第63話 魔狼ダンジョン③

 その後も討伐は順調に進み、ウィンドウルフ、ライトウルフ、ダークウルフの魔石を入手することができた。


 それから数分後、目の前に現れたのは紫色の毛並みが特徴的なポイズンウルフだった。


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【ポイズンウルフ】

 ・討伐推奨レベル:1400

 ・紫色の毛皮に包まれた、狼型の魔物。俊敏な動きと、口から放たれる毒が強力。毒性が付与されると1分につき1%HPが削られていく。


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「とうとうきたか……!」


 魔法の中でも特別な、状態異常付与の力を持つ魔物だ。

 純粋に攻撃力のある魔法より、ある意味では何倍も厄介である。


「ガァッ!」

「むっ」


 さっそく、ポイズンウルフはその口から毒の霧を前方に放ってきた。

 それ自体に攻撃力はないが、毒性を付与する効果が含まれている。


「一応、精神力のステータスはこのダンジョンのレベル帯より高く、かつ状態異常耐性のスキルを保有してるんだから付与が成功する可能性は低いが、それでもできればかかりたくないな」


 付与される確率は限りなく0に近いだろうが、それでも絶対ではない。

 レベル1の冒険者が使う毒魔法が、討伐推奨レベル1000の魔物に効くこともあるのだ。

 絶対に油断はできない。


 解毒用のポーションもアイテムボックスの中にあるにはあるが、体力回復薬と同じく連続で何度も使用はできないからな。


「あとはどうやってリスクを回避した上で討伐するかだが……まあ、お決まりのこれだよな」


 ポイズンウルフは毒の霧を放った後、こちらに近付いてこようとはしない。

 わざわざ自分にとって有利な状況である、毒が蔓延まんえんしたエリアから離れて戦うメリットはないので当然だ。

 敵は、俺が毒に耐えながら接近してくると思い込んでいるはず。


 だからこそ、これが刺さる。


「ダンジョン内転移」


 直後、俺はポイズンウルフの背後にいた。

 さすがに後方にまで毒の霧は回っていないようだ。


「ルゥッ!?」

「遅い」


 一閃。

 無名剣をまっすぐ振り下ろし、ポイズンウルフの体を真っ二つに両断する。

 たった一撃で決着はついた。


「討伐完了っと。って、魔石を取るには毒が邪魔だな、ウィンド」


 しばらくの間使用していなかった初級魔法を用い、毒を払いのける。

 それからポイズンウルフの魔石を取り出すが、さすがに1個目から当たりが出ることもなく、透明のものだった。


「気を取り直して、次だ!」


 俺はすぐに次の獲物めがけて出発した。

 毎回のように毒をかわして攻撃するのは面倒なので、できるだけ不意打ちを心掛けながら。


 討伐と魔石回収は順調に進み、その後間もなくポイズンウルフ、パラライズウルフ、スリープウルフの魔石も入手することができた。

 これで、9つ全てが揃った。



「さあ、後はボスを倒すだけだな」


 魔狼ダンジョン最下層の第30階層、ボス部屋に辿り着いた俺はそう呟いた。

 ちなみにここにくるまで、レベルは2アップした。


 先約はいないみたいなので、すぐ挑戦することにする。


 すると、眼前には高さが2メートルはありそうなほど巨大な灰色のウルフが現れる。

 魔狼ダンジョンのボス、キングウルフだ。

 討伐推奨レベルは2000。


 このままだと、キングウルフは魔法を使うことはなく、ただ運動能力が高いだけの強力な魔物でしかない。

 そして俺が倒したかったのも、コイツではなかった。


「ほら、食え」


 戦闘を始める前に、俺は赤、青、緑、茶、白、黒、紫、桃、黄と、9色の魔石を投げる。

 するとキングウルフは待ちわびていたかのように、その魔石を大きな口で食べた。


 その途端、キングウルフの体は9色に輝き始める。

 そう、これでキングウルフは9種のウルフたちの能力を獲得したのだ。


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【キングレインボーウルフ】

 ・討伐推奨レベル:3000

 ・9色の毛皮に包まれた、狼型の魔物。巨躯きょくに見合わぬ俊敏な動きと、多種多様の魔力による攻撃が強力。


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 こうして現れたのは、討伐推奨レベル3000の強敵、キングレインボー9色なのに虹ウルフ。

 一部の界隈ではゲーミングウルフと呼ばれている魔物だった。

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