　　思うよね...）

美紗「…取り敢えず、明後日、今日作った

　　　お菓子を柚夏に渡して謝ってみます

　　　ね。」

樹理「絶対仲直り出来るよ、なんて

　　　たってナミが作ったレシピだもん」

美紗「…あはは、そうですね。柚夏には

　　　奈実樹さんの本場の味を食べて

　　　欲しいですから」

樹理「その子は美紗ちゃんにとって凄く

　　　大切な友達なんだね。美紗ちゃんの

　　　お友達の柚夏さんってどういう子

　　　か聞いても良い?」

樹理「美紗ちゃんと同じ一年生の子?」

美紗「はい、同じクラスの私の親友です。

　　　見た目は…黒髪で背が高くて、

　　　一言で言うと…イケメン姉御みた

　　　い…な…?」

樹理「柚夏さんはボーイッシュ系な子

　　　なんだね。」

美紗「そうなんですけど、ビックリする

　　　くらい女子力高くって。前なんて、

　　　ほつれたボタン付けてくれて...」

美紗「ほんと、生きるお母さんなんですよ」

美紗（お母さん生きてるけど）

樹理「あ、それ分かる。私もボタン取れた

　　　時ナミが直してくれたんだ、」

樹理「ナミはどっちかというと寡黙な

　　　お父さんみたいな感じだけど...////、」

美紗「なんというか、もう。凄い、

　　　優しいんですよね…、」

樹理「分かるよ。母性がある世話好きの

　　　人って本当にたまらないよね///」

　そうして、世話好きの人の良いところについて樹理先輩と私は結構な時間まで語り合ったのでした。

※キャプション