第9章「夢野世界、~参上ガトー☆ショコラ編~」【みさゆき】

美紗「出来た!!」


 長かった髪は、カットされ...


 美しい黒髪が和人形らしさを醸し出していた。


くゆ「...確かに不気味さは無くなった

   けど、大丈夫...?髪切ったからって

   呪われたりしない...?」


美紗「面白半分に切ったらそうかもしれ

   ないけど、」


美紗「私はただ可愛くしたいと思って

   切っただけだから」


美紗「怨むなら捨てた人の事を怨むと

   思うし、それにこの子は普通に

   良い子だよ。」


美紗「ほら、柚夏これなら怖くない

   でしょ?」


 恐る恐る...顔を抑さえていた手を開く門番さん。


門番さん「...るーちゃん、」


 るーちゃんと呼ばれた人形を見て、門番さんの顔が少しだけ和らいだけどまたすぐに頭が下がってしまう。


お人形「柚夏...なんで一緒に遊んで

    くれないの?」


門番さん「...ごめん」


美紗「今から皆で遊べば良いんだよ。ね?

   くゆ」


くゆ「人形遊びって...この年で?」


美紗「年なんて関係ないよ。るーちゃんは

   門番さんの子供なんだし」


門番さん「子供...。」


るー「お母さんずっと寂しかった...私、

   要らない子なの...?悪い子だから...

  捨てられちゃったの...?」


門番さん

「...私だって、本当は、、捨てたく

 なかったよ、、」


 門番さんの目から涙が溢(あふ)れると同時に、その瞳から柚夏の強い自責の念にも似た感情が凄い伝わってくる...。


門番さん「でも...るーちゃんは父さんが

     買った物だったから...」


るーちゃん

「なんで捨てたの...?」


門番さん

「...父さんが母さんと離婚して、父さんが

 再婚してから母さんは日に日に笑わなく

 なって、って...、」


門番さん

「だってあの人父さんから貰った物

 見ながら、思い出してずっと泣いて

 んだもん、、」


門番さん

「...捨てるしかなかった、、私だって

 本当は...、っ、捨てたくなかった、

 でも...そうしないと母さんが...、」


門番さん

「だから捨てられたのはるーちゃんの

 せいじゃない、私が全部悪いの、、」


門番さん

「今でも捨てた時の事を忘れられなくて。

 あの時、るーちゃんがなんで捨てたの

 って今でも夢に出てくる...、、」


門番さん

「だからせめて似た人形を見付けたら

 その子は絶対可愛がろうって、思って

 て、、どんだけ高くても買おう

 って、、」


門番さん

「ほんとうにごめん...っ、ごめんね

っ...、、、」


 本当は全部捨てたくなんかなかったんだろう、柚夏は後悔の念に縛られるようにぼろぼろと涙を溢(こぼ)して泣いていた...。


門番さん

「...だから、私はるーちゃんと遊ぶ

 資格なんて、ない...、」


美紗「本当にそうなのかな...?、」


 門番さんは顔を上げて、私の顔を見上げる。泣いてる門番さんの目は凄く哀しそうで、頬は涙に濡れて赤く染まってる。


美紗

「お母さんを守るために仕方なかったん

 だよね、自分の大事な物を捨ててまで

 柚夏はお母さんを守ろうとしたん

 でしょ?」


美紗

「...捨てちゃったのは仕方ないけど、でも

 それでるーちゃんを怖がってたら

 それこそ本末転倒だよ、、」


美紗

「それを否定しちゃったら、柚夏が

 お母さんを守った事自体...否定する事に

になっちゃうよ...?」


美紗「柚夏はるーちゃんを捨ててまで

   お母さんを守った事...後悔して

   る...?」


門番さん「.....、」


門番さん

「...後悔はしてないよ...。後悔してたら

 そもそもそんな事してないし...、」


門番さん

「でも、多分...怨んでるよね、、...理由は

 どうあれ私がるーちゃんを捨てたのに

 かわりないから...。」


るーちゃん

「...私、お母さんを恨んでないよ」


 両手に抱っこしてた るーちゃんを下ろしてあげると、るーちゃんはとてとてと自ら柚夏の近くまで歩いてく。


門番さん

「...るー、ちゃん....」


 ずっと足元で両手をあげる、るーちゃんに申し訳なくなってきたのか柚夏は少し戸惑うようにるーちゃんを抱き抱えた。


るーちゃん

「お母さんは私をいっぱい愛してくれ

 たよ、なんで捨てられたか分かんなくて

 ずっと飽きちゃったのかなって思って

 た。」


るーちゃん

「だからお母さんの口から本当の事が

 聞けて良かった、お母さんはるーちゃん

 を愛してくれてたんだね。」


るーちゃん

「ありがとう、お母さん」


るーちゃん

「今までるーちゃんを愛してくれて。」


るーちゃん

「....捨てられたのは悲しかったけど、

 でも拾ってくれた人が居たから。

 だから、私怨んでないよ」


るーちゃん

「お母さんがずっと私を大切にしてくれた

 からるーちゃんは新しい子のお家の家族

 になれたの、」


るーちゃん

「それをずっと伝えたかったんだ、」


門番さん「...ごめんね、...本当に...っく、

     ...ごめん、、るーちゃ

     っ、、」


 ...柚夏に抱き締められた、るーちゃんは門番さんの手の中で幸せそうな顔をしたまま光の粒子に包まれて消えていった。


門番さん

「ありがとう...美紗...。」


門番さん

「大事な事に気づかせてくれて、

 本当に...、感謝するよ...、、」


門番さん

「美紗がいなかったら、るーちゃんに

 向き合うことも出来なかったし、ずっと

 怨んでるって怖がり続けてたと思う。」


門番さん

「るーちゃんの事もそうだけど、それとは

 別にずっと悩んでた事があって...」


門番さん

「多分、現実の柚夏が美紗に言ってくれる

 と思うけど...その事を分かってくれない

 美紗に対して私八つ当たりして...、」


門番さん

「だから、ごめん...っ!!」

     

門番さん

「美紗に話してない私が悪いのに、

 美紗に嫌われるのが怖くて...なかなか

 言えなくて、、」


美紗「...ずっと我慢、してたんだね」


門番さん

「...そうだね。」


門番さん

「...私は柚夏の深層心理、お化けが恐い事

 も手品が出来る事もそれは美紗だから...

見せる事が出来た」


門番さん

「何故か、妹さんも付いてきちゃった

 けど」


美紗「うん」


くゆ「ほんとにね」


門番さん

「美紗の情報も向こうに行ってると思う

 けど、お互いに秘密って事にして

 おいて欲しいな」


美紗「私の秘密...?なんだろう...」


くゆ「姉さんの秘密、」


門番さん

「ギブアンドテイク、...神様の計らい

 で妹さんは多分付いてきてこれたん

 だろうけど、普通はこういうのないと

 思うよ?」


門番さん

「じゃぁ...そろそろ仕上げに取り掛かろう

 か。ずっとこの世界に居るのも良くない

 し、ね」


美紗「仕上げ?」


門番さん

「...ココロクエスト、開始します」


 門番さんが目を閉じると同時に、大きな頑丈そうな扉が左右にどさっと、


その名の通り音を立てて、目の前に落ちてきた。


くゆ「門が...、落ちて...、」


美紗「凄い大きい門、カッコいい!!」


くゆ「そこまで大きいかな...?」


美紗「大きいもん!!」


くゆ「大きな門だけに...?」


門番さん

「...そろそろ初めても良いですか?」


美紗「あ、どうぞ、」


門番さん

「ただのクイズだよ、この世界と精神を

 繋ぐ門。この門が夢として美紗達との

 精神を繋げてるの」


門番さん

「ココロクエスト、和解の課題を開始

 します。今回は2問の質問をするから、

 仲直りの証として正解してね」


門番さん「クイズは簡単だから」


門番さん

「第1門、柚夏が大事にしていた人形

 の名前は何?」


→「くゆちゃん」


くゆ「え!?私!?」


門番さん

「妹さんの名前と間違えるって...、」


※2回目


門番さん

「美紗はよく私の事ロリコンって言う

 けど、美紗こそシスコンじゃない?」


→「るーちゃん」


門番さん

「正解。丁度流雨と同じるーだよね」


門番さん

「第2門、私は美紗が言ってくれた

 ある一言を糧にしてたりするんだけど、

 その言葉は?」


→「一生、友達だよ」


門番「...ありがとう、それがまた美紗の

   口から聞きたかったんだよね、、」


→「ネガティブすぎて引く」


門番さん「...すみません」※やり直し


※2回目~4回目


門番さん「...すみません」


※5回目以上繰り返すと

門番さんぶちギレます。


門番さん

「だって仕方ないじゃん。私の母親帰って

 来たら目の前で自殺してたし、それで

 ネガティブにならない方が可笑しく

 ない??」


門番さん

「何?ポジティブだったら良いん

 ですか?わぁい!!お母さん死んで

 人生楽しぃ~♪...は?楽しい訳ない

 だろ、...ふざけないでくれる?」


門番さん

「大体さぁ、5回もネガティブ過ぎて

 引くって言われた人の気持ちとか考えた

 ことある?そもそも言われた事ある?」


門番さん

「仏の顔も三度までっていうけど、

 二回もオーバーしてるんだよなぁ...、

 そういう性格だから現実で嫌われん

 だよ」


門番さん

「というか...5回も同じ答え選ぶ暇人

 にネガティブ過ぎるとか言われたくない

んですけど」


※6回目

門番さん

「...そこまで言うなら、私と一緒に

 人生やり直そっか。良いよ、一人ぼっち

 は寂しいもんな」


→問答無用でゲームオーバー





門番さん

「その門に入って、そしたら...柚夏と

 仲直り出来るから」


美紗「門番さんは...?」


門番さん

「私は、そっちにはいけない。けど...私はちゃんと...」


門番さん「「美紗の側に居るから」」


※キャプション


 門に向かって歩いてくと、視界が、急に眩しい光に包まれて...


 空中庭園はまるで夢だったかのように消えていて、そんなものなんて初めから存在していなかったかのように、


 私は自分のベットの上で仰向けになって眠っていた。


美紗「....くゆ、」


 くゆが隣で私に抱き付いて寝てて。くゆが寝てる事を除いては何時と本当に何も変わってない光景だった


くゆ「...ん、」


 ....寝ているくゆの髪をそっと撫でる。昨日までは壁を向いて寝ていたのに、いつの間に抱き付いてたんだろう


美紗(...ん~、...動けない )


 安心しきったようにゆっくりと浅く、そして深く呼吸をするくゆ。真夏にこんなに抱き付いててくゆは暑くないのかな...。


ピッ....、


 何とかくゆを起こさずに手の届いたエアコンのリモコンを下けて、布団を掛ける。


美紗(...柚夏がお母さんの為に、お父さん

   の思い出を残さないよう大事にして

   た人形を捨てたって...、)


美紗(柚夏が小6の時に離婚した

   って言ってたから...その時に捨てた

   のかな...。)


美紗(...あの時の門番さん、るーちゃん

   見た時、すごく嬉しそうだった...)


美紗(...本当に大事にしてたから、だから

   、捨てちゃった事。柚夏はずっと

   気に病んでたのかな...、)


 もぞもぞと目を閉じながら、眠そうなくゆが布団から出てくる。


くゆ「おはよ...う...」


美紗「おはよ、くゆ、」


 くゆは両手で腕を抱き締めたまま、眠そうな顔で私の方を見てる


 それからゆっくりと視線を下に向けて...、抱き締めている自分の手を見て...目を閉じて、固まった。


くゆ「....」


思考が停止中みたいだ。


くゆ

「....なんで、私姉さんに抱きついて

 んの?」


美紗「えっと、朝から抱き付」


くゆ「それ以上ッ!!」


 右手を上げて、待って欲しいというように言葉を挟むくゆ。


くゆ「...それ以上っ///、、...言わないで

   良いからっ///、、」


 そういってくゆはゆっくりと私から離れる、...口元が少し揺るんでるから、喜んで貰えてるって事で良いのかな...?


美紗「くゆって...、朝苦手なの?」


くゆ「...寝れなかったの、いつもは

   こんなんじゃないし...、、それにも

   っと早く寝てるし、」


美紗「寝れなかった?」


くゆ「...待って。いや、私朝超苦手

   だったわ、今、急速に苦手に

   なったから、、」


くゆ「もう低血圧が凄くて、酷い顔

   してるから見ないで...!!」


 物語みたいな夢を見たせいか、こうやって照れてるくゆと話してる自分がなんだか夢みたいに思えてきて...。


...もし、お父さんが捕まってなかったら?...もし、私がお母さんに付いて外国に行ってたら...?


美紗(この世界は現実、なんだよね...、)


美紗(こうやってくゆと話すことも

   雪音と会うことも...柚夏の事を

   考えたりする事も...、)


無かったかもしれないんだなって...。


くゆ「...姉さん、私疲れてるのかな。

   浮いてる島に居る...変な夢見た...」


美紗「あ、くゆも同じ夢見たの?

   私のこと、守ってくれようと

   してくれたよね」


くゆ「え、姉さんも見たの!?」


...あの時は少し感動しちゃったな、本当は姉である私が守らなくちゃいけないんだけど...。


くゆ「...まさか、嘘...、、姉さんと同じ

   夢見るとか...う、運命って

奴...?、なのかな...?」


美紗「魔法ってやっぱりあるんだね。

   凄かったなぁ...、魔法少女に

   空中庭園に喋るお人形さん...、」


美紗「また行きたいな」


くゆ「本当に同じ夢見たんだね...」


くゆ「...私はもう勘弁願いたいかな、

   というか私普通に関係ない夢

   だったし...。」


くゆ「でも、今度家族でそういうとこに

   遊びに行きたいなって思ったよ」


美紗「でも、くゆはそういうのあまり

   興味ないんじゃ...。お母さんはいい

   かもしれないけど...、お父さんは...

   きっと行きづらいだろうし」


美紗 (...あれ...私、...なんでだろう。...あの

世界から帰れて...安心、...してる?)


くゆ「そりゃ、姉さんと一緒じゃなかった

   らね。父さんも姉さんが喜ぶんなら

   行きたがると思うよ」


美紗「.....」


 私は起き上がって、ベットの端に凭れかけた。


くゆ「...どうしたの?」


美紗「...ううん、なんでもないよ」


くゆ「姉さんのなんでもないは大抵

   よくないから。...教えてよ」


 くゆはうつ伏せのまま、枕を下敷きにして私を見上げてる。


美紗「本当に対した事じゃないよ...?」


くゆ「それを判断するのは姉さんじゃ

   なくて私」


美紗「...私ね、...今まであぁいう綺麗な

   場所に本当に憧れてて」


美紗「前まで夢とかでお伽話の世界に

   行けたらそこから帰りたくないっ

   てずっと思ってたんだけど、」


美紗「...でも今こうやって目が覚めて、

   あの綺麗な世界に永遠に閉じ込め

   られなくて... 良かったって...

   思っちゃって、」


美紗「不思議だよね、」


美紗「物語もあれだけ大好きだったのに。

   ...そうやって今まで大好きだった

   ものもいつか、興味が無くなって

   いっちゃうのかな...。」


美紗「...それだけ、私にとってのお伽話は

   今まで生きていく中で大事なもの

   だったんだよ」


くゆ「....」


美紗「...でもあの世界から帰って来て、

   くゆやお母さん、...柚夏、...雪音、

   が居なかったら。」


美紗「それは私のいた世界じゃなく

   なっちゃうって事に気付いて、」


くゆ「私は今の姉さんの事が好きだから。

   ...別にそれでいいと思うよ、」


 くゆは機嫌良さそうに枕に抱きついてる。


美紗(まぁ...多分、これから悪くなるん

   だけど...、)


美紗「...うん。...こんな雰囲気の最中に

   申し訳無いんだけど...その、私...

   本日学校に用事があって...、」


くゆ「....」


美紗「今から出掛けないといけないん

   です...、」


美紗(...分かってたよ、お姉ちゃん

   分かってた、、)


くゆ「...別に普通に行けば良いでしょ、」


美紗「帰ったらまたお話するから、

   許して」


くゆ「許すも何も別に怒ってないし...。」


美紗「帰りに百貨店でくゆの好きな野菜

   スティック買ってくるから、」


くゆ「だから別に気にしてないって

   言ってんじゃんっ、別に買って

   こなくて良いよ。」


くゆ「百貨店の奴だって安くないし、

   毎回いらないって言ってるのに

   買ってくるし..!!」


美紗「だってお野菜食べてるくゆ可愛い

   から...、」


くゆ「....姉さんが買ってきたのなら

   スーパーのでも普通に美味しい

   からそれで良いよ」


美紗「いや、やっぱりくゆには農薬の

   使ってない無添加食品をちゃんと

   食べて貰いたいから」


くゆ「なにその拘り...、、」


くゆ「というか早く行かないと遅刻する

   よ」


美紗「朝ご飯食べていくから、くゆは

   私がいなくても朝ご飯ちゃんと

   食べなきゃだめだよ」


くゆ「なんで知ってんの、、」


くゆ「家(うち)って個人情報の漏洩が

   すごい酷い気がする...」


 私はバタバタと階段を駆け降りて、急いで朝ご飯を貪(むさぼ)りながら、そのまま急いで学校に向かったのだった。


※キャプション


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