第124話 華の今後

 ひとまず戦闘が終わったということで、気になったことについて尋ねる。


「そうだ、最後にゴブリンナイトを素手で殴ってたけど怪我はないか?」


 仮にかすり傷の一つでもついていたら大問題。

 そう思って尋ねたのだが、華は「平気っ」と答えた。


纏壁てんへきを使ってたから、私にダメージはなかったよ」

「なるほど、そんな使い方があったか」


 どうやら華は纏壁をプロテクターのように使用したらしい。

 確かにあれだけの強度で体が守られていたら、ゴブリンナイトを殴ったくらいで傷付くことはないだろう。


 にしても、俺でもまだ防御以外の使用方法を見つけていなかった纏壁をまさかそんな風に有効活用するとは。

 戦闘における機転という意味でも、華には才能があるのかもしれない。

 そんな華が技能模倣ストックを用いて強力なスキルをコピーし、様々な方法で使用していけば、いったいどれほど優れた冒険者になってしまうのだろうか。



「……ふむ」



 と、ここで俺は思考の海に沈む。


 華が冒険者として活躍するためには、俺のようなソロではなくパーティーで活動するべきだ。

 技能模倣の性能を最大限に発揮するためには、優秀なスキルを持った仲間が必要となる。


 もっと言うなら、華の強みは状況に応じてどんな戦い方もできるということ。

 一つのパーティーに収まる必要すらないかもしれない。

 となると……やっぱりいずれかのギルドに所属するのが一番なのだろう。


 できることなら、俺と華は同じギルドに所属したいと考えている。

 いや、もはやマストと言ってもいい。

 それを前提に置いて考えると、現時点での第一候補は……宵月よいづきとなる。


 宵月は少数精鋭を謳う上位ギルドだが、華の才能を知れば喜んで勧誘してくるはず。

 問題は彼らが信用に足るギルドかどうかだが――



「? 急に静かになって、どうかしたの、お兄ちゃん?」

「いや、何でもないよ」



 無言で考え事をする俺を疑問に思ったのか、華はそう尋ねてくる。

 俺は首を横に振り、華の頭に優しく手を置いた。


 色々と想定はしたが、結局のところ、どのギルドに所属するのか決めるのは華自身だ。

 現時点でそこまでのことを考えても仕方ない。

 今はただ、できることをやろう。



「よし、華さえ大丈夫そうなら、次の魔物を探すとするか」

「了解だよっ」



 その後、俺たちは一時間に及びダンジョン内を歩き回った。

 魔物と戦うたびに、華はたしかな成長を遂げていくのだった。

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