⑬初めてのお泊り編2(お風呂シーンもあるよ)【みさゆき】


猫ちゃんとお別れした後。特にこれといって怪しい人を見掛けることもなく...


 私達は無事に近くのスーパーにたどり着いた。


美紗「着いたね、」


くゆ「お疲れ様」


美紗「くゆも疲れたでしょ。ありがと

   ね、付き合ってくれて」


くゆ「確かにこれは結構疲れるけど。

   ...姉さんって普段からあんまり

   我が儘とか言わないでしょ」


くゆ「此処で恩を売っておくのも

   悪くないかなって。今度また

   行きたいとこもあるし...」


くゆ「....。」


くゆ「母さんに夕飯頼まれてるから。

   そっち行ってくる。...あ、でも

   ...私居ないと困るよね、」


美紗「んー...別に良いんじゃない?

   いざとなったらこっちにも

   秘密兵器あるし、」


美紗「私も付いてるし。店の中だったら

   人目も多いから」


 と、リュックのベルトの留め具部分についてるハムスターのキーホルダーをくゆに見せる。


夜に出掛ける事があるからって。


 私が取っちゃわないように。お母さんが防犯ブザーって分かりにくいデザインを付けたんだけど、


 音が鳴った時は本当にビックリしたから...多分普通の人でも言われないと気付かないんじゃないかな。これ。


美紗「それにそっちの方が早く家に帰れ

   て安全だしね。」


くゆ「...でも、」


美紗「それに雪音も強いから大丈夫。

   というか、私がこの中で一番弱い。」


雪音「どこから来るのかが事前に

   分かってさえいれば まだ対処の

   しようもあります。」


美紗「だから、買い物くらいのちょっと

   の時間なら大丈夫だよ。」


美紗「くゆもあんまりこっちの事

   気にしないで、買い物にいって

   きて」


くゆ「...買ったら。すぐ戻ってくるからね?

   日用品コーナーの方でいい?」


美紗「うん。それとジュースも一緒

   に入れといて。くゆと私のと、」


美紗「それに雪音のも」


くゆ「分かった、」


美紗「雪音は...美味しいお茶で。

   ジュース代は別で私が出す

   から」


くゆ「うん。」


 食品コーナーに向かって歩いてくくゆを見送りながら、私達もその後に続いてく。すぐに曲がっちゃうけど


雪音「良いのですか?」


 雪音の問いに、買い物かごをとりながら。私は空いてるもう片方の手を雪音の前に差し出す


 まるでお姫様をエスコートする王子様のように。ちょっと庶民的だけど、私にはこのくらいの方が丁度良い


美紗「両手を繋げば、仲の良い高校生

   だなぁって」


美紗「目立つと思うから。ちょっと

   でも雪音が安心出来たらなって」


雪音「お優しいのですね。」


美紗「私じゃ、ちょっと頼りないかも

   しれないけど。どっちも大切に

   したいの」


雪音「充分ですよ。...貴女なら」


 そういって。雪音はまるでダンスに誘われたお姫様のように、優しく私の手をとってくれる。


美紗(手、細いなぁ...)


美紗「...でも、周りに気を付けながら

   歩くのって結構大変だね」


美紗「麗夜さんはいつもこんな事してる

   の?」


美紗「途中で癒しがあったから

   良かったけど、私なら毎日あんな

   事出来ないなぁ。」


 くゆだけさせるのも嫌だったから。誰かいるかもって、時々後ろを見ながら歩いてたけど...。


 ずっと気を張り詰めてないといけないあの何とも言えない不安感。


 気だけがずっとすり減っていって、こんなのずっと続けてたら私なら絶対に耐えられないだろうなぁって思った。


雪音「彼女は五感を研ぎ澄ませていますから。

   ...すみません。無茶なお願いをして

   しまって」


美紗「雪音が謝る必要ないよ。本当に

   よく出来るなぁって思っただけで、

   それだけだから...、」


美紗「雪音は何色のタオルがいい?」


雪音「杏里さんが選んだ物で良いですよ。」

   

雪音「この事を思い出に残しておきたい

   ですから。折角なら貴女の好きな

   色を使いたいです」


美紗「...あ、えっと じゃぁ。これ かな。」


雪音「ピンクですか?」


雪音「海の時は白い水着でしたから。

   白をお選びになると思って

   いましたが、当てが外れて

   しまいましたね。」


美紗「白は地味だから。雪音の髪の色

   も同じくらい好きだし。ピンク

   色の紫って紫陽花みたいで良い

   よね。」


雪音「因みに、紫陽花の花言葉には"家族

   団欒"という意味もあるそうです」


美紗「だったら丁度ピッタリだよ。

   これにしよ、バスタオルは

   前から好きな白にしようかな」


美紗「雪音はクリームとかも似合いそう

   だけど」


雪音「あとは歯磨きやコップなど。

   そういった物も必要ですね」


美紗「うん。でも諦めずに此処に来て

   正解だったよ。後悔のない選択肢を

   選んでおいて良かった、本当に」


雪音「心の何処かでは、」


雪音「...私も此処に来たいと思っていた

   のかもしれませんね。」


雪音「こうやって、何千万もする買い物を

   する時よりも。」


雪音「ずっと此方の方が価値のある物に

   思えてきます。フラットに買い物出来る

   からでしょうか」


雪音「...きっと、私は楽しさを感じて

   いるのでしょう。貴女と買い物が

   出来て 楽しいです。」


美紗「....」


美紗「私も楽しいよ、雪音」


 このままずっと一緒にいたいくらい


くゆ「姉さーん、買ってきたよ。

   何もなかった?」


 買い物が終わったくゆが、野菜のはみ出たバックを片手にぶら下げて戻ってくる。


美紗「あ、うん。ありがとくゆ」


美紗「今丁度コップを選ぼっかなって」


くゆ「私 邪魔だった?」


美紗「ううん?」


雪音「杏里さんの妹様、...妹さんに少し

   聞きたい事がありまして」


くゆ「なんですか...?」


美紗「くゆに聞きたい事?」


雪音「お姉さんと仲良くなるにはどう

   すれば良いでしょうか?」


くゆ「姉さんと...?」


※キャプション


雪音「私にも血の繋がっていない姉が

   おりまして、お二人の関係が

   とても羨ましく思えたのです。」


雪音「私は貴女方のように仲が良いわけ

   ではないですから」


くゆ「あぁ...。そういうことですか...」


 あれだけ弱味を握られるのを嫌がってた雪音も、家族のために。晴華さんのために 今は自分からそれを解決しようと頑張ってる。


美紗(私とくゆは結構前から仲が良

   かった気がするけど、それじゃ

   あんまり宛(あて)にならないよね)


雪音「私の姉は杏里さんと同じく、

   血は繋がっていません。ですが、

   それでも...」


雪音「私にとってはなくてはならない人

   なのです。」


雪音「日に日に窶れ(やつれ)ていくのは

   分かるのですが、どうすれば

良いのか...分からなくて。」


雪音「本なども試して みたのですが、

   彼女はそれでも無理をし続けてしまい

   ますから...」


美紗(...私を見る目が痛いよ。くゆさん)


雪音「本人は気付いてないと思って

   いるのでしょう...。」


くゆ「分かる気は します。」


くゆ「無理っていっても勝手に

   やろうとするし」


美紗(耳が痛いよ。くゆさん。)


くゆ「いつもはぼけっとしてるのに。」


くゆ「そもそもお人好し過ぎなんですよ、

   自分の身体がひとつしかないのを

   分かってないんじゃないかなって」


雪音「そうですね...。」


美紗(えっと...、本人隣に一応いるんだ

よ?二人とも)


くゆ「...お姉ちゃん呼びすると良いです

   よ」


くゆ「名前じゃなくて。」


くゆ「私と姉さんは"同じ人間"で上も

   下もないんだって、...私は神様

   でもなんでもないんだよって」


くゆ「理解させるには一番これが

   手っ取り早い方法かと。」


雪音「...お姉ちゃん、呼び...ですか。」


くゆ「そこから姉さんは姉さんぶる

   ようになって。面白かったですか

   らね」


美紗(姉さんぶるってなに)


雪音「それは 効果が期待出来そう

   ですね。」


 そう言いながらこっちを見る雪音に。私はただ苦笑いを返すしかなかった


美紗「そういえば昔くゆって私の事

   なんて呼んでたっけ。今は"姉さん"

   だけど...昔は確か美紗お姉」

 

くゆ「余計な事は思い出さなくていい

   からっ///!!、、」


くゆ「...普段記憶力ない癖に。

   こういう時だけちゃっかりしてる

   よね、姉さんって。ほんとに」


美紗「くゆとの大切な思い出だもん。

   ちゃんと覚えてるよ」


くゆ「姉さんはさ、」


くゆ「本当に天然タラシだと思う。」


美紗(本当に天然タラシ!?)


美紗「別に本当の事言っただけだよ。

   それにそういうのは、ゆずかーさんの

   専売特許だから」


くゆ「じゃぁ柚夏さんに感化されて

   るんだよ。姉さんそういうとこあるし」


雪音「確かにありますね。」


美紗「もー、雪音までー...」


柚夏「...本人が居ないからって、言い

   たい放題言ってくれるね? 美紗」


美紗「かーさんっ!?!?」


美紗「なんでいるの!?」


柚夏「いや...、普通に近所だし。」


美紗「それにしてもタイミング悪すぎ、」


柚夏「安いの何かないかなって

   見てたら、美紗っぽい声が聞こえて

   来たんだけど」


美紗「いや、うん、これはちょっとした

   誤解で、」


??「美紗ちゃーーーーーーー」


美紗「わっ、」


 と背の高い女性が背中から抱き付いてくる。この声と、抱きつき癖は...!?


美紗「みっ、みずなさん!?」


ビックリした...。


瑞撫「って、この子もしかしなくても、

   美紗ちゃんの生妹ちゃん!?」


 ばっと、腕をほどいてくゆの事を凄い顔で見つめる瑞撫さん。


 今日もこの人は絶好調だなぁ。


くゆ「生?」


瑞撫「え、ちょっと待って。

   どうしよう...!!現生妹ちゃんと」


瑞撫「美紗ちゃんがっ!!、そんな...、

   そんなの、チョコに入った生チョコみたい

   な物じゃない?!」


雀「それはもうただの生チョコです。

  先輩」


美紗「雀さんも、こんにちはー」


雀「こんにちは 美紗、ちゃん。」


瑞撫「見て見て!!雀ちゃん!!」


瑞撫「生妹ちゃんなんて。URレベルの生きる伝説

みたいな存在が今、この場に居ますのよ!!」


雀「テンション高いですね。」


瑞撫「はぁ~...!!尊すぎっ、ですわ...!!」


雀「貴女は何と戦ってるんですか?

目的を忘れてもらっては困ります。」


瑞撫「雀ちゃんのケチー、ちょっとくら

   い良いじゃないー。あ、もしか

   して私に嫉妬」


雀「今日のお夕飯はお肉抜きですね。その代わり

  に豆を入れましょう」


瑞撫「ぶー、ぶー」


雀「赤ん坊ですか。まだ依頼は残って

  るんですからね、」


雀「それに豆は身体に良いんですよ。」


瑞撫「それとそう、美紗ちゃんにメール

   を送ったんだけど 見てくれた?」


美紗「え、今日ですか?」


美紗(晴華さんにかき消されて

   見てないかも...。)


雀「私も雪音様に、お話したい事が...」


瑞撫「口頭ではちょーっとね。」


 と、新規の受信メールを受けとる。@imoutyanLOVEという。いかにも、瑞撫さんらしいメールアドレスでメールが届いてた。


瑞撫「「連絡、遅れてごめんなさいね。

   クリスマスシーズンって只でさえ

   注文が多くて。困っちゃうわ~」」


瑞撫「「あれはもうちょっとで完成し

    そうだから。心配しないで」」


瑞撫「「勿論会長には内緒にしておきますわ」」


美紗「楽しみにしてます、」


瑞撫「色々思う事はあると思うけれど、

   きっと上手くいくわ。大丈夫よ」


 と、瑞撫さんはさっきまでとは違う優しいハグをしてくれる。


美紗「...はい、」


雀「雪音様に。こちらを」


雀「私と"あれ"からのプレゼントです。」


 まるでかぐや姫にプレゼントを捧げる婿候補の人達のように頭を下げる雀さん。


 黒い小さな巾着に入った、格好いい烏(カラス)のエンブレムが刺繍に刻んであるお守りを雪音は雀さんから貰う。


雀「無病息災のお守りみたいなもの

  です。特に、そのお守りは"厄除け"と

  して打ってつけでしょう。」


雀「ずっと、お渡ししたかったんです。

  貴女にそれを」


雀「神社では売ってないですからね。」


雪音「これも何かの縁...。貴女のご厚意

   として、大切に使わせて頂き

   ます。」


雪音「見える所に付けておけば良いですかね」


雀「ありがとうございます、」


雀「さて、帰りますよ先輩!!、まだ

  やることはいっぱい残ってるん

  ですからね!!」


瑞撫「雀ちゃんがキスしてくれたら

   お姉さんもっと頑張っちゃうん

   だけどな~」


雀「お金頂いてるんですから、最初から

  本気出して下さい。では、また。」


 そう言って、軽くお辞儀をしてから雀さんは行きますよ。と瑞撫さんを引っ張って連れていく。


 瑞撫さんも言ってた通り本当に忙しいんだろうなぁ...。


美紗「お仕事、急がしいと思います

   けど、無理し過ぎないで下さい

   ねー。また学校でー!!」


瑞撫「美紗ちゃんも風邪ひいちゃ

   だめよ~!!」


瑞撫「リアル妹ちゃんもまたー会い

   ましょうねぇぇーー!!絶対、

   絶対よぉぉぉ~...!!」


くゆ「...、」


くゆ「どう反応すれば良かったん

だろ...」


※スライド


美紗「今日は色んな人に会う日だね。

   柚夏とか、瑞撫さんとか」


雪音「彼女の家はこの辺りではない

   はずなのですが...」


美紗「あっ、」


美紗「雪豹っ可愛いー///」


 皆で話ながら買い忘れがないかなって 色々見てたんだけど、こんなところに雪豹のマグカップがあるなんて。


 雪が降ってる中で凛々しい顔をしてる雪豹がなんか。雪音っぽく見えて、見てるこっちまで優しい気持ちになってくる


美紗「柚夏の時もそうだったけど、

   こういうのって本当にネットで

   しか売ってないんだよね。」


美紗「え〜、凄い嬉しい。」


雪音「オーダーメイドでは駄目

   なのですか?」


美紗「別にそこまでして欲しい訳じゃ

   ないから、なんとなく良い

   デザインのが欲しいなって」


美紗「手にいれるのじゃなくて、出会う

   のが目的。みたいな、ね。」


くゆ「いらないって分かってても。欲し

   くてしょうがない時ってある

   よね。」


美紗「突然の出会いっていうか、何気な

   い時に見付ける幸せって。小さな

   事だと思うけど、」


美紗「見つけた、って気持ちって

   すごい大事なんだよ。」


 ...雪音に似て可愛いななんて、流石に人の前では言わないけど


 こうやって皆でお買い物するのも。前までは考えられなかったから、それが今は凄く楽しい。


雪音「人はこういった時に幸福を感じる

   ものなのですね。非日常から特別

   感を得る、ですか...」


美紗「皆でお買い物するのも楽しいし、

   テンションが上がってるのも

   あるけどね。」


雪音「確かに、貴女と一緒に居られる

   事が私にとっての特別だと言うの

   ならば 否定は出来ませんね。」


美紗「雪音のが私。よっぽど天然ジゴロ

   なんじゃないかなって思うん

   だけど」


くゆ「...どっちもどっちだよ。」


※キャプション


 マグカップを持ち上げて、裏返してみても特に変な模様も入ってないし 凄い使いやすそう。


 普段はあんまり見掛けないのに。雪音と一緒にいるときにこのマグカップに会えたのも、


雪音「....。」


多分 何かの"縁"なのかな。


雪音「では、私のも同じものを

   お願いします。」


美紗「同じので良いの?他にも色々

   あるけど 雪音も雪豹好きなの?」


雪音「雪豹は豹ですからね。美しいその

   ラインからロゴでもモチーフに

   使われているのをよく見ます。」


美紗(猫科は大丈夫なんだ。雪音)


美紗「服の有名なブランドだよね、

   格好よくてシャープなデザイン

   が多いから、着やすいし。」


美紗「私の家にもあるよ。」


くゆ「その人...。姉さんと同じコップを

   買いたかったんじゃないの?」


美紗「え、あっ。そうなの雪音?」


美紗(マグカップに気をとられ過ぎ

   て気付かなかった。これは下僕と

   して、失格)


雪音「貴女にそこまで欲しいと思わせる

   その商品が気になったのです。」


美紗(新聞読んでて邪魔しに来る猫みたい)


 ちょっと不機嫌そうなくゆ。うーん...お姉ちゃんの知り合いばっかで面白くなかったかな...、


美紗「雪音が使いたいのを使うのが

   一番だよね。違うカップの子も

   可愛いから捨てがたいなぁ...、」


美紗(あっ、もしかしてくゆも

   マグカップ欲しかったとか?)


美紗「くゆも買う?」


くゆ「いらない」


美紗「あれ?」


 戸棚にあった箱の中に入ってる雪豹のマグカップを手にとって、2つカゴの中に入れる。割れないように


柚夏「...少し心配してたけど、」


柚夏「反省会を開く必要もなさそう

   で安心したよ。」


柚夏「手なんか繋いじゃって。」


柚夏「いや、まぁ違う意味で心配って

   言うなら。心配なんだけど...」


美紗「別に忘れてた訳じゃないよ、、

   柚夏は携帯持ってないから

   いつ電話しようか迷ってただけで」


美紗「電話って凄い疲れるんだよ。」


くゆ「反省会...。ですか?」


柚夏「彼女に嫌われるかもって、

   相談を受けてね。嫌われたら

   反省会開こうって 約束してたの。」


美紗「心配、してくれたんだ」


柚夏「携帯持ってないから。聞くに

   聞けないし、電話も出ないし」


柚夏「嫌われたら嫌われてたで聞き

   づらくてさ」


美紗「いや、ただ晴華さんと凄い長電話

   してただけだよ」


美紗(浮気された彼女かな。)


美紗「落ち着いたら話そうと思ってた。」


柚夏「まぁ、その様子だと上手く

   いったようで良かったよ。」


美紗「最終的には全部上手くいった

   から。本当結果オーライだよっ」


柚夏「本当(ほんと)かな。」

 

柚夏「まぁ...落ち込んで連絡なかった

   訳じゃないなら それでいいよ。」


美紗「柚夏のお菓子も食べたかった

   けどねー、」


美紗「成功会、じゃ駄目?」


柚夏「まぁ、最初からその予定だった

   んだけどね。」


美紗「え、本当っ!?やったぁっ!!」


 冗談で言ったのに、最初からしてくれるつもりだったなんて...。ゆずかーさん顔だけじゃなくて心もとか、どんなイケメン。


柚夏「媚を売るのが上手い奴め。」


美紗「でも、そういうの嫌い

   じゃないでしょ?」


美紗「甘いの苦手なかーさんは私の

   為に作ってくれてるって知ってるから。」


くゆ「ほんと、そういうとこ、」


柚夏「私は好きな人がいるから。」


くゆ「....」


柚夏「くゆちゃんもくる?」


くゆ「良いんですか...?」


柚夏「人数は多い方が良いから、一個

   も二個も。作るのは一緒だよ。」


くゆ「前頂いた漬物、凄く美味しかったんで

   出来ればまた、欲しいです。」


柚夏「『山形だし』ね。」


美紗「くゆ、これが本当(ほんと)のイケメン

   だよ。」


くゆ「姉さんは料理が食べたいだけ

でしょ...」


美紗「あ、バレた?」


柚夏「それでちょっと聞きたい事があって

   さ。古池さんってどういう味が

   好きとか...、恋人なら知ってる

   かなって」


美紗「狙ってるの?」


柚夏「...性格合わないの美紗が一番知ってる

   でしょ。何でもそういうのに結び

   つけるの良くないよ」


柚夏「好きな人いるって言ってるのに。」


美紗「柚夏さんが可愛くて、つい。」


柚夏「いじめっ子の発想」


美紗「あ、でも雪音甘いのは...、」


雪音「人前で頂けないだけで。好きですよ」


美紗(前のお菓子結構気に入ってた?)


雪音「レモングラスです。晴華さんが

   よく作って下さるので」


柚夏「......、」


柚夏「........。」


柚夏「...お互い腹を探るのはやめよう、」


雪音「探ってるのは貴方だけですけどね。」


柚夏「私の事嫌い...?」


雪音「普通です。ただ話が続かないと

   不安になる方なのかなぁとは思います」


柚夏「いや、まぁ...私も別に特別になりたい

   訳じゃないけど...。」


柚夏「....。」


柚夏「...引っ越しする事は変えられ

   ない...?どうしても?」


雪音「...椿様は実力重視の方ですからね、

   娘だからと誰か一人を贔屓するような

   方ではありません。」


雪音「悔しいことに、今の私では、到底実力が

   見合っていません。それは当事者の私が

   一番理解しています...。」


雪音「..."変えられない"のです。」


くゆ「....。」


美紗「私もどうにかしようと頑張ったん

   だけど、大人も参加してるコン

   テストで 優勝しないと駄目

   だって...」


柚夏「そっか...、」


柚夏「...偏見とはいえ。あの時

   本当に酷い事をしたなって、」


柚夏「謝りたかったんだけど、...その

   時間さえあんまり残ってない

   って事か、」


雪音「...ですが。」


雪音「コンテストの発表まで、

   二週間の期間があります。」


雪音「その日の内に手荷物の準備等をする

   予定でしたが、」


雪音「1日くらいの猶予は作れます。

   片付けも出来る天才なので」


柚夏「...助かるよ、」


美紗「コンテストまで後二週間、私も手伝いに

   行って良い??、というか行くから!!、」


雪音「...もう、...1日だけでしたら。」


美紗「雪音とまた会えるっ、」


柚夏「...いや、まぁ良いんだけどね...」

   

雪音「此方も多忙ですから。」


雪音「味が気に入らなければ、一切の

   遠慮なしに戻らせて頂きますよ。」


雪音「それでも宜しいでしょうか?」


美紗(雪音も譲らないとこは譲らない

   からなぁ...、見栄とか色々大変。)


 実際は凄い甘いの知ってるんだけど。


 ...ケジメっていうか、そういうのちゃんとしてるよね。怒ってますよ感を出してるんだろうけど


 実際、多分全然怒ってない。というか気にしてもない


 それは雪音の目を見れば分かる。目がそういう人の目付きじゃない


美紗(私には普通なのに...)


美紗(...相手が"そう思ってる態度"を取ってる...?、)


美紗(.....、※考えてみれば納得、)


 柚夏の警戒がちょっと溶けたから、雪音の態度が変わったんだ。


 私が素直になれば雪音は素直になるし、素直じゃない人の側にいるとそういう態度になる


美紗(『自分』っていうのが"ない"から。)


柚夏「美味しくて、帰りたくないくらい

   凄いのを作ればいいって事でしょ?」


美紗「おー、やる気ですな。流石かー

   さん」


美紗(柚夏もちょっと変わったね。)


柚夏「そのくらいしないと、合わせる

   顔ないんだよ...。」


美紗(無意識の内に相手に"合わせてる"んだろう

   なぁ※雪音の方見ながら)


柚夏「ついでに料理とかも作ろっか

   な、」


雪音「期待していますよ。」


美紗(感情がジェットコースター)


美紗「かーさんの本気料理...、

あ~...!!、今から楽しみだけど、その分

   コンテストが近付いてくるか

   ら、」


美紗「素直に喜べないのが辛いー、」


柚夏「んっじゃ、私はさっそく材料

   選びと行きますか。」


美紗「えぇっ、もう行っちゃうの?」


柚夏「もう19時過ぎてるからね、

   そろそろタイムセールの時間

   だから」


美紗「タイムセールに負けた...。」


柚夏「じゃぁ、またねー」


美紗「ういー、」


 柚夏はその話を雪音とするのが目的だったのか、話が終わったら満足してさっさと買い物にもどっていく。


美紗「私達もそろそろ帰ろっか、買いたい物

   は一通り買い終わったし。」


美紗「でも 柚夏が後ろにいたときは

   軽いホラーだったよ、」


くゆ「本人の前で言ったら駄目だよ。でも

   美味しい料理作ってくれるって。

   良かったね。姉さん」


美紗「柚夏の料理って凄い美味しいから

   楽しみー、くゆも一緒に行こう

   ね。」


雪音「...彼女は私を満足させる事が出来る

   のでしょうか、舌が肥えています

   ので"手加減"は出来ません。」


美紗(早速言ったこと後悔してる...)


美紗「だったら言わなければ良かったの

   に」


雪音「私も初めは杏里さんの事を

   信じていませんでしたからね。」


雪音「...彼女の事を棚に

   あげるつもりはないですよ」


雪音「ですが、彼女が折角私に料理を

   作るというのなら。最高の物を

   頂きたいじゃないですか」


雪音「同情で美味しいと言われ

   ても"嬉しくない"でしょう」


雪音「その時はその時です。」


 此処で良いよって言っちゃうと、向こうの気がすまない。だから雪音は敢えて料理を提案する事で後腐れなく解決しようとした


 言葉ではなんだかんだ言っても、柚夏の料理は美味しいって信じてるみたい。


 ...最後くらい意地悪しても良いじゃないっていうあれですか、お嬢様デr


美紗「いや、でも本当にビックリする

   くらい美味しいから。食べたら

   雪音だって絶対気に入るよ」


くゆ「私も誘われたけど 良いのかな...」


美紗「私が許す!!、」


くゆ「それをいうのは柚夏さんでしょ

   姉さんじゃなくて」


美紗「まぁ、良いって言ってたから」


美紗「折角だから。くゆも一緒に手

   繋いで帰ろ?」


くゆ「本当に、急だね...」


くゆ「誰か来ても知らないよ?」


美紗「今の雪音には行きと違って

   御守りがあるから。」


くゆ「またそんな確証のない、」


くゆ「.....」


くゆ「...まぁ、良いけど」


 くゆの手を握って。雪音の手も握って、ただそれだけの事なのに


なんでこんなに嬉しいんだろう。


美紗「こうやって三人で手繋ぐの、

   ちょっと憧れてたんだよね。」


雪音「...まだまだ子供ですね。」


雪音「...私も、」


 そして、私達は仲の良い家族みたいに。雪音とくゆと三人で仲良くお話しながら、一緒に手を繋いで家に帰ったのでした。


※キャプション


美紗「ただいまー、」


雪音「杏里さん」


美紗「ん?」


美紗「何か忘れた?」


雪音「いえ。そうではなく、」


雪音「...お家に上がる前にしなければ

   ならない事があります。」


美紗「しなきゃいけない事?」


美紗「なんだろ、」


雪音「これですよ」


 そういって、玄関で止められた私は


 蛇に睨まれた蛙の。蛙を睨んでる蛇のような目をした雪音に捕らえられ


 全身コロコロの刑を受けていた...、、


美紗「...まだ駄目?」


雪音「駄目ですね。」


 さらっとなら良いんだけど...、ずっとされてるとなんか段々落ち着かなくなってくるというか...、


美紗(飼い主に足の裏拭かれる犬、って

   こんな気持ちかのかな...)


くゆ「...アレルギーだと、大変だね。」


美紗「ほんとね...。」


美紗(いやまぁ...ただの猫嫌アレルギ

ーなんだけど...、)


 くゆは一切無駄のない動きで玄関にあったコロコロをすると


 すぐに毛がついた紙を破いて、先にいってしまう。


くゆ「先に食材入れてくる。」


美紗(...でも言われてみると、アレル

   ギーじゃないって。雪音の口から

   聞いたことなかったかも)


美紗(涙とかくしゃみは出てないから

   アレルギーじゃないと思うけど)


 台所に消えてく くゆを追い掛けようとすると、


雪音「まだ終わっていませんよ。」


 と...、雪音に捕まる。


美紗「え、まだ駄目?」


雪音「まだです」


美紗(ん"ー...、やっぱり然り気無く後

   付いてってもバレちゃうよね

   ぇ...。)


美紗「.....、、」


美紗(...う"ぅ、大人しくしてるのって、

   何時まで経っても好きに

   なれない)


雪音「そんな目をしても駄目ですよ。」


美紗「触ったのは腕だけだから...、

   そこまでちゃんとしなくても

   いいんじゃない?」


雪音「毛は落ちます」


美紗「う"ーーーん...、そりゃ

   そうだけど...多分言うほど

   ついてないと思うよ?」


美紗「猫の毛が嫌なのは分かるけど。

   もお良いでしょ、動いちゃ

   だめ...?」


雪音「私が困るのです。」


雪音「すみませんが...、お願いします」


美紗「....、」


美紗「はぁ...、...分かった。もう、雪音

   の気のすむまでして...、、」


雪音「助かります」


※スライド


雪音「良いですよ。」


美紗(よしっ、)


美紗(やっと靴が脱げるー...、)


 その声と共に、解放されし自由を手に入れた私はテンション高めに靴を脱いでクラウチングスタートで玄関をかけ上がる。


雪音「それほど嫌だったのですか?」


美紗「子供みたいにそういう事されるの

   どうしても慣れなくて...、」


雪音「私はずっとそのような暮らしを

   していましたから」


雪音「そうなのですね。」


美紗「色んな事が自分で出来るって

   分かってから。自分の人生が

   凄い変わったから」


美紗「人それぞれだと思う」


美紗「そっちの方が楽に感じる人も

   いるし、ただ私はちょっと貧乏性

   というか...。落ち着かないっていうか、」


美紗「雪音にして貰えるのは嬉しいけど、」


美紗「...それと同じくらい 不安な

   気持ちになるの。...結構、前は

   色々我慢してたから」


美紗「いつまで経っても直らない私も

   悪いんだけどね。」


雪音「杏里さんはそういった物が"嫌"なの

   ですか?」


美紗「雪音に触られるのは嬉しいけど...、

   自由に動けないのはちょっと

   不安定になる、かも。」


雪音「触られるのは好きですが、無理やり

   されるのは 嫌と?」


美紗「まとめるとそうなんだけど...」


美紗(言い方、、)


 そして なんか、さっきから距離 近いね///!?

※落ちつくのかさっきから前髪触ってる


雪音「...私の我が儘に付き合って下さった

   貴女の心遣いに、感謝しなければ

   なりませんね。」


雪音「嫌な思いをさせてしまってまで

   して頂いたのですから」


美紗「なんか...、ごめんね。」


雪音「いえ。此方も無理を言ってしまい

   ましたからね。」


雪音「...よく頑張りましたね」


美紗(...ここで、お礼が出てくるのが、

   凄いよね。)


美紗「雪音が喜んでくれるなら。私として

   良かったなって思うよ」


雪音「貴女は本当に嬉しそうに、相手の下に

   回るような事をするのですね。」


美紗「雪音だからだよ。」


雪音「私、だから、ですか...」


雪音「....。」


雪音「晴華さんが普通にして下さって

   いた事も。...彼女なりの気遣い

   だったのでしょうか」


美紗「好感度の為だけに、そこまで出来る人

   なんて居ないよ。」


美紗「...一からお野菜を作ったり 手作りの

   料理を毎日作るのだって。その人の

   事を思ってないと出来ない」


美紗「本当に雪音の事を思ってない

   人だったら。外国に行ってまで雪音に

   付いてったりしないよ」


 GPSとか付けたりね。


雪音「なら、良いのですが...。」


美紗「私はそういうのが苦手なだけだから、

   晴華さんは普通にお世話自体好きだと

   思うし」


美紗「雪音がそういうの好きなら良いと

   思う」


美紗「むしろあの人の場合。お世話出来なく

   なったら多分嫌がるよ」


雪音「何故そう言い切れるのですか?」


美紗「お父さんと雰囲気が似てるって

   いうか...、私は管理(ルビ:おせわ)

   されるのが苦手だから」


美紗「そういうのには結構 敏感なの」


美紗(というか、GPSが仕掛られてるから

   とは言えない...。)


お母さん「お帰りー♥、美紗ちゃん。」


美紗「ただいま、買った荷物、置いて

   くるから」


お母さん「怪我しないようにね」


美紗「あ、でも雪音も一緒のが

   いいよね。洗面所はこっちだよ」


 リビングの奥にある洗面所に買ってきたコップと歯磨きをおいて...、お風呂には洗う用のスポンジを


美紗「あれ、お風呂沸いてる?」


お母さん「美紗ちゃん達が買い物に

     行ってる間に沸かしておいたの、

     入って入って」


美紗「言ってくれれば私が沸かした

   のに、」


お母さん「でもそれじゃ入るの遅く

     なっちゃうでしょ?」


お母さん「...私達は家族なんだから、

     気遣いなんて無用・よ♥」


美紗「うん、ありがとう、お母さん。」


美紗(このままお風呂に乗り込んだり

   しないよね)


美紗「今日は雪音がお客さんだから

   先に入っていいよ。服は私の

   貸すから」


美紗「身長あんまり変わらないし、

   大丈夫だよね」


雪音「一緒に入らないのですか?」


美紗「一緒にっ////!?!?」


お母さん「あらあら、若いって良いわ

     ねー」


美紗「え、雪音と!?」


美紗「....えっ」


 急に大胆な事いうから。普通にビックリするんだけど、え?雪音ってそういうの、そういうのなの...??、、


お母さん「お母さんくゆちゃんと一緒に

     お夕飯の準備してるから。」


お母さん「湯冷めだけはちゃんと気を

     付けてね。」


美紗「私達もう高校生だよ?流石に一緒

   に入らないよ...、」


お母さん「あら良いじゃない。たまには、

     女の子同士でお風呂に入るのも♥」


お母さん「...今度お母さんも美咲さんと

     一緒に温泉に行こうかな~」


美紗「...温泉なら、まぁ...分かるけど、

   家のお風呂はそこまで広い訳

   じゃないから...」


美紗「それに...恥ずかしいし...、」


 これで断ってくれる分なら良いんだけど、多分そうはいかない


 ...雪音と一緒に入るって事は、それと同時に私の身体も見られるって、事...、


美紗(事情を知ってるくゆなら兎も角、

   雪音に 身体を見られるのは...)


 もし、気持ち悪いって、言われたら?


 言わなくてもそういう視線を受けるだけで嫌になる。


見られるだけでも駄目なのに、他の事なら良いけど身体の事を言われたら、...耐えられない。


美紗(...なんとしてでも 断らないと)


雪音「確かに家の物と比べると狭いですが、

   二人で入るのが不可能という大きさでは

   ありませんね。」


雪音「私とは入りたくないのですか?

   いつもは晴華さんと入って

   いるのですが...」


雪音「ですから女性同士というのは

   気にしませんよ」


美紗「いや...でもほら、

   やっぱり狭いから...」


美紗(一方的に見られるなら見たいよ)


雪音「ジャグジーの使い方もよく分からない

   ですし...」


美紗「やり方ならちゃんと教えるから

   大丈夫だよ」


美紗「それに、雪音と入ったら私普通に

   のぼせちゃうから」


雪音「修学旅行でも入るのですから

   そうお変わりはないかと」


雪音「...その時はもう、私は居ませんが」


雪音「予定は変わるというもの。それは

   どうしようもなく仕方のない事です。」


雪音「最後の思い出として...、良い思い出に

   なると思ったのですが...」


雪音「杏里さんが嫌なら、

   仕方ありませんね。」


 ...それを言われちゃうとこっちも弱い...。


美紗(そりゃ、雪音と入れるなら...。私も

   入りたいけど...)


美紗「でもほら...。私脱いだら...、

   その、凄いし...」


美紗「....、」


美紗「痣...、とか...」


雪音「それは杏里さんのせいでは

   ありません。」


雪音「付けたくて付けた訳でもない、

   傷ですよね?」


美紗「それは...、そう、だけど...」


雪音「何故、貴女が隠す必要があるの

   ですか」


美紗「あれ...、普通こういうときって

   お嬢様の雪音が恥ずかしがる

   んじゃないの...!?絵的に、」


美紗「なんで私?!」


美紗(立場、逆じゃない?、)


雪音「私が入りたいと誘っているの

   ですよ。他に断る理由がありますか?」


美紗「いや、まぁ無い...、けど...///。」


美紗(そんな事、...あんな、綺麗な顔で言われた

   ら逆らえないよっ...///!!、、)


美紗(というか、、なんで私が乙女になってる

   の、、、絶対入らないってさっき決めた

   のに、)


 どんどん進んでくし、此処で無視するのはするので雪音の機嫌悪くさせるし、


美紗(雪音は私の痣を見てないからそういうこと

   言えるんだよ、実際見たら絶対グロいと

   思うと思うし...)


美紗(だって...、私だって 気持ち悪いって、

   思うもん...)


※キャプション


美紗「...はぁ、」


美紗「....。」


美紗「はぁぁぁぁ.......」


美紗「えっと...、」


美紗「タオルも付けちゃ 駄目なの...?」


雪音「別に駄目とは言いませんよ。」


美紗「えっ、じゃぁ付けっ...」


雪音「...ただ、」


雪音「全裸である私の前で一人だけ

   タオルを着用するのが許されるのなら、

   ですが」


 お風呂でタオルを付けるのはマナー違反だから、と言わないだけ優しい(ルビ:マシ)けど、それ実質脱げってことですやん。先生、


 選択肢のない。選択、


美紗(...うん、諦めよ、)


 ...一応、一番酷い痣は髪で隠れてるけど、その為に切らずに伸ばしてるし...。


 あの時の警察も、お母さんだって...痣を見た時の顔が... 忘れられない。


 可哀想なひとを見る瞳、私はただお父さんに愛されなかっただけで。そんな目をされる程可哀想、じゃない


 訳でもただお父さんの暴力がなくなれば良かった。痛いのがなくなれば良かった。


美紗(私は、"今"は幸せなのに。)


美紗(はぁ....、やだなぁ...)


美紗「...後ろは酷いから。絶対見たら

   駄目だよ?」


 酷い声、まるで怒った時の お父さんみたい


美紗(あんまり怒りたくないのに。)


美紗「見てて気分悪くなったら、

   言ってね。すぐ隠すから...」


 脇腹の痣を見せないよう隠しながら服を脱いで、視界から出来るだけ見えないように、


...雪音より先にお風呂に入ろうとすると


美紗「え?、」


 雪音に手を掴まれて、後ろを見る、


 振りかえると、雪音の顔がすごい近くて。びっくりして 視線を反らそうと下に急いで目を流すとその視線の先は裸で///、、、


 もう、、どこを見ればいいかわからなかった。


美紗「ゆ、雪、音...///?」


美紗「ちょっ、まえっ///、せめて、手で///!!、、」


美紗(私が隠したらあかん、、)


...どうしよう、色々っ、近い////


美紗「というか、今、私っ、

   全裸だからっ...///!!」


 左腕で胸を隠して、というかさっきからずっと心臓がバクバクしてるんですけど、え、、この状況どうしたら良いの?? 何が正解???


雪音「私もですよ。」


美紗(..え、えぇぇぇえ///!?!?、、)


雪音「これで立場は同じのはずです」


雪音「本当に綺麗な髪をしてますよね...。」


美紗「って、本当、背中が一番、

   酷いから...!!!!、、」


 雪音の綺麗で細長い手がゆっくりと、私の髪に触れる...、


美紗「っ、...やめ、て...。」


美紗(力を入れちゃ駄目...、力を入れちゃ、

   駄目...、、)


 感情を抑えきれなくて、雪音の手を思いっきり掴んで、...僅かに残ってる"嫌われたくない"っていう意識だけで、力を入れないよう、抑える。


 感覚しか分からないけど、一つ一つの指が髪を優しくとかすよう、肩に流すと...醜い肩が露になる。


 髪で視界の遮られた目は、雪音の手で掻き分けられてクリアになる


 視界はクリアになっても、私の身体は拒否反応で、涙がぼろぼろと溢(こぼ)れて、、とにかくやだっていう、嫌悪感が、身体中を支配して。


 自分が自分じゃないみたいに感情が溢れだす、まるで嫌な事があって泣きじゃくる子供みたい


美紗「...見ないで、...お願い、っ、

   だから...」


美紗(...ッ、恐いっ...。やだっ、、 絶対、

   おかしい、もん、、こんな痣っ、

   絶対...、...引かれた、、)


雪音「...大丈夫ですから。」


美紗(雪音だって、私の身体を見た

   ら...っ、、"普通"っ、じゃない...、)


雪音「顔をお上げなさい」


 そうやって、私の手を 両手で支えるように包み込む雪音...。


 ...その目に映った雪音の瞳が、あまりにも真っ直ぐで 真剣(ルビ:とうめい※透き通っていたから)だったから...


雪音「...身体の見た目が正常ではない

   としても、"貴女は貴女"です。」


雪音「貴女が私にした事は変わらない。

   それによって私の態度が変わる事も

   ありません」


雪音「この痣は、貴女の"物"ではない」


雪音「貴女の父親が残した"負の遺産"です。」


雪音「貴女の父親が犯した罪であり。

   ...その確固たる証拠。貴女が理不尽な

   苦痛に耐え続けてきた証です」


 ...雪音の手が、涙を拭き取るように ゆっくりと私の瞳に触れる...、


雪音「...信じられなくていい。こんな痣を

   好いてくれる人なんて居ないと思って

   良い。」


雪音「ですが...私はそう思っています。別に

   痣フェチとまでは言わないですけど、

   このくらいなら最先端の医療で治せる

   かなと」


雪音「親でも慰謝料は請求出来ますし、編集

   出来ないカメラで撮った写真さえ

   持っていれば。」


雪音「これから先、もっと良い治療方法が

   見付かるかもしれない。ずっと悩んで

   いるより"そういう事"を思っていきましょう」


雪音「貴女にそんな顔は相応しくあり

ません...。私の隣に立って 背負う方

なのですから」


雪音「自分勝手で...、横暴な願いですが

    私は...貴女にもっと自信を持って

   生きて欲しい。」


雪音「貴女が笑っていると。それだけで

    私も自信が持てるのです」


 ...そういって、威風堂々と微笑む雪音の姿は、とても...。眩しくて...


 今まで見た中で... 一番...綺麗な笑顔だった。


雪音「私にとって貴女の"代え"など

   どこにも居ないのですよ。」


雪音「それだけで 貴女の価値が揺らいだり

   しません」


美紗「......。」

 

雪音「今でも痛みますか?」


美紗「...雪音は 」


美紗「"可哀想"って、思わないの...?」


美紗「私の痣を見た人は "可哀そう"っていう

   目で私を見る」


美紗「自分がそうじゃないから。自分と

   関係ないから」


美紗「なんで とめてあげられなかったん

   だろう」


美紗「なんでこんな事するんだろう」


美紗「大抵の人はそう考える」


美紗「.....」


 殴られた痣に、煙草で何度も押さえつけられた火傷の後。


 ...見えない所に殴ってくれたから 私は今の生活をおくれてる。なのになんでわざわざそんな汚いとこ見るの、...、


美紗(...わかんない、...何も、)


雪音「今の貴女は可愛そうではないの

   でしょう?」


雪音「理解出来ない人の事を無理に理解する

   必要はありません。理解しようと

   思った時に、すればいいのです」


雪音「まぁ。普通はこれだけの痣。

   見る機会はないですけどね」


美紗「なら...、なんで、」


雪音「治すためです。」


美紗(治、す...?)


雪音「貴女の痣を引くためだけに見たと

   思いますか」


雪音「そんなの誰にでも出来ます。」


雪音「...確かにこれだけの痣を完全に

   治すのは、難しいと思い

   ますが」


美紗「.....」


雪音「それだけ通院も掛かりますし、

   それこそ大学病院などの最先端の

   技術を使った方が良いでしょう」


雪音「海外の知り合いもいますし、日本

   でなくとも信用のおけるお医者様を

   捜せばいい。」


雪音「...私なら その身体を"戻す"

   事が出来ます。」


雪音「お金とコネは、あります

   から。」


雪音「...勿論、杏里さんが父親が虐待した証を

   残したい というのでしたら無理に

   とはいいませんが...。」


美紗「.....」


美紗「急に...そんな事...、言われても

   ...」


 そもそも、私の痣の事は誰も触れようとしなかった。だから..."治す"という発想もなかったし、ずっとこのままだと...思ってた、


 ...それにもし、雪音が捜したお医者さんでも消えなかったら...?


 雪音がそう言ってくれたのは正直嬉しい。でも、それでも"触れて欲しくない"って、いう強い気持ちが心の何処かにある


 一生、消える事のない傷に気付いてしまったら...、一生、一生、私はあの人から逃げられない人生だって 気付いたら...、


お父さん「「美紗ァ!!」」


美紗「....、」


美紗「..ごめんね、」


美紗「本当に...、ッ、ごめん...。」


雪音「....。」


 せっかく...雪音が治してくれるって言ってくれてるのに、私はなんでこんな事しか言えないの


 ...治したいのに、治したくない。治せない、治したくない...。


 私にとって得しかない話...、断る理由なんて ないのに。傷が消えたら私は自由になれるのに、なんで... 私.は..、


  『嫌』なの...、、


美紗「...ごめん、やっぱり私後で、

   入るっ。」


 こんな事言ったらだめなのに、嫌われたくないのに、、今は雪音と一緒にいたくない。


雪音「本当に...」


雪音「...後悔、しないですか。」 


美紗「....。」


 雪音の腕を振り払いたいのに、振り払えなくて...。


美紗「....なん、で、」


雪音「...目を、逸らさないで下さい。」


美紗「私は違う、私は何もしてない、

   ...私は 気持ち悪いから...、、私は、

   こうじゃないと、いけないの...。」


 可愛そうだから、皆私に優しくしてくれる。痣がなければ、くゆがプールで痣を見付ける事もなかったし警察も呼ばなかった。


 痣があったから今の家族と出逢えたし、皆腫れ物を扱うように私の事を愛してくれる。お母さんだって...、可哀想な子だから、前より接してくれる...


美紗(私は...、)


→A『痣を治したい』

※みさゆきのエクストラにて

 『雪音の夢野世界、その後2』追加

 EDにて美紗の髪がセミロングになる。

  

→B『痣を残したい』

※くゆみさルート必須選択肢。

 +美紗のEDの髪が長い




→A『痣を治したい』


美紗「ほんとは、痣を治したい...。」


美紗「多分、見る度にその事を思い出して...

   大人になってもずっと痣を見る度に

   虐待されてたんだって」


美紗「思う事になると思うから。」


美紗「痣を言い訳にしたくない、

   ...でも、くゆとの絆がなくなるのが

   怖いの。」


雪音「絆は消えませんよ。治療で傷は

   消えますが、一緒に過ごした思い出

   まで消えるわけではありません」


雪音「くゆさんは杏里さんの痣が消えたら

   思い出が消えるからって嫌がる

   でしょうか」


美紗「...多分 喜ぶと思う...。」


雪音「でしたら、お任せ下さい。

   私が必ず貴女の傷を治してみせましょう」


そういって、





B『痣を残したい』


雪音「私は貴女の意思を尊重します。」


雪音「ですが、これだけは覚えておいて下さい」


雪音「...痣があっても私は、貴女を気持ち

   悪いとは思いませんよ。」


美紗「そんなの、...信じられないよ...」


雪音「その、証拠を今から貴女にお見せ

   します。」






 雪音はあろうことか、私の痣にキスをしたのだ。


 びっくりして 言葉が、出なかった。


美紗「汚いよ、そんなとこ...」


 ...声がでないせいか、勝手に涙が 溢れてくる。


 こんな私でも愛してくれる、雪音は身を以(もっ)てその事を証明してくれた。


雪音「これでおあいこですね。」


美紗「...あのときの事、まだ許して

   なかったの?」


雪音「私は結構。音に持つタイプですから」


 私が見たその目は...、可哀想なものを見る目じゃなくて、


雪音「その顔を見られたので満足

   しますが 特別ですよ。」


 まるで奇跡の女神のような...。そんな、...絶対に治して見せますよという強い決意を持った瞳だった。


美紗「.....ほんとう、に...?」


 私は雪音の身体を抱き寄せて。ぎゅっと抱き締める、


雪音「私は、嘘は付きません。言った事は

   必ずやり遂げます」


雪音「一生掛けても。」


雪音「貴女が私を受け入れて下さった

   ように...、私もまた、貴女の事を

   受け入れたいのです。」


美紗「....」


美紗「.....っ、て。」


美紗「...気持ち悪くないって、

   ...言って、」


美紗「...もう一回だけで、いいから。」


美紗「雪音の口から直接聞きたい、

   そしたら...」


美紗「私、...頑張る、から...。」


雪音「...貴女は私の大切な人です。

   気持ち悪いなど...、思うはずが

   ありません。」


美紗「うん...」


雪音「もしそのような事を言う輩

   がいれば、...金輪際。二度とそのような

   真似が出来きぬよう、一生後悔させて

   みせます」


雪音「...私の友人に手を出したら、どう

   なるかという事を身を持って

   知る事になるでしょう。」


雪音「隅々まで徹底的に調べあげ、多額のお金を

   使い社会的に"潰し"ます。ネットの発言から

   小さな違反まで法律沙汰にしてみせます。」


雪音「人を慰めるといった事は出来ませんが。」


雪音「...そういった事は得意ですか

   ら、お任せ下さい。」


美紗「...なんかそこまですると、こっちが

   悪者みたい、」


美紗(お金持ちを怒らすと怖いね...。)


雪音「やって良いのはやられる覚悟の

   ある者だけです。」


雪音「正当防衛ですから。」


 雪音が小さい頃はこんな性格だったんだなって思うと、なんだかそれが凄くちっちゃな事のように思えてくる。


 今の私には、こんなに強くて頼りになる人がいてくれる...。私一人の力は弱いけど、雪音やくゆ達が一緒にいてくれる。


...だから、もう何も怖くない。


→※B『痣を残したい』はそのまま終わり




→A『痣を治したい』だと追加台詞


美紗(...勇気をだして、このトラウマ

   から抜け出したい。)


美紗(一歩ずつでも、)


美紗(...今までの自分じゃいつまで経って

   も終わらない。私は皆と一緒に

   "普通"に暮らしたい、)


美紗("それ"が許されるなら...。私は...)


美紗「...するよ、手術。」


美紗「こんな事、初めて言って貰って

   どうしていいか 分からなかったの...」


美紗「私が喜ぶ顔を見て、家族が喜んで

   くれたら嬉しいし、」


美紗「...雪音だって、感情を

   取り戻せたんだもんね。」


美紗「雪音も頑張ったんだもん。

   私ばっかり、逃げてちゃ駄目、

   だよね...。」


美紗「...この身体を、雪音に預け

   ます。期待して待ってるから。

   雪音」


雪音「出来る、ではありません。

   私が"そうする"のですよ。貴女に後悔

   はさせません」


雪音「"古池の名"を掛けて。」


美紗「本当に雪音は格好いいなぁ、

   私、惚れ直しちゃうよ...///。元から

   好きだったけど、もっと...、」


美紗「...でも。仕返しはしたら駄目

   だからね?」


雪音「どうしてですか?」


美紗「敵、作っちゃうでしょ、」


雪音「今に始まった事ではないですし...。

   返り討ちにしてみせますよ、

   それはそれで腕の見せ所ですし」


美紗「まぁ、雪音なら大丈夫だと思う

   けどね。」


雪音「身体が冷えてもいけません

   し、早くお風呂に入りましょう

   か」


美紗「本当ごめん...。長話させて...」


美紗(そういえば....、ずっと裸だったわ...、)


※キャプション


美紗(雪音ってやっぱり身体綺麗だ

   よね、当たり前だけど...)


 雪音が洗って欲しいということで、泡をたてながらそっと雪音の身体を洗う。


 お礼の意味合いも込めてちゃんと洗わないと...。それにしても雪音の背中凄い 女の子みたい...


いや...私も女の子なんだけど


美紗(まぁ、洗ってる時に見える

   背中は セーフだよね...。何が

   とは言わないけど)


美紗(さっき...思いっきり 見ちゃった

   し...、)


美紗(でも、目は逸(そら)してたし、

   というか身体洗われても 恥ずかしがる

気配...ないね?)


美紗(.....。)


美紗(というか...腰 細過ぎない...?、)


 そういう対象として見られてないのは良いんだけど、なんか私ばっかり気にしてる気がする...。


美紗(最近の女の子は こんな感じなの

   かなぁ...、)


雪音「誰に見せても良いようにと。

   晴華さんは言いますが、

   このような時の事を言っていたの

   ですね。」


美紗「流石の晴華さんもこれは想定

   してないと思うけど...、」


美紗(私も想定してなかったし、)


雪音「彼女が色々して下さった

   お陰ですよ。...此処まで気にしないのは」


美紗「愛されてるね」


雪音「...そうですね、」


 さっ、と雪音を洗って。はい、おしまいって

雪音を先にお風呂に入らせる。


 もうこれ以上は、色んな意味で無理だった。


雪音「洗いますよ?」


美紗「私の心臓が持たないからっ///!!、」


雪音「最後の思い出ですからね。

   貴女も洗って欲しいでしょう?」


美紗「二度目は通じません、」


美紗「それに、そんな事したら私

   麗夜さんに 殺される...。」


雪音「...そうですね」


美紗「そこは否定してくれないんだ。」


ザァァァ...※シャワー音


美紗(いや、流石に洗って貰うってのは ね、、)


美紗(というか普段からこんな感じは

   修学旅行とか、どうなるんだろう...、)


美紗(海外は裸でお風呂を入る週間がない

   から、そういう心配はないと思うけど

   ...)


美紗(でも...。思い出としては凄い

   残りそう。)


キュッ、


美紗(....、これも あと...

   三週間... なんだよね...)


美紗「ふぅ...、」


 身体を洗い終わって。そろそろお風呂に入らなきゃなぁ...って、雪音の入った湯船を見ると


 前に、私が気になって買ってきた木彫りシリーズのフィギュアの入った入浴剤が気になるのか手にとって様子を見ていた。


美紗「使ってみる?」


雪音「いえ、...こういった商品も

   あるのかと思いまして」


雪音「シークレットで開けて、

   お風呂に入れるまで何が出てくるか

   分からない仕組みになっているのですね」


雪音「...お風呂で遊ぶと言う発想自体が

   なかったものですから。」


雪音「子供はこういうの、好きそう

   ですね」


美紗「私が買ってきた奴だから

   使っちゃおうかな。」

  

 と、玩具の入った入浴剤を破って、お風呂の中に入れる。


美紗「入浴剤が溶けると この中の

   木彫りの動物が浮き上がってくるんだ

   よ。」


雪音「この黒く塗り潰されている

   動物は何でしょう」


美紗「それは出ないと分からないやつ。」


雪音「木彫りだと、影だけでは

   分かりませんね。」


美紗「でもクオリティ高いから良いやつ

   だと思う。」


美紗「動物なのは私の趣味だけど、

   他にもサメの奴とかあったよ。」


 少し経つと入浴剤がとけて、動物のちっちゃな木彫りフィギュアが上にあがってきた。


雪音「...水死体みたいですね、」


美紗「例え、面白かったけど...。一応

   子供向けだから...、大人も買う

   人いると思うけど」


美紗「兎だね」


 白い小さなウサギがちょこんと切り株に足を運んでる木彫りフィギュア。塗装もちゃんと綺麗に塗られてて、丁寧に作られてる感じがする。


雪音「思ったよりも小さいんですね。」


美紗「開けてみないと大きさは分から

   ないからね。」


 浮かんできたフィギュアを手の上に乗せるとミニチュアサイズがよく映える、...やっぱり動物系は可愛いなぁ。


雪音「確かにそうですね。」


 フィギュアを雪音の手に乗せる


雪音「...こういった、発想はとても

   素晴らしいと思います。」


 雪音は置いたフィギュアを水平にして、角度を変えながらウサギの様子を観察してる


美紗「...雪音にあげるよ、それ」


雪音「良いのですか?」


美紗「私はまた買えば良いから、

   向こうにはないかもしれない

   し。それにその子って」


美紗「晴華さんみたいでしょ?」


美紗「私が持ってるより。雪音が持ってる方が

   その子もきっと幸せだと思うから」


美紗「兎は幸せの象徴って言うし、

   私としても雪音に持ってて欲しい。」


 雪音の手を取って、雪音の手ごと 木彫りのフィギュアを包み込む。


雪音「...大切にします。」


雪音「....。」


雪音「...きっと、大丈夫ですよね。」


雪音「晴華さん、」


※キャプション


ゴー...、


美紗「えっ、もう乾いてる、」


 雪音の髪をドライヤーで乾かしてたんだけど、乾くのがなんていうか...ものすっごい 早い。


美紗(...え、雪音の髪。レインコート

   並みに乾くの早くない?)


美紗(数分しか経ってないのに...、)


 自分では信じられないくらいの早さで乾いてく雪音の髪に、少し感動を覚えるくらい、髪を乾かすのが楽だった。


 しかもすっべ、すべのさらっさらんだ。


美紗(こんな髪なら、毎日といてて

   楽しいんだろうなぁ...、これは

   お世話したいのも分かる...。)


 雪音の髪に触れてみても湿った感じは一切なく、さっと手に馴染むように髪はとけていく。


美紗「普段から良いシャンプー使ってると、

   こんな乾くの早いんだ、えー...

   今度から高いの使ってみようかな、」


 美紗「髪の長さが違うのもあるけど、

    乾くのが早いと乾かすの楽しいね。」


雪音「シャンプーやリンスの事でしたら

   私よりも、晴華さんの方が詳しいですよ。

   花の油に関して特に詳しいです」


雪音「自家製のシャンプーを使ったり」


美紗(あの人、ほんとに何でも出来るな...。)


美紗「...専門的な事とかあんまり分かん

   ないから、雪音に聞いた方が

   買いやすいかなーって」


美紗「それに雪音が使ってるシャンプー

   も気になるし、」


雪音「杏里さんは私が使っているから

   使いたいのですか?」


美紗「はは、...まぁ、言っちゃえばね。

   大事な時とか 不安な時とか」


美紗「自信を持ちたい、そんなとき。

   雪音と同じシャンプーを使ってる

   って思ったら」


美紗「頑張れそう。」


雪音「精神安定剤の方が効きますよ」


美紗「そうかな?」


美紗「雪音のシャンプーの方が私には

   効果あると思うな、薬って

   効かない時は本当に効かないから」


美紗「...それにしても、」


美紗「...雪音ってレース付いた服すっごい

   似合うね。」


 デザインが好きで買ったのはいいけど、いざ着てみたら服に着させられてる感凄くて


 結局ずっと着れずにいた服なんだけど


 雪音が着ると、こんなに自然なんだもん。私服でも全然ありだと思う。というか凄い、可愛い。


美紗「やっぱり雰囲気が大人っぽいから

   かな、髪をおろしてるのもあって

   ドクモに出てくる女の子みたい」


雪音「普段からレースの服は着ています

   からね。」


美紗「えー、見たいっ」


雪音「良いですけど、ネグリジェ

   (下着)ですよ?」


美紗「....。」


美紗「...あ~、」


美紗(...うん。)


美紗(私の反応を見たいんだろうなぁ

   ...っていうのが、ひしひし伝わってくる

   ...。)


美紗「うん...、」


美紗(けど、そこで見たいとか言ったらなんか

   本当の変態みたいだし、)


美紗「...うん。」


美紗「....、」


美紗「...はぁ、」


 あ、駄目だ。見た過ぎて、ため息しか出てこない。


美紗(正直、見たいと言われればすごく

   見たいっ...!!だってネグリジェだよ?!

   ネグリジェっ!!、)


美紗(ネグリジェってハズレなしの

   めちゃかわ服じゃん、薄手のカラー

   が良い。というか)


美紗( ネグリジェ嫌いな女の子とかおる??)


美紗(...はー、そういう服も、そういう

   服を着てる女の子もダブルで

   好きだから)


美紗(そういう事言わるとほんと、

   ...脳内どばどばアドレナリン。)


美紗「...ん"~、」


美紗(最後の思い出として見たいって

   言う...?、服着たネグリジェなら...、

   軽く言えば女の子同士のフラットな会話じゃない...?)


美紗(私が見たいって言ったら、

   雪音の性格なら...。いや、うーん...、

   いや、でも な~...)


美紗(せめて写真で良いから見れない

   かなー...)


美紗(....あっ、)


 服の上においたスマホを見て、気付く。


美紗(そうだ...、スマホ...!!、)


美紗(スマホだっ!!、スマホの中に

   ある写真ならっ...、よくある女の子

   のノリでいけるっ...!!、)


美紗(写真なら透け透けの寝まぎを見たい奴と、

   思われることもない...!!、)


美紗(しかも好きなときに。雪目を気に

   せずいつでも見れる、、これだァッ...!!)


美紗(晴華さんの調子が良くなったら

   頑張って交渉すればいいよね、、

   ...私、天才かな??)


深呼吸...、深呼吸...。


...よしっ、


美紗「流石に冗談でしょ?、も

   ぉ、そんな事言ったら本当に

   見たいって言われてもしらない

   よ?」


雪音「言ってなかったら見てたん

   ですか?」


美紗「.....」


美紗「だって、...ネグリジェの服って可愛い

   じゃん。女の子として当然、

   気になるよ」


美紗(嘘は言ってない、嘘は...、

   ちょっとボロでそうだったけど)


雪音「...それほど気になるのでしたら」


雪音「良いですよ、見ても。スマート

   フォンにも撮った写真が

   いくつか残ってるはずですから」


雪音「見てみます?」


美紗「えっ、良いの?」


雪音「はい。良いですよ。この服は私も気に

   入っているお洋服ですからね。」


美紗(雪音のお気に入りっ、黒とか水色も

   似合うだろうなぁ。ロングスカート型の

   ネグリジェとかも似合う、)


美紗「ん?」


 そして、雪音のスマホに写ってた写真は普通に可愛いネグリジェの"写真"だった。


※スライド










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