第4話 夢見ダンジョン
翌日。
俺はこれまでに攻略したことのあるダンジョン一覧を眺めながら、どこに行くかを考えていた。
正直、効率だけなら夕凪ダンジョンが最もいい。
あそこなら約2時間で攻略が可能。それでレベルが5もアップする。
一日に5周するとしたら、25レベルアップする。
ただ、一つだけ問題がある。
夕凪ダンジョンはDランクダンジョンの中でも迷宮資源が豊富で、かなり稼ぎやすく冒険者が多い。俺もその一人だったわけだ。
そのためダンジョン外は買取所などがあり、かなり賑わっている。
人目が多いと、俺がダンジョン内転移を発動して消えるところを目撃される恐れがある。
できればそれは避けたい。
となると、紫音ダンジョンのように人が少ないところがいいんだが……
あそこは約一時間で攻略可能。それでレベルが1アップ。
夕凪ダンジョンに比べれば、幾分(いくぶん)効率が悪い。
それに、紫音ダンジョンの迷宮資源はほとんど稼ぎにならないし、できれば避けたい。
「となると――ここか」
Dランクダンジョン【
Dランクダンジョンにしてはレベルが高く、攻略には3時間近くかかる。
その代わり、攻略時のレベルアップは7と少し高め。その他に貰える魔石は、だいたい一万円で売却可能だ。
3周すれば、レベルが21アップし、3万円の稼ぎになる。
さらにこの夢見ダンジョンの特徴として、道中に出てくる魔物から得られる経験値が少なく、ダンジョン内で得られる迷宮資源の売却価格が低いという点が挙げられる。
普通ならば短所でしかないその特徴も、今の俺にとっては望ましいものとなり得る――つまり、冒険者にとても人気がなく、人目につきにくい。
「決まりだな」
準備を終えた後、俺は電車に乗って一時間のところにある夢見ダンジョンに向かうのだった。
夢見ダンジョンに辿り着くと、想像通り人気が少なかった。
ゲート前に、ダンジョンに挑戦する冒険者のレベルをチェックするダンジョン管理人が一人いるだけだ。
ダンジョン内で事故が起きないように、Dランク以上のダンジョンにはレベル制限がある。
夢見ダンジョンの場合、ソロが70、パーティでは平均50以上が必要となっている。
俺はダンジョン管理人にバレないようにゲートから少し離れた場所に隠れると、ダンジョン内転移を使用する。
転移距離は20メートル。発動までの時間は×3の60秒。
一分の沈黙の後、無事にスキルは発動され、俺は夢見ダンジョンの中にいた。
「んじゃ、行くか」
二ヵ月ほど前に攻略した時の記憶を思い出しながら、俺は進み始めた。
夢見ダンジョンで出現する魔物はボスを除いて3種類。
ゴブリンとコボルト、それからグレイウルフで、後者になるほど強力になる。
ただ、状態異常を起こす攻撃手段を持つ魔物はいないため、ソロにとってはかなりやりやすいダンジョンだ。
俺は短剣を片手に持ち、慎重にダンジョン内を歩いていく。
この短剣は【夢見の短剣】といい、以前このダンジョンで入手した。
初挑戦、かつソロでボスを倒した際にのみ貰える報酬なだけあり、かなり優秀な武器だ。
入手して以降、ずっと愛用している。
「っと、きたか」
魔物の気配がした方に短剣を向ける。
すると、灰色の毛並みが特徴的な狼型の魔物、グレイウルフが3匹姿を現す。
息の合った連携で攻撃してくるため、なかなか厄介な魔物ではあるが……
「……遅いな」
グレイウルフの攻撃をかわした俺は、すぐに短剣を振るいダメージを与えていく。
前回攻略した際はそれなりに苦労したのだが、その時に比べて俺のレベルがかなり上がっていることもあり、ほとんど相手にならなかった。
レベルが上がり、能力値が上昇するだけで、ここまで成長を実感できるのだ。
戦う上での技量はもちろん大事だが、この世界のレベルシステムにおいては、やはりレベルを上げることが最も重要だと実感する。
一分ほどでグレイウルフを討伐した俺は、再び歩を進めた。
道中に出現する魔物との戦闘は極力避け、できるだけ早くボス部屋にやってきた。
タイミングが良かったのか、今は誰もボスと戦ってはいないようだ。
ボス部屋に入ると、入り口が閉まっていく。
ボスを討伐するまで、あそこが開かれることはない。
自分より先に挑戦した者がいた場合、この待ち時間がなかなか面倒だったりするのだ。
なんにせよ、今はボスに集中しなくては。
夢見ダンジョンのボスはハーピーという、女の顔をした半人半鳥の魔物だ。
特徴として、こちらの眠気を誘う歌を歌ってくるが、気合で耐えられるレベルなので正直そこまで脅威ではない。
それより基本的に空中を旋回し、攻撃時のみ下りてくるので、こちらから攻撃するのが難しい方が厄介だ。
前回はそのせいで、討伐までにかなり時間がかかった。
けど、今回はもっと楽に勝てるはずだ。
また同じような事態に陥った時に困らないように、あの後俺は新しいスキルを入手したのだから。
そのスキルとは、ずばり初級魔法。
火、水、風、土といった四属性の魔法を発動できる。
威力はそこまで強くはないが、貴重な遠距離攻撃の手段だ。
「というわけでさっそく、ファイアボール!」
空中のハーピー目掛けて、しつこく何度も魔法を放っていく。
防戦一方を嫌ったハーピーが反撃してくるタイミングを見計らって、短剣を一閃。
ほとんど苦労することもなく、俺はハーピーの討伐に成功した。
『ダンジョン攻略報酬 レベルが7アップしました』
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天音 凛 19歳 男 レベル:116
SP:100
HP:970/990 MP:50/170
攻撃力:260
耐久力:180
速 度:240
知 性:140
精神力:110
幸 運:230
スキル:ダンジョン内転移LV10・身体強化LV3・初級魔法LV3
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