第175話 懐かしい顔
数日後。
改めてギルドに呼び出された俺は、最寄り駅まで行った後、ゆっくりとギルドを目指していた。
昨日、クレアから連絡があった。
なんでも、俺の体の状態について、一つ提案したいことがあるらしい。
詳細は直接会って話したいとのことなので、まだ聞いていない。
何を言われるのか気になるところだ。
そんなことを考えながら歩を進めていると、見慣れた場所に辿り着いた。
俺にとっては苦々しい記憶が残る、剣崎ダンジョンの跡地だ。
「いきなりエクストラボスの
また変なことに巻き込まれたらシャレにならない。
特に今はまともに戦うことすらできないからな。
ここは避けて、遠回りで行くとしよう。
剣崎ダンジョンの跡地である公園を避けるのは俺だけではなかった。
先日この場所で、通常ならあり得ないはずの迷宮発生が起きたことが広まっているからだろう。誰もここに近寄ろうとはしないせいで、公園の中には誰一人としていな――ん?
いや、いた。
一人だけ。
後ろ姿から察するに、たぶん女の子。
その少女はなぜか、両手両膝を地面につける形で四つん這いになっていた。
新手の変態か?
これは本格的に近寄らない方がいいかもしれない。
そう思った直後のことだった。
「なんで……なんで、もう既に剣崎ダンジョンがなくなっちゃってるのよぉ!」
少女の叫び声が、耳に飛び込んでくる。
どうやら彼女は剣崎ダンジョンの攻略を目的としていたらしい。
剣崎ダンジョンが迷宮崩壊でなくなったのは、ここ数か月の話。うまく情報を入手できなかったのだろう。
ドンマイとは思うが、まあ自業自得だ。
それよりも、早く宵月に向かわなくては――
そう思い、俺は一歩足を踏み出す。
しかし、すぐにその足は止まることとなった。
「せっかく、
「――――ッ!」
その二つの単語を聞き、俺は反射的に振り返った。
それらの武器や称号について知っている奴など、俺以外にはいないはずだ。
いや、待て。
いる可能性はある。
だって俺は以前、この情報をネットに公開した。
あの時はほとんどの奴らから嘘認定されてしまったが、正しさを見抜くことのできる目を持った人間なら、真実に辿り着いたとしてもおかしくはない!
まさか俺の言葉を信じてくれた人間が本当にいるとは。
しかもこうして行動に移してくれるとは。
結果的に今となっては剣崎ダンジョンはないし、実際に来てくれたあの子もなんだか色々と抜けている感じがしなくもないが、喜ばしいことだ。
せめて一言、声をかけるくらいはしてもいいだろう。
「はあ……ショックだけど、仕方ないわね。また一から、他にいい案がないか探すしかないわ……」
しかし、俺が行動に移すより早く、少女は立ち上がって、こちらに振り返る。
俺と少女の目が合った。
少女の顔を真正面から見た俺は、驚愕に目を見開く。
そしてそれは相手も同じだった。
なぜなら――
「……
「……凛?」
――そこにいた少女のことを、俺は良く知っていたから。
名前は
数年前まで隣の家に暮らしており――つまるところ、幼馴染だった。
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