第六部「メランコリック症候群」【ゆずるう】
チチチッと雀が電柱から鳴いている声が聞こえる...そんな珍しく雨の降らなかった6月中旬の晴天の朝。
...合同授業で流雨と組みたい。そのために、美紗には流雨と組むことを事前に伝えておいたし、
最近はずっとその日がくる事ばかり待ち望んでいた。
柚夏(あとは流雨を誘うだけなんだけど、)
柚夏(...その"誘う"というのがどうにも
難しいんだよね。むず痒いという
か...、)
...もっと早くに誘えれば良かったんだけど、いざ誘おうとすると
緊張してしまって 流雨に中々声を掛けられなかった。
柚夏(私はっ、恋する乙女かッ!!、、)
柚夏(...結構時間もあったのに。気付けばもう
そんなに時間がない、)
柚夏(別に悪いことする訳じゃないのにな...)
柚夏(こういうときに美紗の行動力が本当に
羨ましいと思う...。)
...さり気なく話し掛けるのは出来るんだけど、流雨に絶対断られないという保障なんて、どこにもありはしないから....。
柚夏(自信が無さすぎる.....。)
生徒N「えっ、、...さっきからすっごい格好
いい人がこっち見てるんだけど...////!!、、(小声」
生徒F「いや 多分私を見てる。最近
シャンプー変えたし」
自信満々に話し掛けて 「いや、もうやる人決まってるし遅くない??」とか言われたら、それはそれで悲しい。
関わらないで欲しいって言われたし。やっぱり話し掛けるのは『ウザい』って思われるかな。
柚夏(...私は、別に美紗が古池さんを慕う
みたいな『愛』なんて感情ないから...
自信がないなぁ。
...見た目は"こんなんな"癖に)
それにしても...まさか私がここまで一人の子に固執するなんて 今まで考えもしなかったな...。
というかこれ...普通にストーカーでは?
柚夏(...小さな女の子の後に付いて
話し掛けようと、遠くから見つめてる
っていうのは変態なのでは...!?!?、、)
柚夏(いや、でも仲良くなりたいし...。
煩くないし 大人しいし 一緒に居て
楽しいって思う)
柚夏(騒がしいのもそれはそれで楽しいと
思うけど)
柚夏(私達は友達だから。だからもうちょっと
話し掛けても多分気持ち悪がられない、
あんな可愛い子と)
柚夏(私が友達とかおこがましいけど...)
というかあんな可愛い子がそんな事思うわけないでしょ、多分流雨の事だから分かった...って感じで終わる。
柚夏(こうやって、遠くから見てるのは本当
気持ち悪いっていうのは分かってるん
だけど、...だってすっごい似てるんだもん)
柚夏("私が捨ててしまった人形"に。)
初めて会った時から思ってたけど
流雨を見てると...、髪色こそ違えど小さい頃に泣いてまでせがんでお父さんから買ってもらった日本人形の事を思い出す。
柚夏(本当に大事にしてたからな...、なんで
捨てちゃったんだろう)
柚夏(まぁ"理由"は分かってるけど...。)
...まるで日本人形のように完成された流雨の無表情の顔に、愛しさが込み上げてくる。
流雨と日本人形が違うのは分かるけど
それでもあの子を捨ててしまった分 "るーちゃん"に似てるあの子を大事にしてあげたい。これは私のエゴだけど
名前までそっくりなのは多分偶然じゃないと思う。だから"化けて出てきたり"しないでね、、本当は捨てたくなんてかったんだよ、、、
柚夏(...流雨に会ってからというもの、
可愛いものを見ると、どうにも抑え
きれなくなってきてる自分が...。)
柚夏(もうあれから2年近くも経ってる
のに。)
流雨に似ているあの人形はクソな父親が離婚してすぐ、あの人の為に全部捨ててしまったけど
...結局 全てが無駄に終わってしまったから。ほんとに捨て損。
柚夏(...この、水玉の傘良いな。)
玄関口の傘たてに入っている色彩豊かな傘をじっくり眺めながら、ため息をつく。...あー、幸せが逃げていく感...。
生徒N「駄目っ、、ため息も格好いい...♥️♥️、(小声」
生徒F「多分私達には考えられないような
凄い悩みなんだわ(小声」
柚夏(...最近バイトづくしだったから、精神的
に参ってるのかな...。)
でも一年生の教室捜してもどこにもいないし。だから、いつもこの辺で待ってるんだけど
柚夏「二年生の教室にいるのかな」
たまには勇気を出して向こうに行ってみるか。
※スライド
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