水族館編【ゆずるう】


 前回は酷い結果で終わったけど、今回は師匠のアドバイスもあって水族館に行くことにした。


柚夏「おはよう。今回は前回の反省を活かして

   水族館にしてみたよ。」


流雨「すごい楽しみ...」


流雨「魚とか熱帯魚とか好きだから。」


流雨「ヤモリとかも展示されてるのかな」


柚夏「さぁ...?」


柚夏「兎に角、今日は藤奈さんも居ないから

   ゆっくり二人で楽しもう」


流雨「ということは 二人っきりで水族館

   デートとって事...??」


柚夏「...第三者目線で、茶化されると照れる

   なぁ...///」


柚夏(...水族館なら魚好きの流雨の興味も

   引けるでしょ。デートの定番でも

   あるし)


柚夏(あの人はあの人でそれなりに反省

   してるんだけどね...。でも、それは流雨

   達の問題だから)


 当事者じゃない私が敢えて首を突っ込むのは少し違う気がする。心配だけど、そっちの方は見守るだけにしておこう。


 と大きなシャチが看板の水族館を見る。マンボウや首を上下に動かしながらこっちに寄って来るイルカ


 リング状の水槽を勢い良く泳いでるマグロに、フラフープを鼻の上に乗せて落ちないように器用に動くアシカショー


 ライトアップの深海魚コーナーにはめちゃめちゃ大きい蟹やグソクムシにメンダコ。チンアナゴもゆらゆらと顔を出していて可愛かった。


流雨「これが、かの有名なバラムツ...」


柚夏「その魚がどうしたの?」


流雨「...柚夏、知らないの?バラムツは脂が

   消化されないからそのまま排出される

   んだよ。でも凄い美味しいらしい...」


柚夏「だから少量ずつ食べるの」


流雨「グソクムシも海老みたいな味する

   らしいし」


流雨「一回食べてみたいよね...」


柚夏「これを見ながら言えるの

   チャレンジャーだなぁ...」


※スライド


流雨「ヒトデってこんな感じなんだね...。」


 と魚の魚群や触れ合いコーナーのヒトデを見ていると見知った声が聞こえてくる。


??「はい、ここをピンッとすると...」


??「貴女の選んだハートのAが出てきました」


柚夏「あっ、師匠」


師匠「おー、凄いたまたまぁ。今日はこっちで

   バイトだよ。柚夏ちゃん」


と手慣れた手付きで空中で瞬時にトランプをきる師匠。これももはや一種の芸当である。


 そして、パチンと指を鳴らすと手に一本のカーネーションが出てくる。それをマジックを見ていた少女に渡す師匠


柚夏「相変わらず凄い手付き。」


師匠「マジックだけには自信があるからね。

   プロですから、何年やってると思うの」


流雨「知り合い...?」


柚夏「お母さんが居なくなってからお世話に

   なった人だよ。マジシャンのザクロ

   さん」


師匠「マジシャンのザクロです」


柚夏「保護者みたいな感じ。時々様子を

   見に来る人」


柚夏「というか、人前でそういう呼び方は

   やめて下さい」


師匠「まるで親と子供の会話みたいだね。」


師匠「二人っきりの時だけは良いって事?

   可愛いねぇ」


柚夏「そんなんじゃないってば」


師匠「昔の柚夏ちゃんを思い出すよ」


師匠「昔の柚夏ちゃんはもっと女の子

   らしかったからねぇ。今の柚夏ちゃんも

   可愛いと言えば、可愛いけど」


師匠「揶揄(からか)い甲斐があって」


柚夏「可愛いって...っ///、、人前なんです

   からっ///!!」


 そう言ってシルクハットを被ってステッキを一回転させる師匠。それから帽子をとったシルクハットを軽く2回叩くと千円札が3枚出てきた


流雨「凄い...。」


師匠「これくらいなら柚夏ちゃんでも

出来るよ」


柚夏「ついこの間教えて頂きましたからね。」


柚夏「ほら」


と、師匠のシルクハットから千円札を出す。師匠から教わったマジックを同じようにやってみると意外と周りにウケた。


 そして手元に違和感がして 気付くと、千円札が何かの箱にすり変わっていた。視線を逸らした隙にすり替えるマジックである


師匠「隣のお嬢さんにどうぞ♪」


柚夏「やっぱり師匠の方が一枚上手だなぁ...」


師匠「柚夏ちゃんにはもうあげたからね。」


 と、箱の中を開けて見ると水族館の売り物だろうかグソクムシのぬいぐるみが入っていた。


柚夏「なんで私に渡すんですか」


師匠「仲が良さそうだったから」


と、リボンの間に付箋が貼ってある。「その子のプレゼントにどうぞ」と


柚夏(余計なことを...、、プレゼントだって

   お金掛かるのに、この人は)


柚夏(というかなんで流雨が好きだって

   知ってるんだあの人)


 流雨に貰ったプレゼントを渡すともの凄い喜んでくれた。飴をあげた時より喜んでるんじゃないか...?


流雨「グソクムシ可愛い...♡」


柚夏(あんたが、可愛いだよ...っ////!!、、)


 今日は師匠に良いところを取られたけど、いつかもっと可愛いぬいぐるみを買ってあげたいな。おっきなテディベアとかも似合いそう


柚夏(大きなぬいぐるみを両手で持ってる

   流雨の想像をするだけで可愛いもん)


柚夏「ふぅ...、疲れたね。」


 色々見て回ってからお昼に行く。なんかデートというより、休日に家族サービスしに行くお父さんみたいだけど


お土産コーナーもざっと見ておこうかな。


柚夏「流雨はどんな魚が好きだった??」


流雨「強いて言えばマグロとくらげ。あと

   シャチとか」


柚夏「分かる。くらげ光ってて綺麗だった

   よね」


流雨「ゆらゆら動くのも綺麗だし、泳ぎ方が

   優雅。海の流れにそって泳いでて

   不規則なのもいいよね」


柚夏「シャチも近くで見ると可愛かったし」


柚夏「皇帝ペンギンも良かったなぁ〜」


 毛がふさふさで換毛の季節なのか茶色の子もいた。あの動いた時に少しだけ見えるよちよち歩きがたまらない


流雨「ペンギンも良いよね。エンペラー

   ペンギン、皇帝ペンギンは餌を3ヶ月も

   飲まず食わずで雄がずっと育児するん

   だって」


柚夏「3ヶ月も!?!?」


流雨「だから皇帝ペンギンは世界一過酷な

   子育てだって言われてるんだって」


流雨「その間雌が餌を取りに行くから、雌が

   シャチやアザラシに食べられたら一巻の

   終わりだね」


柚夏「あんなに可愛かったのに意外と

   凶暴なんだね。シャチ...」


流雨「そのギャップが堪らない...」


折角だし、アイスとか流雨に奢ろうかな。


つぶつぶアイスクリーム。


 丸いのがいっぱい入った果実のアイスだ。それを二人分買って流雨に渡す。


→A苺のアイス

 Bショコラアイス


柚夏「今日は暖かいし、今の季節には丁度

   良いね。少し冷たいけど」


柚夏「流雨はどっちが良い??」


→A苺のアイス


流雨「折角だから半分交換しよう...、」


とスプーンを使って私のと半分こする。


柚夏「これならふたりとも別々の味を

   楽しんで食べられるね。」


柚夏(女子同士のこういうのって良いよね。)


流雨「そうだね...」



→Bショコラアイス


流雨「美味しい。」


柚夏「それは良かった。」


流雨「折角だから柚夏にもあげる。

   ほら、食べてみて」


流雨「美味しいよ」


と、口の付いたスプーンで私の方にアイスを入れる流雨。いや、、そういうキモい感情はもってないけど 妹みたいで可愛いなぁと思った。


柚夏「あっ、美味しい。」


柚夏(甘いのは苦手だったのに...、

   何でだろう。)


流雨「美味しいよね...」




柚夏「水族館は楽しかったかな??」


流雨「たまに行く水族館はやっぱり良いね。

   柚夏はどうだった...?」


柚夏「楽しかったよ。」


流雨「それだけ??」


柚夏「それもあるけど。流雨も以前より喋って

   くれるようになったね」


流雨「柚夏の事が好きだからね...。私なりに、

   少しは信頼してるつもり。」


流雨「そもそも人を好きになった事がないの。

   その中でも柚夏は"特別"」


柚夏「私は流雨の事好きだけど、流雨は

   私の事どう思ってるのかな」


流雨「別に普通。もっとロマンチックな

   事があったら良いなとは思ってる」


柚夏「...私のどこが気に入ったのかな。私は

   お金も、何も持ってないよ」


流雨「高校生にお金がないのは当たり前...」


柚夏「そうなのかな。両親もいないし」


流雨「お金がなくとも、人柄が好き」


柚夏「人柄、かぁ...。」


柚夏「そういやそろそろ文化祭だね。

   2年生は何するの?」


流雨「こっちは演劇...そういうクラスの学科

   だからね。俳優やアーティスト学校の

   学科」


柚夏「演劇...。」


柚夏「何の役をやるの?」


流雨「崖の上のラプンツェル。主人公は

   篠崎さん。私は魔女役」


柚夏「朝乃先輩髪長いもんなぁ...」


柚夏「というか魔女??」


流雨「崖の上に閉じ込めてる魔女だよ。

   髪の力が欲しくて閉じ込めてる...」


流雨「柚夏は?」


柚夏「こっちはハロウィンで作った服を改造

   して、お化け喫茶をしようって話に

   なって」


流雨「お化け喫茶。なるほど、新しい...」


柚夏「...それと、流雨の事をもうちょっと

   知りたいなぁーって」


流雨「例えば?」


 流雨はアイスを食べ終わったのかリラックスしながらもう食べ終わってる。


私も溶ける前に食べないと


柚夏「好きな事とか嫌いなこと」


柚夏「私達はお互いもっと情報共有した方が

   良いと思うんだ。"恋人"として」


流雨「情報共有...?」


流雨「必要ないと思うけど...」


柚夏「具体的に何をして欲しいとか、して

   欲しくない事とか」


流雨「柚夏は真面目だね...」


流雨「苛めなけれはそれでいいよ。それ以上

   は何も求めない」


流雨「一人ぼっちは慣れてるし、机をくっつ

   けたら泣いたりする子もいたから」


柚夏「自分と違う生き物だと思ってたの

   かもね。優れた人はすぐ叩かれる

   から」


柚夏「自分とは違う流雨に嫉妬しただけだよ」


流雨「嫉妬...。どうしようもなくない??」


柚夏「...確かにどうしようもない。」


柚夏「というか、そういう悲しい話じゃなく

   て、恋人としてして欲しい事」


流雨「私だって嫌われたくない。でも、誰かに

   愛されたいとも思う。けど、愛され

   過ぎるのは嫌」


流雨「そういうのは我儘なのかな」


流雨「...じゃぁぎゅっとしてみて。

   一回してみたかった」


そう言って人が居ないのを確認して、流雨をぎゅっと抱きしめる。小さい身体でもちゃんと温かい。


凄い落ち着く匂いがする...。懐かしい、この感じ


好きだっていう気持ちを伝えたい。でも...もし気持ち悪い奴だと思われたら...。


流雨「柚夏はもっと自信を付けた方が良いと

   思う」


柚夏「自信?」


流雨「自分自身のしたい事、ちゃんと見つけた

   方が良いよ。恋愛とかそういうの

   じゃなくてもっと深い所で」


柚夏「したい事、か...」


流雨「趣味があったら良いと思う。恋人は

   貴女のお母さんじゃない」


柚夏「....」


柚夏(見透かされてたか、恋人は貴女の

   お母さんじゃない、か...)


だとしたら私と流雨の関係性ってなんだろう。


流雨「だから私にそういうのを期待しても

   無駄。私は私、もう変えられないの」


 確かに私は流雨に期待し過ぎてたのかもしれない。


流雨「貴方が好きなのは"私"じゃない。別の私」


柚夏「別の流雨...?」


流雨「柚夏は私と関わる事によってお母さんに

   許して貰おうとしてる。でもそれは

   違うの」


流雨「私は柚夏のお母さんじゃないし、

   依存されてもそれに応える器量が

ないの...」


※キャプション

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