第7話 遭遇
翌日。
夢見ダンジョンに行くと、いつもより冒険者の数が多いことに気付いた。
「あっ、そっか。今日は土曜日だ」
おそらく、副業で冒険者をやっている者たちだ。
休日に少しお金を稼ぎにきたといったところだろう。
週に1、2回しかダンジョンに来ない彼らにとって、一週間の再挑戦期間(スパン)はそれほどの弊害ではなく、ダンジョン攻略を中心に活動している者が多い。
ここ夢見ダンジョンは道中の魔物から得られる経験値や素材はゴミだが、攻略報酬だけならそれなりなため、そういった層には需要がある。
今もまた、5人パーティがゲートを潜り抜けていった。
「……ん? 5人?」
その人数に対して少し思うところがあったが、気にしないでおこう。
よけいなお節介を焼いて勘違いなら面倒なことになるし、何より他人に構っていられる余裕はない。
俺は他の冒険者たちから少し遅れて、ダンジョン内転移を使用した。
ダンジョン内でもできるだけ他の冒険者と出くわさないように注意しながら、瞬く間に3周する。
このペースなら10周も狙えるかもしれない。
そんなふうに考えた矢先だった。
4周目。ボス部屋に辿り着くも、その大きな扉は固く閉ざされていた。
再びここに来るまでの間に、他のパーティーがボスに挑戦したのだろう。
ボスが討伐されるか、パーティーメンバーが全滅しない限り、この扉は開かれない。
この待ち時間が地味に厄介だ。
「あ、あの……」
「うおっ!」
突然、自分以外の声が聞こえ、思わずのけぞる。
そんな俺の姿を見て、声をかけてきた相手――明るい桜色の長髪と、ぱっちりと開かれた翡翠の
「ご、ごめんなさい、驚かせてしまって」
「いや、全然驚いてないから大丈夫だ」
「えっ? でもさっき、すごい勢いで叫びながらのけぞって――」
「――そんなことより建設的な話をしよう。なんでお前、一人でこんなところにいるんだ?」
少女の追及を華麗にかわした俺は、そのまま疑問に思ったことを訊く。
通常、ダンジョンにはパーティーで挑むものだというのに、彼女は一人で突っ立っていた。
一瞬、俺のように例外ではあるがソロで攻略を試みたのかと思ったが、武器を持っているようには見えない。
となると彼女は魔法使い系の冒険者だと推測できるが、それらの系統ではソロ攻略の難易度が近接戦闘系に比べて何倍にも跳ね上がる。
何か別の事情があると考えた方がよさそうだ。
「じ、実は……」
少し戸惑いを見せながらも、少女はこの状況について説明するのだった。
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