②京都編【みさゆき】


※キャプション


カランカラン...!!


おじさん「おめでとうございまーす!!

     京都旅行、京都旅行!!当選致

     しましたー!!一等でーす!!」


 ちょっとくすんでる金色の小さい玉がコロンと私の目の前にあって...


 商店街のおじさんが銅のベルを片手に満面の笑顔で拍手していた...。


美紗「...え?」


 そろそろ夏休みも終わってしまう8月の下旬。いつもお世話になってるお手伝いで、


 食材を買い物袋に入れてたら、お母さんから福引のチケットを貰って


「はい、美紗ちゃんにチケットあげるわね」とにこにこの笑顔のお母さんの期待を裏切る事は出来ず....。


 「うん、ありがとうお母さん」と普通にポケットティッシュだと思って、福引き券を回してたんだけど


美紗「ええぇっぇええええっ!?」


...まさかの大当たりを、...引いてしまった。


※スライド


駅員さん「チケット、頂戴致しますね。

     ご乗車誠にありがとうございます」


 京都の日帰り旅行、3食付きの新幹線代。豪華な指定席での3人分のチケットを駅員さんに手渡す...。


 なんというか、嬉しいっていう気持ちより福引の商品って本当に当たる事あるんだっていう驚きの方が強かった。


美紗(...でも、折角当たったんだからちゃんと

   楽しまなきゃだよね!!)


美紗(チケット見てるだけでなんかテンション上がっちゃう。京都っていえば八橋かな?

   お土産に買っていったら、皆喜んでくれるかな)


美紗(...えへへ///)


美紗(帰りのチケット、落とさないように

  ちゃんと封筒の中に入れてっと...)


柚夏「本当に良かったの?美紗?」


美紗「ん?何が?」


柚夏「何がって。これ、全部...指定席での京都の新幹線旅って...、

   お弁当も付いてるし...安くないでしょ?

   私、半分くらいなら出せるけど...」


美紗「柚夏もそろそろ誕生日だし。ちょっと

   早いけどこれが私のプレゼントって 

   事で。おめでとう、柚夏!!」


柚夏「あー、そういえばもうそんな日か...。

   普通にバイト入れてたなぁ...でも、ありがとう

   美紗。本当に嬉しいよ」


 誕生日の近い柚夏にも何かしてあげたかったし、これで良っかなって

 

 恋人の流雨さんを誘って、私も雪音と2人で行く気満々だったんだけど...。


美紗(あ、通知来てる...)


 雪音に話したら、モデルの橘さんも丁度お仕事がお休みだったみたいで

観光したいとの事だったので


 そのまま雪音と向こうで待ち合わせ

することになった。


美紗(雪音も楽しみにしてくれてたら嬉しいな)


雪音「「無理などしていませんよ。本日は予定

    なども特にありませんでしたから」」


雪音「「それに観光は絵画を描く柔軟な

    発想にも繋がるとも存じておりま

    す。お婆様の受け売りですが...」」


美紗(あは、は...雪音は相変わらず、

   真面目だなぁ...。)


「「休みの日くらいゆっくりしても良いんじゃ

  ないかな?たまには絵の事を忘れて、気持

  ちをリフレッシュさせるのも大事だと

  思うから」」


雪音「「でしたら何もかも忘れるくらいに

    どうか、本日は私を感じさせて下さい

    ね。楽しみにしています」」


美紗(...わざと、なのかなぁ...///?)


美紗(......。)


...とりあえず、スクショを撮っといた。


「「グループチャットでモデルの橘さんが

  入室しました」」


晴華「「楽しみだねー」」


美紗(あ、橘さん...。)


晴華「「海はお仕事でどうしても行けなかった

    から、こうやって皆で一緒にお出かけ

    出来るの本当に嬉しいよー♥️」」


雪音「「ですが、チケットがよく見つかりま

    したね?」」


雪音「「期間限定のチケットのはずですから、

    個人的にはファンの方からのプレゼン

    トかオークションなど入手先が

    とても気になるのですが...」」


晴華「「純粋に応援してくれてるファンの人

    にそんな催促みたいな事しないよー」」


美紗「「どうやって手に入れたんですか?」」


晴華「「乙女の秘密♪」」


雪音「「そう言って晴華さんが勝手に

    ツアーの予約をとってきて

    しまいまして」」


雪音「「ですので杏里さんと御一緒したくて、

    私がチケットを取得した訳では...」」


「「Σ(´Д`)?!」」


雪音「「なるほど。顔文字はそのような時に

    使うのですね、参考になります。」」


美紗(もぉ...、わざわざ言う必要ないのに...

   媚を売らない雪音、ほんっと...

   可愛いっ...///)


 スマホをスリープモードにして、窓から見える

景色を見てると柚夏が話しかけてくる。


柚夏「いや...、でも高校生三人にしては

   豪華過ぎない?大丈夫なの?」


美紗(んー、やっぱり気になる...?)


 福引で当たりましたーって、誕生日プレゼント

が運で引き当てた物だったっ分かったら

柚夏、ガッカリしないかな...?


美紗「どうしても、知りたい...?」


美紗(ま、誕生日には別の何かあげれば良いし。

   柚夏って何あげたら喜ぶんだろ...?)


柚夏「闇金にでも手だしたの?」


美紗「ある意味、そう...。私は法の抜け穴を

   発見してしまったのかもしれない...」


柚夏「...はぁ、...冗談はいいから、勿体

   ぶらず早く。...答えて」


美紗「えー、それを考えるのが面白いのに...。まぁ、でも分かったら逆に凄いかも」


美紗「たまたま、お母さんと買い物に行った時に福引きを回したんだけど...」


美紗「1等の京都の旅行券の福引き券が

   当たったから柚夏も誘ったんだよ」


柚夏「冗談でしょ?...確かになんで

   チケットなのかなとは思ったけど...。」


 んー...、と何か考えるように柚夏は顎に手を当てながら少しだけ申し訳なさそうな顔でこっちを向く。


柚夏「...けど、ご両親とじゃなくて良かった    

   の?私と流雨で」


美紗「うん、私は家族皆で行きたいから。折角、プレゼントをするんなら

   自分で稼いだお給料で皆で行きたい

   なって」


美紗「運に頼ってばっかじゃなくっ

   て、私自身の力で皆に恩返しした

   いから」


柚夏「...親孝行だね。良いと思うよ」


 そう言った、柚夏の瞳はなんだか少し寂しそうで...。


美紗(あ・・・、柚夏にはご両親が居ないから...)


柚夏「やめないで良いよ。お互い気を使うのも疲れるし、そういう幸せそうな家庭の話を

   聞くのも悪くないし、ね。」


と、寝ている流雨さんの顎を優しく撫でながら答える柚夏...。...柚夏はきっと、気付いてないと思うけど


 流雨さんと出会ってから前よりずっと優しい顔が増えた気がする、


美紗「......」


美紗(...良かった、柚夏にも新しい家族

   が出来たんだね。)


美紗「一応家族で行くのも考えたん

   だけど」


美紗「美紗も女の子同士の方が良いだろう?

   お父さんの事は良いから3人で楽しんで

   きなさい。って言われちゃうの、分かる

   から」


美紗「...そういうの嫌なんだよねー。...あっ、

   でも柚夏とも行けるのも私凄く嬉しい

   んだよ!?これは本当だからね!?」


柚夏「...美紗が嘘を付けるほど、器用な子でも

   ないっていうのは私もよく知ってる

   からね。大丈夫、ちゃんと分かって

   るよ。」


※スライド


新幹線から降りて、真っ先に巫女さんの服を着た縁蛇さんが

「こっちですよー!!」と大きな声で手を振りながら待っていた。


美紗「わぁ...、巫女さん...」


美紗「...って、縁蛇さんっ!?!?」


縁蛇「縁蛇は実家が神社ですからねっ!!蛇神が宿ってる

   縁蛇からすれば巫女をしているのは当然と言えば

   まぁ、当然なのですよっ!!」


美紗「でも、蛇神様かー、蛇の神様って

   言ったらやっぱり白いのかな?」


 蛇の神様って聞くと...瞳が赤い大きくて真っ白な鱗の蛇が人の言葉を喋ってるってイメージだけど...。実際はどうなんだろう?


 私はそういうのは全然分かんない人だけど、巫女さんの縁蛇さんならやっぱり色んな神様も見えてたりするのかな?


縁蛇「神の使いの白蛇様は確かに白いですけど、あの人は...

   金色の光に包まれててどっちかって言うと...。」


縁蛇「え?...あ、なるほどっ、白銀のように光輝き、人の言葉では言い表す

   事が出来ないくらい神秘的と申せ...らしいです!!」


美紗「へぇ、そうなんだ...」


美紗(申せ?)


縁蛇「...この小娘は懐かしい匂いがするって、

   さっきからストーカーみたいに!!じっと見て、気にして...」


縁蛇「...あ、そ、そうでした。...るような気がします!!」


美紗(...神様みたいな人とお話してるの、...隠そうとしてるのかな?

   すっごい、バレバレだけど...)


美紗(......)


美紗「...って、縁蛇さんなんでこんな処にいるの!?

   此処、京都だよねっ!?」


 あれ!?降りるとこもしかして、間違え...?!


美紗「...て、ない...?」


 ホームの電光掲示板にも、ウェルカム京都って書かれてるし...。


美紗「え?なんで...?縁蛇さんが此処に

  ?」


縁蛇「ちゃんみささん、よくぞいらっしゃいましたねっ!!

   いやー、奇遇ですよっ!!縁蛇の実家は実は京都だったん

   ですねっ!!知ってましたか?!」


美紗「そ、そうなんだ...。そういえば縁蛇さん実家に帰るって

   言ってたもんね。」


縁蛇「縁蛇も驚きなのですよ!!凄いですね!!」


 満面の笑みで私の両手を掴んで、上下に振り下ろす縁蛇さん。

 

なんとなくだけど、縁蛇さんいつも以上にエネルギッシュでテンション

が高い気がする。


私も久々に縁蛇さんと会えて嬉しいし、

縁蛇さんもそう思ってくれたなら幸せだな、


美紗(...あは、は、こんなに喜んでくれると嬉しいな)


 ...でも、まさかそれが2分以上続くとは思ってなかった。


美紗「...え、...縁蛇さん」


 縁蛇さんは身体全体で喜びを表現してくれてるのは嬉しい...、...けど...


美紗(身体が上下に揺れ、て...よ、酔う...)


美紗(この人、見た目の割に力強く

ない...!?私...

   乗り物乗った後っ...!!)


美紗「え、縁蛇さん、...ご、め、酔う、から...」


 バシッと、腕を掴み笑顔でにこにこと同じように巫女服を着た女性が微笑みながら腕を引き離す。


美紗(た、助かった...。このまま続いてたら、折角の

   京都旅行で開幕早々、吐いてたよ...。)


??「ようこそいらっしゃいました。...ですよ、

   縁蛇。何故、貴女は間違った敬語を

   そのまま覚えてしまったのです...」


 神秘的でお淑やかそうな女性は、やれやれと困ったような顔で言った。


??「私の目の前でやられると、貴女の母

   である私に止める義務が発生しま

   す!!」


??「つまり、そういうのは私が見てない

   ところでしなければなりません。

   分かりましたか?縁蛇」


縁蛇「了解なのです!!団長!!」


美紗(あ、この人。絶対、縁蛇さんのお母さん

  だ...)


??「今日ご案内して頂く、嶺原(みねはら)と申します。

   と言っても、ただの幹事ですからご自由に回って下さい」


縁蛇「と、言っても実際は毎年毎年めんどくさいだけなのですよ」


嶺原さん「その通りです縁蛇。ですが、例えそう思っていたとしても決して

     本音を人前で言ってはならないのです。

     それが、社交辞令ってものですよ。縁蛇」


嶺原さん「貴女が何も言わなければ私は神秘的で美人な貴女の

     母親なのです。その邪魔を絶対にしてはなりません

     良いですか?縁蛇」


縁蛇「最優先事項ですね!!」


嶺原さん「その通りです。」


美紗(...いえ、もう大分、...台無しになっちゃってる

   ような...)


嶺原さん「...このチケットは屋台での千円分に   

     なりますので、好きな物を食べて下さいね。」    


嶺原さん「16時頃には料理が出来上がっていますので、」


白館さん「それまでには境内に必ずいらして下さいね。

     ...私からは以上になります。ごゆっくり京都の旅を」


と、巫女さんから100円分のチケットが10枚付いている

クーポンを受け取って、私達の京都の旅は始まりを告げたのだった。


美紗(16時、かぁ...。時間に遅れないようにアラーム

   かけとこーっと)


※キャプション


 雪音との待ち合わせの時間が来るまでの間、集合場所である神社の階段に座りながら私達は話していた。


柚夏「...中々、凄い巫女さん達だったね」


美紗「まぁ、縁蛇さん...だから...。という

   か...、...なんで、柚夏さん...階段

   こんな...急なの、平気なの?」


柚夏「鍛えてますから。...流雨は?」


流雨「ん...」


 流雨さんは神社が物珍しいみたいで、さっきからうろうろと蛇の石や池で泳いでる鯉をぼーっと眺めてる。


美紗(さっきまで一緒に休んでたのに...流雨

   さん、回復早いね...。見た目に反して

   わりとタフなのかな...)


柚夏「というか美紗の体力がないだけだよ」


美紗「うぇえー...」


美紗「もう限界ー。背中汚れちゃうけど、

   ...まぁ、いっか、」


 境内の方へとぐたーっと倒れ込むと...すっと涼しい風が通り抜けていく...


美紗(あ、涼しい...)


 柚夏も私の隣に座って、両手をつけて後ろに

凭れかかる。...なんか、こういうのって良いな。


柚夏「...美紗って、結構色んな人と知り合ってるよね。前は私だけだったのにさ...」


柚夏「私も流雨と出会ったり...此処4ヶ月で

   ...本当に色々あったよ」


柚夏「美紗と喧嘩したり、流雨を助けて貰った   

   り、海に行ったり...。さ、...でも

   色々あったけど楽しかったな」


美紗「そうだね。私も雪音に会ったり、生徒会

   の人達と出会って...樹理先輩達と柚夏に

   あげる和菓子作ったり...、」


美紗「色々あったなぁ。...だから、ちょっと変だけ

   ど、あの時柚夏と喧嘩して良かった

   なって。今では思ってるんだよ?」


美紗「柚夏のほんとの気持ちも知れたし、」


 身体を起こして、柚夏の顔を見る。...私の大好きな親友。料理も出来て、皆からも慕われてて


 あの時、柚夏って本当に凄いなって思ったんだ。


 ...そんな完璧な柚夏にも悩みがあって、そんな柚夏を見て


 私の見てる世界はこんなにもちっぽけな物だったんだなって思い知った。


 でも...。それでもやっぱり、最後には二人で分かり合う事が出来て...、笑い合う事が出来て


 皆が手伝ってくれたから、...柚夏とまた仲直り出来たんだ。


美紗「...強く願えば、思いは必ず伝わるっ

   て柚夏が教えてくれたから」


美紗「柚夏と仲良くなるために色んな人が助け 

   てくれたんだよ。まるでそうなるって

最初から決まってたみたいに」


美紗「だから、柚夏もあの時。

   本当の気持ち言ってくれて」


美紗「ありがとね。柚夏っ」


柚夏「...こちらこそ。」


 そういって、二人で拳を合わせて笑った。


柚夏「私も美紗と親友で

   良かったって思ってるから...。...なんか、

   こういうのって面と向かってやると...

   照れるな...」


美紗「えー、...柚夏が最初に始めたんじゃん

   ー」


※キャプション


晴華「皆、行ってらっしゃいー」


 熱中症で倒れてしまった朝乃先輩とにこにこ顔の橘先輩は境内の中で休んでから行くそうで、二人の時間の邪魔をしないように私達は境内の外から出て出店を回ることになった。


美紗(あは、は...半ば強引だったけど...。)


美紗「うん。16時までには此処に集合で、

   別々に行動して戻ろっか」


柚夏「そうだね。全員で回るのも二人に

   悪いし、それが一番良いかもね。そっち

   も熱中症には気をつけなよ?」


美紗「うん、途中でジュースも買おうと

   思ってたし。それにペットボトルの

   お茶もまだ残ってるから大丈夫」


柚夏「特に古池さんなんて、暑くても顔には

   出さなそうだから」


雪音「自分の体調管理は自分で致しますよ」


柚夏「だったら良いけど...」


美紗(...心配性の柚夏と束縛されるの嫌いな

   雪音だとやっぱり...相性は悪いのか

   なぁ...。二人とも頑張って)


美紗「でも、確かに雪音は人前であまり

   そういうの出したがらないから...。

   今日はそういう雪音も見れるように

   頑張るね」


美紗(...今から二人きりだし、...あんな事

   言われちゃったらね。雪音って出店

   回るの初めてって言ってたし...)


美紗(物珍しそうな雪音も絶対、可愛いと

    思うから...楽しみだなぁ...///)


雪音「「そういうの」とはよく分かりません

   が、甘味はご遠慮願いますね。」


美紗(下心やっぱり読まれてらぁ...、私って

   考えてる事、そんな顔に出るタイプかな...)


美紗「そ、そうだね...。気をつけないようにしな

   いと。でも...、たまにはこういう所で

   恋人と二人っきりっていうのも良いよ

   ね。雪音」


雪音「...貴女がそう思って下さっているの

   ならきっとそうなのでしょう」


雪音「発想力の転換の観光が本来の目的です

   が、仲の良い方と共に観光をするのもたまには

   悪くないですね。」


美紗「...雪音。」


美紗(デレ期来た...?)


雪音「何か変な事、考えていませんよね...?」


美紗「いえ、滅相も御座いません。」


 横幅の広い神社の階段を下っていくと、楽しそうな人達の賑やかな声が聞こえてくる...。


美紗(良いなぁ、この楽しそうな雰囲気...、)


美紗「初め来た時は出店に人も居なかった

   からちょっと寂しかったけど、  

   今は如何にもお祭りって感じだね。」


柚夏「じゃぁ、此処で私達は左側に行くけど...

迷子にならないようにね。美紗」


美紗「雪音が居るから流石にそれはないよ」


柚夏「...迷子になる否定をまずしようか...」


 4人で階段を最後まで降りて...。柚夏と流雨さんに別れを告げてから、私と雪音は二人で西方面に歩いて行ったのでした。


※スライド


雪音「なる程、これが的屋(てきや)ですか。

   色々な種類のお店がありますね」


美紗「的屋?出店の事?」


雪音「いいえ、お店ではなく商品を販売して

   いらっしゃる方々の事です。縁日という

   大きなイベントをテーマにし、表現する

   とこういったものになるのですね」


と、雪音は出店の商品というよりも並べ方や飾りの方に興味があるみたい...。


美紗(うーん...まぁ、そういうのも良いと思う

   けどやっぱり食べ歩きながら見るって

   いうのが、ね?)


美紗「雪音、さっそくだけど買ってもいい?」


雪音「えぇ、勿論構いませんよ。私はあちらでお待  

   ちしておりますね」


美紗「いや、はぐれちゃうから駄目だよ。これ

   だけ人が多い所だと雪音みたいに

   綺麗な人だとナンパされるかもしれ

   ないし」


 はぐれないように雪音の手を握ろうとすると、雪音は「こうするのです」と一言述べてから


 エスコートされるお姫様のような仕草で手を添えた後、私の手を握る。


雪音「エスコートは、このようになさるの

   ですよ。」


美紗「あは、は...雪音には敵わないね。

   ...分かった。優しく、だよね?」


雪音「その通りです。」


美紗(...雪音も前よりして欲しい事言って

   くれるようになったし。少しずつだけ

   ど確実に心を開いてくれてる、)


美紗(私はそれが何よりも嬉しくて、幸せ

   だから...。これが、人を好きになるって事

   なのかな...?)


美紗「雪音も何かゆっくり見たい物あったら

   私に遠慮しないで良いから、言って

   ね」


美紗「それに今日は何もかも忘れるくらいに   

   感じさせるって約束したもんね」


雪音「それは私が冗談で返した言葉であって、

   本気の言葉では...」


美紗「私は本気でそうしたいって思ってるよ。」


雪音「...」


雪音「...分かりました、...なるべく杏里さん

   の近くに居るようにしましょう」


 雪音とたこ焼き屋さんの前に並んでいると、良い匂いと一緒に熱い熱気が此処まで漂ってきた。


美紗「おじさん、たこ焼き一つ下さいー

   8個入りでお願いします」


おじさん「あいよー」


 生地の中にマヨネーズを入れながら、くるっくるっとピックを回している屋台のおじさんの様子を見ながら


今か、今かと待ちわびる。

  

美紗「これ中にマヨネーズが入ってるよ

   雪音!!美味しそうだね...!!」


雪音「たこ焼き...。名前はお聞きした事は

   ありますが、...このように出来て

   いらっしゃるのですね」


雪音「真夏にこのような熱気の中、熱中症で

   倒れたりしないのでしょうか?」


おじさん「あい、お待ち!!はい、8個ね」


 屋台のおじさんにチケットを手渡して、あつあつのたこ焼きと交換してもらう。


 ソースの美味しそうな香りと鰹節の香りが袋の中から漂ってきた。


美紗「ありがとうございます!!

   ごめんね、雪音。待たせちゃって」


雪音「そこまで杏里さんがおっしゃるので

   したら味も太鼓判の事でしょう。私も

   購入致しましょうか?」


 と、雪音は財布を取り出して銀色の鉄で出来たカードを取り出す。...あれ?雪音もさっきチケットを貰ってたはずなんだけど...。


美紗「雪音、屋台では基本的にカードは

   使えないよ。チケットはどうしたの?」


雪音「なるほど、本当に利用が出来ないのです

   ね。事前情報はありましたので現金は

   持ってきていますよ」


 と言って、雪音が鞄から取り出そうとした財布は普通の分厚さの財布ではないのが一瞬見えたので急いでその場から離れる。


美紗(...やっぱりあの中、...全部本物だよね?

  雪音って普段しっかりしてるから、こう

  いう事急にされると普通にビックリするんだけど...。)


美紗(天然の規模が大きすぎて、理解が

   追い付かないのもあるかも...)


雪音「どうかなさいましたか?」


美紗「雪音に今からとても大事な話をしなきゃいけない

   の。急な話でとても信じられないと思うけど...」


美紗「普通の高校生は財布の中に一万円

   入ってたらかなりお金持ちの部類

   なんだよ...、バイトをしてる子とか以外、」


雪音「...一桁間違えていませんか?」


美紗「それが高校生の現実なの。」


雪音「......。」


雪音「...千円冊は持ってきていないですね。

   基本的にそういったものは晴華さん

   が購入していますから」


美紗「チケットは持ってないの?」


雪音「晴華さんが持っていますね...。」


美紗「一緒に食べようと思って、多めに

   頼んだから美味しかったらもう一個

   買お?」


美紗「お金は私が出すからさ」


雪音「...いえ、月額一万の杏里さんから

   雀の涙を頂くような真似は...

   そこまでして食べたい訳でも」


美紗「いやこれチケットだから大丈夫。

   無料チケット、1000円までは

   このチケットで交換して貰えるの」


雪音「.....。」


美紗「間接キスが嫌なら。爪楊枝も使って

   良いし、味見して買った方が良いと

   思わない?」


雪音「いえ...、問題はそちらではなく...、」


雪音「私が食べればその分貴女の食べる

   数が減ります。」


雪音「...杏里さんがそこまで喜んで食べている

   物を人には差しあげたくはないでしょ

   う。貴女にとってそれは損害でしかあり

   ません」


雪音「私が購入すれば、貴女に損はない

   はずです。一万円あれば足りるの

   でしょう、」


雪音「初めから何故そのような提案を

   なさらないのですか」


美紗「雪音はもし此処に居るのが私じゃな

   くて、晴華さんだったら...同じ事言って

   た?」


雪音「...それは、...彼女は受け取らないと

   泣いて悲しむので」


美紗「それと同じだよ。私も雪音と一緒に

   同じ物を食べたかっただけ」


美紗「雪音が喜んでくれるなら。私には

   それだけの価値があったって事

   だから」


雪音「...なるほど、貴女の言いたい事は

   分かりました。未来への投資

   のような物ですね。」


美紗(ちょっと違うけど...今の雪音に

   言っても分からなそうだし、)


美紗「雪音、あーん...」


雪音「貴女は人のお話を...んっ、

   あつっ...」


美紗「...ねっ?、美味しいでしょ?」


雪音「...貴女は本当に...強引ですね。」


雪音「....」


雪音「...確かにお値段、以上には

   その...美味しかったです...。」


美紗「もう一個いる?」


雪音「いえ、...もう大丈夫です。」


美紗「人多いけど平気?」


雪音「...いえ、此処まで密度が高いのは初めて

   でしたので少しだけ驚いているだけです

   よ」


美紗「丁度、木陰で涼みたいなって思って

   たし。あっちでちょっと休もっか」


※キャプション

 

美紗(ベンチもそんな汚れてないし、...うん

   これなら座れそう。近くに丁度良い

休憩場所があって良かった、)


雪音「気を使わせてしまいましたか。私も

   まだまだですね...」


 途中で買ったペットボトルを片方雪音に渡して、ベンチの上に座る。


雪音「貴女にそのように思わせてしまった

   私にも原因はあるでしょう」


雪音「誘拐されてからというもの、

   一人で買い物をするといった機会も

   なくなりましたから」


雪音「晴華さんが側に居ないと...私は

   満足に買い物ですらこなせない

   のです。」


 どうやら雪音はさっきの出店での行動をかなり気にしてるみたいだった。


美紗「事情が事情だからしょうがないよ」


美紗「最近はカード払いの所も増えてる

   し、屋台はそんな大きなお金を

   出して払うとこじゃないから」


美紗「一万円あれば充分色んなのが

   買えるよ」


美紗「ただ屋台って人通りも多いから

   大金を持ってるとスリとかにも

   狙われやすいんだよね。」


美紗「だからその財布はあんまり

   見せない方が良いかも」


雪音「...その辺りは貴女にお任せ致します。」


美紗「楽しくするって約束したもんね、」


美紗「此処で一万円だけ出しとこ。

   財布はしまったままね、」


 普段の雪音にとってはカードで物を買うのが当たり前だったりするのかな。


美紗(さっき本当にカードで買えないのですね

   って雪音、言ってたし...それにカードで

   お金払うのって大人っぽくて良いよね)


美紗「でも雪音初めて出店に来たって言って

   たし、そこまで気にしなくても良いと思うよ?」


美紗「雪音だって私と同じ人間でしょ?」

   

雪音「同じ人間ですか、...貴女はその

   ように私の事を思うのですね」


雪音「ですが...相手の手を煩わせるなど、

上の立場の人間はいかなる時にも常に冷静でいなければ

ならないものです。」


美紗「でも、涼みたいって思ってたのは

   本当だよ。人通り多いところは暑い

   しね...ふぅ...」


雪音「ですが貴女が私に気を使ったと

   いう事も確かな事実のはずです。

   ...違いますか?」


美紗「うーん...」


美紗「確かに0とは言わないけど、それ

   でも人の好意に甘えるのって

   かならずしも悪い事なのかな...?」


美紗「断ったら断ったで向こうも後悔

   するでしょ?迷惑だったかなって」


雪音「ですが、それをまた当たり前の

   事だと思ってもいけないというのも

   事実です。」


雪音「ただより高い物はありません


雪音「私にとってはその事がどの

   ような論文よりも遥かに困難である

   と言う事もご理解頂けたら幸いです」


雪音「私は貴女が思っているよりも出来た

   人間ではないのですよ。」


美紗(人が信じられない、って事か...)


美紗(...でも、人の好意を素直に受け取れない

   のって分かるなぁ...私も初めはそう

   だったから...)


美紗(なんだか、気を使って貰ってるのが

   申し訳なくて。私なんかにどうして

   皆優しくしてくれるんだろって

   ずっと思ってたし)

 

美紗「雪音はどうしてそう思ったの?」


雪音「私の眼に映るものはすべて無機質な

   ものでしかないためです。...恋愛をすれば

   何か分かる事があるのかもしれないと」


雪音「本の内容を試してはみたのですが、自分

   ですら一体何をしているのかよく分から

   なかったというのが現状です。」


美紗「本...?」


雪音「此方です」


美紗「恋愛心理学...」


 雪音から手渡された本の表紙には恋愛好きの女の子が好んで読んでそうな言葉が沢山並んでる本だった。


美紗「雪音もこういう本読むんだね。」


美紗(なになに...、恋愛では常識!!理想の

   恋愛をするためにとるべき行動

   とは!?)


美紗(ゲインロス効果...!!意外性を見せて、

   大好きな相手をキュンとさせちゃ

   おう!!)


美紗(んー...、)


美紗(...以前の私ならこういうの喜んで読んで

   たけど...結局こういうのって、人それ

   ぞれって言うのが答えな気がするし...)


美紗(相手に自分の良いとこだけ見せて

   ても、いずれ結婚した後でお互いこんな人

   だとは思ってなかったで離婚するだけだしなぁ)


 本をパラパラと捲りながら、読んでると確かにこの中に書かれている事を雪音がしていたような気もする...


美紗(雪音の様子が変に感じたのって...。

   これを試してたから...?)


雪音「そちらの本は杏里さんが告白なさった

   日に絵画の先生からいただいたもの

   です」


美紗「あ、そうなんだ。人から貰った

   ものなんだね」


美紗(どうりで...、)


雪音「袖振り合うも多生の縁と申しますが

   先生があの時に何も仰っていなければ

   貴女と今こうして此処には居なかったのかもしれ

   ませんね。」


雪音「杏里さんからお手紙を頂いた際、私は

   お断りをするつもりでいましたから。です

   が、手紙を見つけた先生がこう言った

   のです」


雪音「「いいえ、この子はもう一度手紙を

   送ってくると思う」」と。まるでそうなる

   ことを予め知っていたかのように」


雪音「私が勝ったら...。その子の言葉に耳を

   傾ける事と勝手にお決まりになられ

   て...」


雪音「私もまさか、一度きっぱりとお断り

   した事案を再度ご検討なさるとは想像も

   しておりませんでしたから」


美紗「あは、は...そう...ですよねー...。でも、

   私諦めなくて良かったってそれは今でも

   言えるよ。」


雪音「どうしてそこまでして、貴女は私と

   共に居たいと願うのですか?」


美紗「どうしてって...、」


美紗「んー...なんでだろ。普通なら

   告白を一回断られた時点で諦めるの

   が普通なんだろうけど」


美紗「雪音が私にとって特別だったから

   かな」


雪音「特別...?」


美紗「雪音は私が好きな絵本に出てくる

   お姫様にそっくりだったから」


美紗「何度も読んだせいでもう大分

   ボロボロだけど」


美紗「嫌なことがあった時とかはその本

   を読んで絵を描いて気持ちをよく

   ごまかしてたんだ。」


美紗「今まで人として生まれてきた以上

   、人の為に生きてくのが当たり前

   だって思ってたけど...」


美紗「それをおかしいって言ってくれる

   人が私の側にはいたから。」


雪音「杏里さん」


 雪音は言葉を遮るかのように私の名前を呼ぶ。


 雪音にとってそれは今知る必要のない情報で。その先は知ってはいけない事なのだと...雪音の瞳がそう私に深く告げていた。


美紗(そう簡単に...受け入れられない...、

か...。)


美紗(...私もくゆやお母さんにこんな目を

   してたのかな。...そう思うと、二人

   には本当に辛い思いさせちゃったな...)


美紗(雪音の気持ちは痛いほど分かる

   から、何とかしてあげたいけど...)


美紗(雪音が一度誘拐された以上、良い人

   もいるよって言ったところで余計

   疑心暗鬼になるだけだし...)


美紗(実際私も前まで、相手が何を望んで

   いるのか分からなくって凄い

   怖かったから...。)


美紗(...まるで息が出来なくなったみたいに、...

   苦しくって...生きてるのに、地獄に

   いるみたいで...。)


美紗(思い出しただけで...、胃が...)


雪音「...貴女にお願いがあるのです。杏里

   さん程の手腕でしたら、それほど難しい事では

   ないかと思いますのでご安心下さい」


美紗「お願い...?雪音から?」


雪音「差支えがなければですが...。」


美紗「ううん、私に出来る事だったら

   全然!!丁度雪音に何かしてあげたい

   なって思ってたから」


美紗(頼られるのは嬉しいけど、でも雪音の

   お願いって何だろう...?)


美紗(....)


美紗(...うーん、まったく想像出来ない

  や...!!)


雪音「...宜しければ、私に貴女の物語を

   お聞かせ下さい」


※スライド


美紗「私の...、物語...?」


 プロの人が作ったお話じゃなくて、

私のお話を雪音が聞きたがってる...?


美紗(確かに私は小さい頃からお話を作るのは好きだけど...)


 でも、私が書く物語はどっちかというと子供っぽくて。本当に文章を書いてる人には足元にも及ばない物で...


 ...閲覧数も少ないし、お気に入り

の数も少ない素人が書いたってすぐに分かるものだけど。


美紗「私が書いたのが読みたいの?」


雪音「...私はお婆様の描いたあの絵画に

   少しでも近付きたいと思っています。ですが、」


雪音「今の私にとって絵とは目で見たものを

   そのまま写真のように写す作業

   でしかありません。」


雪音「ですが、それではお母様に何時まで

経っても後継者として認められるような絵を

描くことなど到底不可能だと私はそのように感じています」


雪音「私の描いた絵には、見る人を惹き

   寄せるような強い念が込められて

   いないと椿様はそのように仰有い

   ました。」


雪音「私の事が好きな貴女であれば

   その答えも知っているのではない

   かと」


美紗「そのくらいお安いご用だよ、」


美紗(雪音は私のお話が心を動かす、きっかけに

   なってくれるかもしれないって思ってくれたんだ...。)


雪音「...貴方にこのような事をお話している

   私も、...きっとどうかしています。」


雪音「ただの高校生の女の子に、この

   ような事をお話しているだなんて...

   信じられませんね。」


美紗(大人の世界に囲ま雪音にとって、私はとても

   頼りない存在で...。そんな存在になんで自分が

   弱音を吐いてるんだろうって思うのも...それは)


美紗(雪音がそれだけ、一人で頑張ってきたっていう証拠

   だって事で...。雪音はそれだけ努力してきたんだろうし、

   そう思うのも無理はないけど...。)


美紗(雪音はそれで、...それが定めと受け入れてる。

   それが当たり前で、誰も疑問にも思わないって...それって絶対

   おかしいよ...。)


美紗「雪音だって私と同じ、高校生だよ。」


雪音「......」


雪音「...ただの女の子にそう言われて

   しまう日が来るとは。...私も随分、

   落ちぶれてしまいましたね。」


美紗「あは、は...まぁ、私じゃ頼りないのは分かるけど、

   ...でも自分の人生を変えるのは必ずしも年上でその道の

   プロって訳でもないよ」


 買ってきたお茶をごくごくと乾いた喉に流し込む。


 身体から流れた汗がアスファルトに落ちると、一瞬で蒸発して跡形もなく

消えた。


美紗「だって、年をとった人でも自分の利益だけで人を騙すような人はいるし、

   まったく知らない小学生の子のありがとうのたった一言で

   元気を取り戻す人だっているでしょ?」


雪音「人にもよりますよ。子供嫌いな方からすればそうではないでしょう」


美紗「まぁ、そうなんだけどね。...でも、今の私があるのは中学生の妹の

   お陰だし、くゆはほんとの家族じゃない私に」


美紗「本気で怒ってくれたし、泣いてくれた。

   私がこの世界で生きてる事をあの子が認めて

   くれたから...」


美紗「...それが、本当に嬉しくてね。

   生きてて良かったって生まれて初めて心の底からそう思った。」


美紗「だから、雪音のその言葉は私にとっては違うかな。人として大事なのは生きてる

   年齢とかじゃなくて」


美紗「きっと、その人の思いの強さなんじゃ

   ないかなって私、思ったんだ。誰かの

   ために何かをしたいっていう気持ちは

   強い力になって、砕ける事のない

   想いになる...私はそう、信じてるから」


雪音「妹様とは血が繋がっていらっしゃら

   ないのですか...?」


美紗(あれ...、そこまでは調べてないんだ)


雪音「良ろしければ杏里さんのお話の方も

   聞かせては貰えませんか。」


雪音「私は貴女の事を理解したつもり

   でいたのかもしれません」


雪音「貴女のその言葉が嘘でないというのなら。私と晴華さんの関係と同じと言うこと

   になります。...苦しくはないのですか」


美紗「...聞いても、あんまり面白くないよ」


雪音「私だけ貴女にお話しているのはずるい

   ...と。そうは、思いませんか?」


美紗「元々は養子じゃないんだけど...、

...私のお父さんが捕まって養子

   が決まったっていうか」


美紗「...というか雪音知ってるんじゃない

   の?私のお父さんが捕まった事...。」


美紗(告白したとき、雪音が電話で

   お父さんの話をしてたのは

   覚えてるし...)


雪音「...私が知っているのは貴女の父親に

   逮捕履歴があったという情報のみ

   です。それ以上の事は聞かされていません」


雪音「杏里さんのプライバシーに関わる事

   ですから、犯罪紛いの事は私にさせ

   られないと全て彼女が一任して

   いましたし」


美紗(え...っていう事はお父さんが何して

   捕まったのか雪音は知らないって

   事...?)


美紗(あー、だからあの時お父さんの

   逮捕履歴を消すためにとか

   言ってたんだ...。)


美紗「...んー、どうしても言わないと駄目?」


雪音「往生際が悪いですよ。」


雪音「....」


美紗(言わなきゃ、駄目...。かぁ...)


美紗「お父さんが逮捕されてから...」


美紗「...今はお母さんのお友達だった

   人のお家に住まわせて貰ってるの」


美紗「私が一緒に住んでるのはその家族

   の人達」


美紗「...」


美紗「それでその人の娘さんが、今は私の

   妹で...私の事本当の家族みたいに

   何度も助けてくれたんだ。」


美紗「だから晴華さんとは結構立場が

   似てるかもね。」


美紗「血は繋がってなくても、くゆは私の妹

   で私はくゆのお姉ちゃんだから。しっか

りしなきゃいけないんだけど...いつも

   くゆに助けられてばっかりで...。」


美紗「雪音と橘さんは、そんな事なさそうだ

   けど」


雪音「...彼女は私の事を妹のように思っている

   と、何度も言ってくれました。です

が...。彼女は私に何も教えてはくれま

   せんでしたよ」


雪音「これがしたい、あれがしたい。こう

   いったものは嫌だ...。人にはそういったものが必ずあるはずです」


雪音「彼女はその全てを自分の手でやり

   遂げてしまいます。どんなに過酷な状況

   であっても、絶対に人の手を借り

   るような真似はしませんから」


雪音「...助けを求められない限り、私には動く

   事が出来ません。私は神ではない

   ですから」


雪音「言わなければ...分からない。それ

   が現実ですよ」


美紗「雪音も晴華さんとあんまりうまく

   いってないんだね」


美紗「言葉は言わなきゃ、伝わらない

   かぁ...。」


雪音「そのような事が分からない方が結構な

   数でいらっしゃるのです。貴女は

   それをしっかりと理解出来ている

   ようですが」


美紗「まぁ言えるか言えないかは別

   としてね。理解はちゃんとしてるよ

   言葉にするのが大事だって事も」


雪音「...貴女と居ると色々と考えさせられますね。

   自分が何の為に生まれ、何の為にこの

   命を繋げているのか」


雪音「今まで考える事の無かったこと

   でさえ、」


雪音「古池家の当主の跡継ぎとして相応しい

   人物になるという名目でその後の人生

   など...私にとってあまり意味のないものでした」


雪音「それが私の使命で、生まれた意味

   でもあったためです。」


雪音「ですが、それ以外の事も少しは考えて

   みても良いのかもしれませんね。」


雪音「...貴女はいずれ、私がどのような

   当主になるとお考えになりますか?」


美紗「それは実際その時になってみないと

   分からないけど」


美紗「でも、これだけははっきり言えるかな」


美紗「雪音がなるなら、きっと素敵な当主に

   なる。これだけは間違い無いってこと」


雪音「...なんとも曖昧で、...確証のない

   答えなのでしょう。...ですが私はそのよう

   な答えも嫌いではありませよ。」


雪音「面接でしたら即刻、不採用でしたが」


美紗(相変わらず手厳しい...。デレツン

   かな?)


美紗「雪音が気に入ったのならそれだけ

   で充分、私にとっては及第点だよ」


雪音「貴女も折れませんね。」


美紗「我々の業界では御褒美ですので」


雪音「...貴女が作り出すストーリーを楽しみ

   にしていますよ。発表は...そうですね。

夏休み明けにという事で良ろしいですか?」


美紗「うん、それだけあれば充分出来ると

   思う」


雪音「それは良かったです。では...そろそろ

   屋台の方へと戻りましょうか」


美紗「私に無理に合わせなくても良いん

   だよ?」


雪音「...何があろうとも、古池家の当主になろ

   う者が屈する事などあってはなりません。杏里さんもそうは思いません

   か?」


美紗(えーっと...それって、雪音が思ってる

   事じゃ...。)


美紗「あっ、待って雪音!!思ったより、歩くの早いね!?」


 そうして私は慌ててベンチから立ち上がって、雪音の後を追い掛けた。


※スライド


美紗「雪音はどういうジャンルが

   良いの?」


雪音「何でも構いませんよ。...そう

   ですね、強いて付け加えるとする

   のなら杏里さんらしい物語が

   良いですね。」


美紗「...んー、そっか。...私らしい」


 雪音と手を繋ぎながら、出店を回って。何気ない会話をしているともう辺りには出店が見えなくなっていた。


美紗「辺りに何もなくなってきたね...。

   戻れなくなると困るし、そろそろ

   帰ろっか。雪音」


雪音「えぇ、そうですね。」


 そろそろ戻ろうかなって思った時、奥の方でぽつんとお店が建っているのに気付く。


美紗「お店がある...」


雪音「入ってみますか?急げば帰りまでには

   間に合うと思いますよ」


美紗「うん。折角だし、入って中見てみたい

   な」


 自動ドアが開いて。中に入ってみるとふわっと涼しい風が前進を冷やしてくれる...

 

  灼熱地獄の中、ずっと歩いてきた私達にとってそこはまさに砂漠の中のオアシスだった。


美紗「はぁ~、生き返る~...///」


雪音「小物屋さんですね、...もっと良い敷地

   に建てればお客様もいらっしゃいそう

   ですが。なるほど...この場所での需要は

そのような意味ではありそうですね」


美紗「確かに。外、暑かったもんねー...」


カランカラン...※風鈴


 入ってすぐに可愛いクッションや、写真立てとかが真っ先に目に飛び込んできて...


 家の近くにあるお店がどれだけありがたい物だったのか実感する。


美紗「わぁ...、凄いね。雪音」


 まさかこんなとこにこんなお洒落なお店があるなんて思ってもなかったから、凄いテンションが上ってきた。


美紗(今までの景色がほとんど木だったのも

   あるかもしれないけど、なんというか

   雰囲気が東京に似てて落ち着くなぁ...)


美紗「こういうお店丁度来たかった

   んだよね、プレゼントをあげるなら

   こういうとこの方が特別感でる

   気しない?」


美紗(というか柚夏って、どういうの

   喜ぶんだろ...?)


雪音「どなたかにプレゼントをなさるの

   ですか?」


美紗「うん、したいなって思ってて。

   どんなのが良いかな」


雪音「商品をじっくりとご覧になってからでも  

   遅くはないと思いますよ。その中でも

   杏里さんがお相手に送りたい物を差し

   上げてみては如何でしょう?」


雪音「色々見て回る内に何か良いものが

   見付かるかもしれません。」


美紗「そうだね、色々回ってみようかな」


※スライド


美紗「んー...どれが良いかなぁ」


 ぐるっと、お店の陳列棚を回ってみたけど柚夏が喜びそうな物っていうのがよく分かんないなぁ...


美紗「送りたい物...、私が送りたい物って

   なんだろ...?」


 私が好きな物が必ずしも柚夏が好きとは限らないし、折角プレゼントするなら相手が喜ぶ物が良いよね。


美紗(私も柚夏も好きな物...。柚夏は甘いの

   苦手だし、私の可愛いは柚夏の可愛い

   と違う時あるし...)


美紗「色々あってどれにしようか迷っ

   ちゃうね。あ...、砂時計だよ雪音」


雪音「此方(こちら)は如何でしょうか?」


美紗「砂時計?あ、これ、地球儀みたい

   で格好いいかも...」


雪音「ヨーロピアン回転式のブロンズ枠、

  アンティーク(ホワイト)型ですね。

  こちらのお店で作成したものでしょう、

  中々良い出来です」


美紗(ヨーロピアン...?)


美紗「...そっか。じゃぁ、これにしようかな」


 デザインも格好いいし、雪音が選んだ物だし、...多分間違いないよね。三千円なら買えない値段じゃないし。


美紗(でも...、本当にこれで良かったの

   かな...。これ綺麗だとは思うけど...

   正直...使い所、あるかな...??)


美紗(...んー。柚夏だったら多分、どんな

   プレゼントでも大事にしてくれると

   思うけど...柚夏なら100円の缶珈琲

   のが喜びそうだなぁ...。)


美紗「.....」


美紗「...あ!!、ちょっと待って。もう一つ買い

   たいのあった!!」


雪音「どうしたのですか?」


美紗(えへへ、柚夏はこっちの方が

   喜ぶよね。...でも、不思議だな)


美紗(さっきまでは気になりもしなかった

   のに。今はこれがこんなに欲しくなる

   なんて)


※キャプション


美紗「ちょ、ちょっと待って...。」


 出店も回り終わって、まるで人生のように辛く、長い階段を登っていく。


 のに...雪音は、何で、そんな平気そうな顔してるの...?


美紗「...雪音って、本当に...お嬢様なん

だよね?」


雪音「えぇ、...ですが杏里さんは本当に

   一般の方なのですか?」


美紗「気持ち良いくらいっ、真ん中の

   ドストレート...ッ!!...確かに私は

   体力ないけどさー...これでも頑張って

   るんだよ?」


雪音「何をですか?」


美紗「具体的に聞かれると、困る

   けど...。...生きるの?」


雪音「...疲れたのなら、疲れたとそのように

   仰って下さい」


美紗「はぁぁぁぁぁあ...疲れたぁぁぁぁ

ぁ...本当っ、この階段長過ぎぃ...

   なんで皆平気なの...?」


雪音「運動不足では?」


美紗「自覚はあるんですっ...!!

   自覚は...ッ!!ただ、めんどくさいなー

   って...」


雪音「隠す気はないのですね...。そこまで

   くるとむしろ清々しいです」


雪音「...ですが、早くしなければ時間に

   遅れてしまいますよ?私が居ながらと

   ...彼女に変な誤解を与えたくはない

   ですので」


美紗「あ、待って...!!雪音っ。」


雪音「どうかしましたか?」


と、雪音は凛とした澄ました顔で私の顔を見る。気高くて、触ったら怪我をしてしまいそうな...そんな何時もの、...顔。


美紗(...あーーーーっ、振り返り美人っ!!

   階段の上から見下してるように見え

   る雪音の表情が私の性癖にとても

   よく、)


美紗(刺さってらっしゃ、るー、るるるっ

   ーー...♥️♥️、、、)


美紗(...まずいっ、これはまずい、、

   こんなの表情に出したら流石の雪音

   にもドン引きされるっ!!絶(耐)えろっ、私...、)


美紗「これ、...雪音にプレゼント。

   受け取って」


 ガサガサと、バックの中からビニール袋の中に入っていた物を取り出す。


 それは贈り物用に丁寧にラッピングされた砂時計だった。


雪音「先程の、砂時計ですか...?」


美紗「一緒にプレゼント選んでくれた

   お礼だよ。雪音のために買ったの」


美紗「これを見て雪音が今日の事思い出して

   くれたら、嬉しいなって。...そう思った

   から」


雪音「...良いのですか?」


美紗「うん、この砂時計は雪音に受け取って

   欲しい」


雪音「....あ、」


雪音「...ありがとう、ございます。」


雪音「正直、使い道はまったく思い浮かびま

   せんが...。...それでも、今まで頂いた

   品物の中でも、心はかなり満たされていま

   す...」


雪音「...今のこの気持ちが、『嬉しい』

   というものなのでしょうか。」


美紗「えへへ...雪音が喜んでくれたんなら、

私も嬉しいな。」


雪音「...私は杏里さんにまだ何も差し上げてい

   ませんよ。...何故、貴女が嬉しいと感じる

   のですか?」


美紗「大事な人が喜んでくれたら、そりゃ

   誰だって嬉しいよ。雪音が悲しん

   でたら私も悲しいし、...それが何で

   って言われても」


美紗「私にもよく分かんないよ。」


雪音「...私と同じですね、それなら誰も

   文句は言えません。」


美紗「えっと、私そっちの方が良いな。」


雪音「何の事でしょうか?」


美紗「申せません。とかじゃなくて、言え

   ませんとかの方が、その、私は

   好きかな」


雪音「....そうですね」


雪音「...良いでしょう。砂時計を下さった

   お礼もありますからね。」


雪音「貴女の前ではもっとフラットな口調

   で話すよう、意識します。」


...ございますがありますに変わっただけで

...なんか、言葉の破壊力が一気に増した気がする...///


美紗(あー...、一生雪音に付いていきたい...///)


雪音「このような感じでしょうか...?慣れて

   いませんので、なるべく使用するよう

   には心がけます。」


※キャプション


 丁度時間ぴったりに階段をあがりきった私達は先に待っていた柚夏と流雨さんとばったり鉢合わせして、お寺の中に入らせて貰った。


嶺原さん「では、皆さん。お食事の準備も

     出来ましたのでお入り下さいませ」


美紗「わぁ!!美味しそう...!!」


 奥の大きな畳の部屋に案内された先に、細長いテーブルが沢山並べられて美味しそうな鯛や鮪のお刺身と言ったお料理が綺麗に並べられている。


美紗「五目ご飯の中に魚も入ってるー、豪華の

   極みだね...、柚夏...!!じゅるり、」


柚夏「確か神社で殺生って不味いのでは...」


嶺原さん「それは仏教であって、お寺ではそう

     ですが。神道は神様のお供え物で

     あるお魚はセーフなんですよ」


嶺原さん「四足動物は完全アウトですが、必要最低

     限のお魚を殺す事は許されてい

     るのです。数はちゃんと取り決めて

     いますよ」


晴華「ゆっきーもお帰りー、」


朝乃「美紗ちゃん達はお祭り、楽しかっ 

   た?」


 仲が良さそうに座布団の上に座っていた朝乃先輩と橘さんは笑顔で入ってきた私達をお出迎えしてくれる。


美紗「はいっ、楽しかったです。でも、

   歩きっぱなしでちょっと疲れちゃい

   ました...」


朝乃「あはは、此処の階段結構きついよね」


美紗「朝乃先輩はもう大丈夫なんですか?」


朝乃「うん、お陰様でね。少し寝たら、

   すぐ元気になったよ。皆には

   心配掛けちゃったけど...ほんと

   ごめんね。」


美紗「先輩が元気になった。それだけで、皆

   ハッピーですよ!!それにまた今度

   皆で行く口実になるじゃないですか」


朝乃「何この子...っ、良い子過ぎるでし

   ょ...。こんな私にそんな事、言って

くれるなんて...」


朝乃「...ちょっとくらい、あいつにも垢を

   煎じて飲ませてやりたいわ、」


美紗「あいつ?」


朝乃「あー、頭痛い....、、」


嶺原さん「熱中症の後にそんなに大きな声を

   出したらそうなります。私の責任に

   なりますのでやめて下さいね?」


嶺原さん「あとネットに書くのとかもやめて

   下さい、別に書いても良いですけどそこにいた優しい巫女さんが私を優しく看病して下さったと」


雪音「そちらは問題ありませんでしたか?」


晴華「ゆっきーこそ、何か良いことあったっ

   て顔してるよー。どうしたのー?」


雪音「...えぇ、想定以上に得られる物が

   ありましたから。」


晴華「えへへー、そっかー。それは良かった

   よー」


美紗(晴華さんってやっぱりあんまり

   自分のこと話したがらないよね...?)


美紗(言われてみると、確かに雪音

   の会話を上手く流してる気が

   する....。)


美紗(...雪音が聞きにくいんなら、私から

   聞いてみる?...あの後どうなったか

   お話も聞きたいし)


美紗(ストレートに聞いてみよう)


美紗「橘さんはあの後どうしたんですか?」


晴華「...え?」


 橘さんは驚いたように目を開いて、困ったような顔をする。まさか、そんな事を聞かれるなんて思ってもいなかった...みたいな。


美紗「...?なんでそんな驚いてるんですか?」


晴華「....えっと、あの後はねー。朝乃ちゃん

   とお話して...、それから...」


朝乃「一緒にお昼寝しちゃってたのっ!!

   晴華さん、お仕事忙しいから疲れてて

   ですよね!?」


晴華「...う、うん。そうなんだー...。私途中で

   寝ちゃってて...ごめんね、朝乃ちゃん。

   重くなかった?」


朝乃「...はい、晴華さんの体重を肌身で

   感じられるなら私は全然!!」


美紗(絶対何か隠してる...。)


美紗「えっと...本当に大丈夫だったん、

   ですか?モデルのお仕事も大事だと

   思いますけど...、ちゃんと休憩も

   取って下さいね...?」


 でも本当に疲労で倒れちゃったんだったら大変だし、橘さんモデルのお仕事も忙しそうだしなぁ...。海にも行けなかったって言ってるし


 それにもし橘さんが倒れたって知ったら、雪音も心配すると思うから


美紗(私ももし、くゆが疲れて寝ちゃってたら

  不安になるしね)


 まぁ...今回の事は目をつむっておこう。


美紗「二回目は雪音に言いますよ。」


晴華「うん、心配してくれてありがとー。

   出来るだけ私も、休めるように

   頑張るね。」


美紗「いや、頑張ったら駄目なんですって

   倒れてるんですから、」


※スライド


 神社から見える山の景色を楽しみながら、皆と食べるご飯はなんだかより一層

美味しく感じる。


 ほかほかのお魚の入ったお鍋と、お魚のお刺身...///、


美紗(ん"~っ...///!!美味しくて体重増えちゃ

うかなぁ...///まぁ、今日くらいは

   いいよね♥️)


雪音「貴女は本当になんでも美味しそうに

   召し上がりになられるのですね。私は顔

   にはあまり出ない方ですので、羨ましいです」


美紗「小さい頃はご飯って、こんなに味があるなんて

   私知らなかったんだよね。お父さんと

   食べるご飯は...緊張で味がしなかったけ

ど...」


美紗「今は一口噛むたびに、美味しいって

   思うんだ。...きっと雪音と一緒に

   いるっていうのも、あるのかな///」


雪音「なる程...、確かにこの量で味を感じて

   いなかったとするのなら、そのように

   感動するのも頷けます。」


 と、目の前で豆腐を口の中に入れている朝乃先輩。...ドバドバと明らかに醤油の量が半分以上浸かり始めていらっしゃるんですが。...それは


美紗(...朝乃先輩は悪くない、...悪くない

けど...、...ごめんなさい。朝乃先輩...)


美紗(...ええぇぇぇぇ、...えぇぇぇぇえ

   え!?普通そんなドバドバ醤油

   掛ける人いる!?!?)


美紗(もう、それ豆腐じゃなくて、醤油ッ!!!!)


美紗「えっと...その感動とは、ちょっと違う

   かなぁ...」


 それより、目の前の朝乃先輩の豆腐が凄い気になるんですけど


晴華「ちょっ...、ちょっと待って...!!

それ食べちゃうの!?朝乃ちゃん

   っ?!皆も見てないで止めよう!?」


 と、慌てて橘さんは朝乃先輩の奇行を止めようとしてるけど...、一足遅かった。


朝乃「はい?」


晴華「...しょっぱくない?」


朝乃「....?」


朝乃「美味しいですよ?」


晴華「...朝乃ちゃん~?、お家でもそんな

   生活してるー...?」


朝乃「味がしないので、後で足して...」


晴華「...こ、...こらーーっ!!」


朝乃「...か、可愛ぃぃぃ...///晴華様...///」


晴華「私は、怒ってるんだよー!!」


美紗(あれ...さっき怒ってた時の橘さんは

   凄い怖かったのに...なんだろ?)


晴華「どうしたの?ゆっきー」


雪音「すぐに戻ります。」


と、ほんの少しだけ後ろを見て...。その後ろ姿がまるで付いて来て下さいと雪音が私に言ってるようにも感じた。


美紗「ごめん、柚夏。私、お手洗い行って

   くるね」


 部屋を出て、すぐの所で雪音は座りながら静かに月を見上げていた。


 月光を受けながら夜空を見上げる雪音はまるで、妖精のようで...私は心を奪われてしまったかのように立ち尽くしてしまう...、


雪音「...確かに、貴女が仰るように私は

   一人で居る方が落ち着くのでしょうね」


美紗「....」


雪音「人がお話している時に無視とは

   貴女も相変わらずですね。」


美紗「...え、あっ...、ご、ごめん...凄く

   綺麗だったから...見取れてて...、」


雪音「...今私が話したいのはそのような

   お話ではありません」


雪音「...貴女方は我々の秘密を知りすぎて

   しまいました。」


美紗「...あー、...私雪音に消されちゃう

   やつ...?」


雪音「.....」


 雪音は噛み締めるように瞳を閉じながら、私のすぐ真横までゆっくりと近付いてくる...。


 静かな静寂に包まれる世界...。本当に、私は今此処で雪音に殺されてしまうのだろうか、


 そして、雪音の背後から銀色のナイフが月光に当たった直後。鈍い色を放って


雪音「映画の見すぎでは?」


美紗「自分でも、ちょっと思った。」


雪音「...まぁ、良いでしょう。ですが、

   今後はこのような事がないように

   して下さい」


美紗「すみません...。雪音に呼び出されて、

   ちょっと舞い上がってました...」


雪音「....」


雪音「...此処に来ていただいたのは、他でも

   ない晴華さんの事です」


美紗「うん、さっき何か様子が変だった

   よね?その事?」


雪音「...頭の回転は良いですよね、貴女は」


美紗(それ以外は?)


雪音「...」


雪音「自分のせいで人に不幸を背負わせるのを

   彼女は大変嫌います...。」


雪音「...そして、その後...自分を追い詰めて

   しまう癖が彼女にはあるのです。...

   彼女は私の姉のような存在でもありま

   す」


雪音「彼女だけは...、椿様より私の事を

   選んで下さるでしょう。...だからこそ

   私は彼女を苦しませたくは、ありません...。」


雪音「ですが...分からないのです、私には分からな

   い...。一体彼女にどうすれば良いのかも...

分からないのです、」


 雪音は私が思っているよりもずっと、橘さんに対して不安の感情を感じていた。


 それを私に吐き出そうとして言葉を詰まらせて、どうしたら良いか


...私に、相談して、くれてるんだ...。


 自分ではどうしていいか分からないから、


美紗(その気持ちだけで、...奇跡を起こす

  にはもう充分なんだよ。)


美紗(雪音の本当の気持ちが分かっただけで、)


美紗(私がその手助けをしてあげられる

   なら、それが私に出来る何よりの

   幸せだから)


美紗「...そっ、か」


雪音「私の悩みは杏里さんは興味が

   なかったでしょうか」


美紗「違うよ、違うの...。...そうじゃない」


美紗(雪音の心の奥に問い掛ける...、そんな

言葉が...伝えられたら良いのに...、)


美紗「...私の言葉を、聞いて。雪音。

   今は意味が分からないかもしれ

   ないけど」


雪音「...えぇ、構いません。聞かせて下さい」


美紗「雪音はちょっとずつだけど、

   確実に感情を取り戻してる。」


美紗「今、雪音が私に晴華さんを助けて

   欲しいって思ったのも」


美紗「我が儘じゃなくて、相手の事を思

   った結果で生まれた大切な感情

   だって事。その事を忘れないで、」


美紗「雪音は晴華さんとどうしたい?」


雪音「...晴華さんとですか、」


雪音「...晴華さんの仕事は人に元気を

   分け与える大事な仕事だと思って

   います。」


雪音「ですが、分け与える本人が倒れて

   しまっては元も子もありません...」


雪音「そうなれば晴華さんの夢でもある

   両親を捜すという夢からも遠ざ

   かってしまいます。」


美紗「デメリットだけ言っても晴華さん

   には届かないよ。それが分かってた

   ら無理なんてしてないだろうし、」


雪音「.....。」


雪音「晴華さんの仕事の邪魔をするつもり

   はありません、ですが...」


雪音「せめて...倒れるレベルまで仕事を

   引き受けるのをやめて欲しい

   ですね。」


雪音「晴華さんが死んでしまったら

   私は...、二回も家族を失う事に

   なる。お婆様だけでなく」


雪音「晴華さんまで....、」


美紗「それを本人に言ってあげれば

   良いんだよ。」


美紗「少なくとも、絶対反省はすると思うから」


雪音「体験談ですか?」


美紗「...経験談、」


雪音「でしたらより説得力がありますね。」


雪音「貴女に頼んで正解でした」


雪音「...言葉の意味をも知らぬ子供こそ、

   言葉を知り尽くす者よりもその言葉の

   本当の意味を理解しているものだ。」


雪音「...どこかで読んだ本の内容ですが、

   確かにそれは紛れもない真実だった

   ようです。」


美紗「えっと、難しくてよく分かんない...」


雪音「つまり、そういう事ですよ」


と、雪音はふっと何かを悟ったような瞳をしてから私の背中に向かって語りかける。


雪音「今回の話を貴女に、言えて良かったです。杏里さんと

   巡り合わせて下さった先生には感謝

   しなければなりませんね」


雪音「...そろそろ戻りましょう、このままでは

   色々と怪しまれてしまうでしょうから」


※キャプション


 席に戻ってくると、雪音は何事もなかったかのように落ち着いた様子で座布団の上に座る。


美紗(でも、ちゃんと人前ではしっかり

  してるんだよね。雪音)


美紗(気品があって、...そこも格好いい

   けど///)


嶺原さん「では、灯りを消しますね」


朝乃「だ、だめです...っ!!私真っ暗なとこは

   いやっ、もうそのすっごいっ苦手

   で!!灯りは先に...!!」


 朝乃先輩は血相を変えて、慌てた様子でバッ、と立ち上がった後すぐに照明のスイッチの方へと向かっていく。


朝乃「...お願いっ、...します。...いや、

   その...急にお騒がせしてしまって...

   本当にすみません...、急な発作が!!」


嶺原さん「あらあら...、私とした事が...

     暗所恐怖症の方がいらっしゃる

     のですね。」


嶺原さん「では、先に灯りを付けさせて頂き

     ましょう。」


朝乃「...そうして頂けると、本当、助かり

   ます」


美紗(うーん?私は...暗いとこだと寧ろ安心する

  けど、んー?...、暗いのが怖い人も居るん

  だね...。まぁ、普通はそっか...)


 カチッと、白館さんが小さな鍋に付いているブルーの着火剤に火を付けていく...。


朝乃「怖いので、手を握っていても良いです

   か?...晴華さん。」


晴華「...うん、朝乃ちゃん...。」


白館さん「では、消しますね...」


 カチっと、いう音とともに視界は一気に薄暗くなっていく...。


 夏だからそんなに暗くはないけど、それだけでも充分だった...


美紗「...綺麗」


 真っ赤な炎が揺らぐように燃えていて、とても綺麗でロマンチックな光景...。


雪音「...成程、貴女の言っていた意味が少し

   は私にも理解出来そうです」


雪音「とても美しい光景ですね。」


美紗「雪音ともいつか、この蝋燭みたいに

   熱い恋が出来るようになったりする

   かな?」


雪音「消えて無くなってしまう感じでしょうか...?」


美紗「溶け合うという意味では、消えて無く

   なるっていうのも分かるよ。」


雪音「消えたら、何も残らないと。貴女

   はそうお考えにはなられないのですね」


美紗「...二酸化炭素は残るから、一応。」


雪音「...なる程、...それは確かに」


柚夏「どんな会話してるの...。」

 

 そのまま最後の時間が来るまでゆったりとくつろいでいると...遠くの方で何か、弾ける音が聞こえてきた...。


....ドンッ、...パチパチ...。


美紗「ね、見て!...花火!!」


美紗(すっごく、綺麗...!!)


 暗闇で光る赤や黄色の閃光...。揺れる、素敵な奇跡。何時までもこんな景色が見られたらな...って思った。その瞬間...、


手の温もりが...、ふっ、と伝わって...。それを私は横目で見る...。穏やかに花火を見ている彼女の姿が確かにそこにはあった。


 薄暗い夜空に打ち上げ花火が大きな音を立てて咲いている...、


柚夏「...此処からでも、よく見えるね」


晴華「凄い...、綺麗だねー...」


朝乃「...はい。...とても...♥️」


※スライド


美紗(雪音から手...?...まさか、ね。私が無意識

  のうちに伸ばしてたのかな?...今でも信じ

  られない...、あの後、すぐに離れちゃった

  けど...)


 ぼーっと...鞄の中を整理してると、コツンと小さな小箱が手に当たる。


美紗(あ、...柚夏に渡さなきゃ...!!) 


美紗「...あ、そうっ!!柚夏にバースデー

   プレゼントがあるんだよ!」


柚夏「えっ、別にそんな気を使わなくても良いよ。

   私は今回の旅行で本当に満足してるし...、

   これ以上は受け取れない...。」


美紗「柚夏が喜ぶと思って買ったんだ。

   日頃の感謝でも良いから、受け取って

   」


柚夏「...でも、本当に良いのかな」


美紗「良いの、良いの。逆に受け取ってくれ

   なかったらヘコむから」


柚夏「...分かった、分かった。...受け

   取るよ。ありがとう美紗」


美紗「ほら、開けてみて!!」


柚夏「今、此処で?...別に良いけど」


 柚夏は丁寧に小箱を開けて、くしゃくしゃの新聞紙を少しずつ開いていく...


 そして、すぐにその白いマグカップは姿を現したのだった。


柚夏「...へぇ、マグカップかぁ...リアルな狼

   もカッコいいね。ありがとう、大事に

   使わせてもらうよ。」


柚夏「コーヒーをよく飲む

   からそのときに使おうかな」


美紗「そうそう、私もそれを想定して買った

   んだよね。プレゼントとしては中々いい線いってない?

   もっと褒めてくれても良いんだよ...?」


柚夏「...そういうとこが無ければ褒めてたんだけ

   どね。...美紗、ところでこのマグカッ

   プ...値札に1000円って書いてあるけ

   ど」


美紗「あ、値札剥がすの忘れてた。」


柚夏「これ千円もするの!?私の使う奴なんて

   100円税込で十分!!そんなお金ある

   なら、自分の欲しいもの買えたろう

に...」


美紗「柚夏って、私のお母さんよりお母さん

   してるよね...喜んでくれると思ったの

   になー。」


柚夏「う...まぁ、そりゃ...美紗からのプレゼ

   ントは嬉しいけど...。美紗の誕生日月前は

   バイト頑るよ...」


美紗「別に同じ値段で返さなくても良いん

   だよ?」


柚夏「そりゃ、安い値段でそれっぽいのも

   出来るとは思うけど...」


 柚夏は優しい瞳で、私の送ったプレゼントを見ながらふっと笑顔で笑う。


柚夏「美紗にはそういうのしたくないから

ね。私にとってそれだけ大切

な人だって事だよ」


柚夏「...それに、美紗との思い出は偽物に

   したくないし、ね。」


美紗「あはは、柚夏って時々格好いい事

   言うよね」


美紗(雪音より安かった事は黙っと

   こう...、、)


流雨「柚夏、...嬉しい?それなら同じの

   作れる...。3Dプリンターで」


柚夏「技術力は取りあえずおいておいて...」


柚夏「...マグカップ2つは使い処に迷う

   から、出来れば違う物の方が

   嬉しいかなぁ...、」


※キャプション


嶺原さん「是非、此方の方もどうぞ。白蛇様

     から皆様への贈り物だそうですよ」


美紗「...白蛇様?」


嶺原さん「この社は...、白蛇様の御加護の

     上で成り立っています。」


嶺原さん「この神社があるのもすべて、

     白蛇様のお陰なのです」


嶺原さん「私は神様とお話出来ませんが

     縁蛇が産まれてからこの神社も

     今では大評判ですからね。」


嶺原さん「その白蛇様が是非、貴女にと」


美紗「...神様が?私ですか...?」


 紙袋にある八つ橋の折り菓子を見ながら、ゆっくりと受け取る。しかも皆の分まで...


美紗(丁度、買いたいなとは思ってた

   けど...。)


縁蛇「懐かしい友の匂いがするそうですよ?

   まぁタダなので、特に気にせず受け

   とっちゃいましょう!!」


美紗「...うん、神様...んー。どこにいるか

   私には分かんないけど...ありがとう

   ございます」

   

美紗「それに縁蛇さんも、此処に連れて

   きてくれてありがとう」


縁蛇「...貴女は、縁蛇を変に思わない

   ですか?」


縁蛇「それに...貴女を此処に連れて

   きたのは私じゃないです。此処に

   居る皆が貴方を見たいと言う

   から...」


美紗「でも来た時、縁蛇さんは私の事凄い

   歓迎してくれたでしょ?」


縁蛇「それは地元にみさごろーさんが来て

   嬉しかったから...。」


美紗「初めにあの笑顔があったから、私も

   京都旅行を安心して楽しめたんだよ。」


美紗「縁蛇さんは確かに少し変わってる

   とこはあるけど」


美紗「それは底抜けに明るいとか、手を

   中々離してくれないとかそういう

   ので」


美紗「神様とお話出来るのは寧ろ凄い事

   だって思ってるよ。」


美紗「縁蛇さんみたいに明るい人だから

   神様達も集まってくるんだと思う

   し」


縁蛇「それは...蛇神様にも言われました

   ね。元気なのは良い事じゃが、お主

   の場合毎回やりすぎなんじゃ

   っ!!、シャーッッって...、」


美紗「怒ってると威嚇されるんだ。」


縁蛇「あの人は蛇ですからね。でも時々

   綺麗な女の人の格好をしてたりする

   時もあるのですよ。」


縁蛇「数多くの人間をその姿で誑かした

   ものだ、って」


縁蛇「団長より小言と自慢は多いですけど...」


縁蛇「...でも、嫌な事を言われた日は

   ちゃんと聞いてくれるんですよ。

   蛇神様は縁蛇にとって大事な人です。」


縁蛇「蛇が嫌いな人は多いですけど、

   蛇神様は良い人なんですよ。」


美紗「私は目がくりくりしてて可愛いと

   思うよ。蛇、白くて赤い瞳って

   格好いいよね。」


美紗(実際あうとちょっと恐いけど動物園

   とか絵で見るのは普通に好き)


 縁蛇さんはぱぁっと、花が咲いたような満面の笑顔で笑う。あは、は...その笑顔は逆にこっちが照れちゃうかも...。


縁蛇「そうでしょう、そうでしょう!!

   蛇神様の真の姿は凄い格好いい

   のです!!」


縁蛇「鱗も全身真っ白で、瞳もこーんなに

   おっきくて、お腹も凄いたぷんたぷ

   んで...!!」


縁蛇「それだとまるで太ってるように

   聞こえるだろうが?」


縁蛇「蛇のお腹は凄い柔らかいのですよ!!!」


美紗(神様のお腹、触ったの...?)


柚夏「美紗、そろそろ電車の時間が...」


美紗「じゃぁ続きは学校で聞くね。」


柚夏「色々、お世話になりました。」


美紗「またねー、縁蛇さん」


縁蛇「...ちゃんみささん、...あなたも

   お元気にーですよっ!!」


縁蛇「また学校で会いましょー!!」


 ブンブンと元気に手を振りながら、見送る縁蛇さんとお別れしてから


美紗「また学校で会おうね、雪音」


雪音「...そうですね。また...、夏休み明け

   を楽しみにしています。」


 その後、東京に向かう新幹線に乗って...沢山遊びきってくたくたに疲れた私達は真っ直ぐ自分のお家に帰って行ったのでした。


※キャプション


あれから...、私は悩んでいた...。


美紗「んー。雪音にわたすお話どうしようっ...!!」


美紗(夏休み明けまで結構ぎりぎり...

   どうせ書くなら、気持ちのこもった

   のが書きたいし...)


美紗(相談するにしても柚夏は論外、橘さん...?

    は雪音と距離が近いから余計に相談出来ないよね...。)


美紗(あの人聞かれたら、どんな

   事でも雪音に教えちゃいそうだし)


 ごろんと、ベットに寝転んでスマホをスライドさせる。


美紗(なんか良い作品ないかなー...参考に

   なりそうなの)


美紗(雪音は自分で考えて欲しいって

   言ってたけどやっぱり良いのを作る

   には良い人のを参考にしたいよね...)


美紗(.....、)


 いつも見ているおもちさんのブログ...、


 高校生でベストセラーの本を書いた人...。年齢は私と一緒の15歳の人...


美紗(私が尊敬する作家の一人、

   おもちさん。)


美紗(...どんな人なんだろう、あんな素敵

   な恋愛小説を書ける

   なんて、きっと私と違って恋愛経験が豊富な人なんだろうなぁ...)


美紗(一度でもいいから、...会ってお話したいな...。

   前聞いた時のお話の声も凄い綺麗だったし、でもすごい声に、興奮しそう...)


美紗「...おもちさんなら、...こういうのも  

   さくって解決できちゃうんだろうな

   ー...。」


美紗「ん...!?」


美紗「待って、この人、...おもちさん

   じゃない...?、、」


 さっきまで無かった文字が急に浮かび上がり、おもちさんの書いた文字がブログ内に更新されてく


 その場で考えて書いてるのか、少しずつ追加されていく文章を見ながら私は必死に頭をひねった。


美紗(...いつもは感想送ってるだけ

   だけど...、これを機におもちさんに

   相談してみようかな、、)


美紗(送るの文字だけど...送るのめっちゃ

   緊張するぅぅ...!!いやでもこれは、

   おもちさんとお話出来るまたとない

   チャンス、)


美紗(っていうかおもちさんがブログ内に

   いるうちに早く書かなきゃ...!!)


 がばっと、体を起して文章を打つ。おもちさんにはいつも読んだ感想を送ってるだけで、


 ネットではちゃんとしたお話をした試しもないんだけど...(そもそも感想多すぎて滅多に選んで貰えないし、)


美紗(本人がいる今更新したら読んで

   貰えるのでは!?!?)


匿名Mさん

 「初めまして、おもちさんの本すごく

  大好きです!!おもち先生の大ファンです!!急なお話ですみませんが、私は今凄く好きな人がいて、

   その人のために物語を書きたいと思っています。」


匿名Mさん

「ですが、どんなお話が良いのかなか

 なか決まりません...。好きな人から

 は私の書きたい話を書いて下さいと

 言われました。」


匿名Mさん

「そこで質問なのですが...おもちさんが

 物語を書くときはどのような事を考え

 ながら書いていますか?」


美紗(返信...、来るかな...)

   

おもち「こんにちは。みささんは好きな人に小説をお書き

    になられるのですね。物語みたいで

    本当に素敵なお話だと思います」


おもち「...そうですね。私の場合は『森になった少女』が

    その作品にあたりますね。その物語の主人公の少女、枝恵奈(しえな)

    は私の大切な方がくれた言葉をそのまま使わせてもらっています」


おもち「本で売り出すとすれば、流行りや流行などに気をつけるなどは必要不可欠

    になります。ですが、その中でも恋愛小説を書くのに一番大事な物って

    やっぱり『心』だと私は思います。」


おもち「心を込めて書いた作品に、駄作なんて一つもありません。

    愛情を込めて作った作品には本当に愛が宿るものです。どのような作品でも透き通った心で

    、大事な人を思い浮かべたら言葉は自ずと後からついてきますよ」


美紗(はぇぇぇぇ...、凄い...。プロは

   やっぱり言うことが違うなぁ...)


匿名Mさん「ありがとうございました。先生のお陰でとても良い物語が書けそうです」


 仰向けで寝転びながらアプリを閉じて。少しの間、目を閉じる...。


 ...余計な事は考えず、ゆっくりと雪音が好きだという気持ちに心を傾ける


 すると、自然と頭の中に自分の書きたいものが浮かんでいた。


美紗(これなら、うん!!!書ける!!!)


みさ「よーし!!頑張るぞーーーー!!」


 画用紙を切って、白い世界に絵を描いて、色鉛筆で新しい世界を作ってく。


 色んな動物、色んな人...物語を思いつくまま描(えが)いてく...。


美紗「あるところに動物達が仲良く暮らし

   ている町がありました。」


美紗「彼女は皆が恐れる肉食動物です。

   街に住む獣達は彼女に食べられるの

   が恐ろしくて、誰も彼女の言葉に

   逆らおうとしませんでした。」


美紗「彼女の言うことはすべて、正しいと

   動物達は何も考えず全て雪豹の  

   言う通りにしました。」


美紗「悪い奴は雪豹に皆食われちまうぞ、

   私は肉食獣に生まれたから食べられ

   たくなければちゃんと働け、」


美紗「肉食動物も草食動物も皆同じ星に

   生まれた仲間です、何故あなた方

   にはそれが分からないのですか...!!」


美紗「雪豹がいくら言ってもまた他の

   ところで同じ言い争いが起こり

   ます。」


美紗「草食動物達は雪豹の顔を見ただけで

   お礼も言わずにどこかに逃げて

   いきました。」


美紗「彼女は雪豹に生まれたくて生まれて

   来たのではありません。ですが、

   この街にはそんな彼女の疑問にすら

   答えてくれる動物はいませんでした。」


美紗「ある一匹の兎を除いて・・・」


美紗「街によく来る旅人の兎は沢山の動物

   から慕われるアイドルのような存在

   でした。」


美紗「彼女に会えばどんな動物も再び笑顔

   になります。」


美紗「雪豹は皆から慕われてる彼女を見て

   とても誇らしく思いました。」


美紗「私も彼女のように鋭い爪も牙もない

   草食動物だったら、皆を幸せに出来

   たのかな。」


美紗「雪豹はそう思わずにはいられませ

   んでした」


美紗「...皆が寝静まる夜中、雪豹は兎の

   お家に行きました。」


美紗「いつも皆を元気にしてくれてありが

   とうと雪豹はウサギにプレゼントを

   用意したのです。」


美紗「兎の部屋に近付くと」


美紗「部屋から彼女のすすり泣く声

   が聞こえました。ですが、雪豹は

   肉食動物です」


美紗「慰めたいけど...、」


美紗(どうせ、また怯えられる...。)


 この爪で触れるだけで彼女を傷付けてしまうのではないかと、雪豹は思い。


 雪豹は兎にバレないようただそっとその場所から立ち去る事しか出来ませんでした。


雪豹「...私には、...出来ない。出来ません...」


 雪豹の胸は誰かに傷付けられた訳でもないに、張り裂けそうなくらいに苦しくなりました。


 次の朝、雪豹は毎日の日課である村人の指示が終わると


 一人の村人の子が周りに止められながら、興味本位で彼女に話かけてきました。


雪豹「肉食動物である私に話掛けるなん

   て、胆の座った子供もいるのです

   ね。自殺志願者ですか?」


と、彼女は興味本位で話し掛けて来た子供に向かってそう言いました。


 どうせ、肝試し感覚で近付いてきた動物の子だろうと彼女はその時そう思ったからです。


子供「皆、肉食動物に話し掛けるだけで

   食べられるって言ってたけど」


子供「やっぱりそんな事なかった、誰も

   ちゃんとお姉さんと話した事なか

   ったんだね。」


 子供はあまりにも雪豹が大きいので、自分を食べてもお腹は膨れないと言います。


 最初こそ、雪豹は生意気な子供を本当に食ってやろうかと思っていましたが


 その子供と話してる内にその考えは徐々に変わっていきました。


子供「だってお姉さんの顔見たとき、

   肉食動物だって思えないくらい

   悲しそうな眼をしてたから」


雪豹「私は肉食動物ですよ。そんな弱い

   存在ではありません。」


子供「...雪豹のお姉さんは今のままで、

   本当に良いの?」


 雪豹は自分の醜い手を見ながら、どうして自分は雪豹に生まれてしまったのか考えます。


子供「仲良くなりたいって気持ちに、

   お肉を食べる動物も草を食べる動物

   も関係ないよ。」   


雪豹『肉食動物も草食動物も皆同じ星に

   生まれた仲間です、何故あなた方

   にはそれが分からないのですか...!!』


 初めは、子供の言っている意味が雪豹にはよく分かりませんでした。


 ですがいつしかそれは願ってはいけない物だと雪豹は自分に言い聞かせていたのです。


子供「...答えは何処にあるの、...ねぇ私

   何を叶えたいの。答えは此処にある

   よ、あなたの中に」


子供「そして、...捜さなくてもそこに

   ある。」


 と、動物の子供は歌いながらその小さな手で雪豹の胸を指差して言います。


美紗「そして、その言葉を聞いた雪豹は

   急いで兎の元へと走って行きました。」


雪音「...それで最後ですか?」


 画用紙で作った紙芝居の絵本を閉じて、雪音に渡す。

 

 これは私が雪音の為に作った本で、最初からそうするつもりで作ったから。


美紗「うん。続きは雪音に作って欲しい

   から、此処から先を描いても

   良かったんだけど」


美紗「それは雪音が晴華さんと上手く

   いったらね。」


雪音「最後まで、本当に貴女らしい作品で

   したね。色々現実と異なる点が

   あるのはフィクションならではの

   良さとも言えます」


美紗「でも提出期限に間に合って良かった

   よ。紙芝居だから思ったより時間が

   かかちゃって...本当、間に合うか

   凄いヒヤヒヤした」


雪音「お疲れ様です。良かったですよ。

   ...この紙芝居はありがたく頂戴

   致しますが、本当に良いのですか?」


美紗「何が?」


雪音「時間も掛かっていらっしゃる作品です

   ので、思い出が深い物ではないかと」


雪音「本当に私が頂いても良ろしいの

   ですか?」


美紗「うん。最初から雪音にあげるために

   作ったやつだから、受け取って欲しい

   な」


雪音「...ありがとうございます。...ところ

   で、杏里さんにもう一つお聞きしたい

   事があるのですが」


美紗「ん?」


雪音「先日に、瑞撫様に嘘をつかせ。私を

   騙した件の事...覚えていらっしゃいます

   か?」


美紗「あー...。...覚えてなかった事にしちゃ

   駄目?」


 雪音がお菓子で酔ってキスしちゃった件...、瑞撫さんに助けて貰ったお陰で一命は取りとめたんだけど...


 その時の事を雪音はまだしっかりと覚えてたみたい...。


美紗(むしろ忘れていて欲しかった...、)


雪音「なる程。しっかりと覚えていらっ

   しゃるようで良かったです」


雪音「物語の出来次第で杏里さんの処罰を

   何にしようかと考えていたのですが、

   ...今、丁度決まりました。」


美紗「...因みに、瑞撫さんは?」


雪音「彼女には運動場を10周走って頂きまし

   た後(のち)、世界一苦いと言われる苦丁

   茶(くていちゃ)を笑顔で差し入れまし

   た。彼女は主犯ですから」


美紗「雪音さん怖いよ!?運動場10周って

   、かなり厳しくない!?私そんな

   走れないよ!?」


雪音「彼女はかなり体力がありますからね、

   10周程度では息切れすらしないはず

   ですよ。...私の前ではわざと、して

   いましたが」


美紗「瑞撫さん...一体何者...、」


雪音「私が初めてお会いした時は淑女の鏡

   のようなお方だったのですが...。情報

   によりますと継承権がお兄様に確定して

   から、あのようになられたようですよ」


美紗「へぇ...そうなんだ...」


美紗(このまま話剃らしてたら、雪音忘れて

  くれたりしないかなぁ...)


※キャプション

  

雪音「さて、...杏里さんの処罰について

  ですが。心の準備は宜しい

   ですか?」


 まぁ、そんなすぐに思い付いたような作戦に雪音が引っかかるはずもなく...


美紗(出来れば、運動とかじゃない...簡単な

   奴で!!...お願いしますーーーー!!)


雪音「杏里さんには晴華さんのお手伝いを

   して頂きたいのです」


美紗「え...?」


美紗「...そんな事で良いの?」


 てっきり、瑞撫さんと同じくらいきついことさせられるんじゃないかって思ってたけど...。


 ...でも、それと同時に少しだけ何か残念に感じるのはなんでだろう...、


雪音「作品も予想よりも出来の良いものでした

   したから。これくらいの物が

妥当だと

   言えるでしょう」


雪音「ですが、晴華さんは私にはさせられない

   と断ってしまいますのでお手伝いの

   内容の詳細はよく分からないのです」


雪音「ガーデニングや馬小屋のお掃除などを

   していらっしゃるという事は存じている

   のですが...」


美紗「ううん、橘さんとももっとお話したい

   と思ってたから大丈夫だけど...。え?

   馬小屋とかガーデニングって事は...

雪音のマイホーム?」


雪音「そうなりますね。流石に無料というのは可哀想

   ですから、お昼は此方で用意致しま

   しょう。彼女には、私の方から

   そのようにお伝え致します」


※キャプション


 ルンルン気分で、家に帰ると玄関先にいたみゆがこっちを向いてた。


 可愛いなぁと思ってみゆーと呼んでみるとすぐにリビングの方に走り去っていく。


美紗「これは私に対して絶対照れてる、」


くゆ「姉さん、お帰り」


 と、先に帰って来ていたくゆに甘えるように身体をこすりつける愛犬のみゆ


美紗「ただいま、くゆ」


...くぅんくぅんとくゆの顔を見ながら、周りをくるくると回っている黒柴のみゆに対してくゆははいはいと手の平で2回軽く叩く。


美紗(なんでそれで逃げないんだろ...?)


美紗「みゆ~♥️」


 逆にその払われた手を構って貰えたと思ったのかな、尻尾をぶんぶんとふってくゆの手の平をペロペロと舐めてる...。


 私の声には勿論、ガン無視だ。


美紗「みゆはベッタリされるのが嫌なの

   かな。じゃぁ、私も...!!」


 私がくゆの真似すると、びっくりしたのか凄い勢いで柴犬のみゆはリビングの方に走っていった。


美紗「あっち行けじゃないよ!?

   あれ!?」


くゆ「助かった...。散歩してた時、他の子触っ

   たら中々離れてくれなくて...はぁ、

   やっと向こう行ってくれた...」


美紗「...くゆからドックフードの匂いでも

するのかな」


と、クンクンとくゆの首もとの匂いを嗅いでみたけど...そんな匂いなんて一切しないけどなぁ...。


美紗「クンクン...」


くゆ「な、何///!?...急に、もしかして...

あ、汗臭いとか!?すぐシャ、シャワー

   浴びるから!!散歩行った後だからっ」


美紗「え?...どっちかと言うと無臭だから

   大丈夫だと思うけど...」


くゆ「シャワー浴びてくるっ///!!」


とそのままくゆはお風呂場へと去っていってしまった。


...いや、本当に全然臭わないんだけどね?


※スライド


くゆ「姉さん、なんか今日良いことでもあったの?」


美紗「うん、すっごい良いことあったん

   だよ...!!...あれ、...香水?」


 シャワーを浴びたくゆから、...凄いフローラルな香りがする。


美紗(んー...余計な事言っちゃったかな?)

 

 いつもの匂いの方が私は好きなんだけど...。まぁ、いっか。


くゆ「どうしたの?」


美紗「ううん、えっとね。私、雪音のお家に

   行けるんだって!!」


くゆ「...何言ってるの...姉さんがその人の家に  

   行くんでしょ?」


美紗「あは、は...。そうなんだけどね、好き

   な人のお家だからドキドキしちゃって...」


くゆ「...へぇ。...前の人のとこ?」


美紗「そうそう、凄いお金持ちの子のお家

   だから...。凄く緊張するなぁ...」


くゆ「...だったら、行くのやめたら良い

   じゃん」


美紗「くゆ?」


 くゆはソファーから立ち上がって、冷蔵庫の方へと向かっていく。

 

 そして冷蔵庫の中から、麦茶を持って帰ってきた。


くゆ「ごめん、...冗談。分かってるよ、ちょっ

   と意地悪言いたかっただけ」


くゆ「お姉ちゃんが行くときは、その人のご家

   族にお土産とか持っていった方が良い

   かもね」


美紗(お姉ちゃん?)


美紗「うん、そういうのは大事だよね。ありが

   とう、くゆ!!本当にくゆは私の自慢の

   妹だよ」


※スライド


??「....」


??「........」


??「...宜しいでしょうか、」


雪音「どうぞ。」


??「雪音お嬢様...、学園生活の方は如何

   お過ごしでしょうか...?」


雪音「...かなり充実した日々を送らせて頂い

   ていますよ。本来でしたら貴女も...」


??「...いえ、」


??「雪音お嬢様をお守りする事こそが、

   私の最大の誇りであり、そして我が

   使命であると自負しております。」


??「お嬢様の身の安全は何よりも優先されるべき

   重要事項です。そのような物は私め   

   には不要でございます。」


※SE コツコツ音


??「椿様...、」


??「お嬢様のお幸せの為とあらば、

   この橘麗夜...この身をも雪音

   お嬢様に捧げる所存です。」


??「...例えお嬢様の心証を悪くしてし

   しまうとしてもだ、...今後のお嬢様

   の未来の為にも致し方ない。」


??「お嬢様には彼女の事を忘れて頂かねば」


※キャプション


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