第52話 終焉を齎す者

 零は「あまり褒められた方法じゃないけど」と前置きしたうえで、その方法について語る。


「風見さんたちが、なんとか相打ちでオークジェネラルを倒したってことにするのはダメ?」

「……なるほどな」


 たしかにその方法なら俺のユニークスキルを隠すことができる。

 ただ零の言う通り、褒められた方法でないのは事実だ。


 この方法によって得をするのは零ではなく俺。

 ならば、最後の決断は俺が下すべきだろう。


「分かった、それでいこう。風見たちには悪いが、最期に最低限、名誉を守れたってことで手打ちにしてもらおうか」


 一応これで、いま零と話し合っておかなければならないことは済んだ。

 後、ここでするべきことといえば……


「戦利品の回収だな」


 そういえば、到着時に零を襲っていたのは無名の騎士だったはず。

 もしかしたらもう一本、無名剣が手に入れられるんじゃないかと思い周囲を見渡すも、どこにも見当たらなかった。


「凛? どうしたの?」

「いや、無名の騎士の死体が見当たらないなって思って」

「それなら、凛がオークジェネラルと戦っている途中に消えていった」

「マジでか……」

 

 零の話によると、無名の騎士は登場の仕方もおかしかったらしい。

 通常のボスとは異なり消滅が早かったのも、それが影響しているのかもしれない。


「ならせめて、これは回収しなくちゃな」


 オークジェネラルから魔石を取り出す。

 サイズ、純度ともにこれまで見たものとは比較にならない。

 これ一つで数百万は下らないだろう。


「あとは風見たちの死体だが……こっちは厳しそうだな」


 オークジェネラルの圧倒的な力に蹂躙されたのだろう。

 もはや原型を留めている者はいなかった。

 アイテムボックスの中には生きた動物と人間の死体を入れることはできないため、持って帰ることはできないみたいだ。

 

 迷宮消滅にともなって彼らの死体も消えるため心が痛むが、俺にはどうすることもできない。


「っと、ようやくきたか」


 淡い光が俺と零の体を包み込む。

 帰還用の転移魔法が発動する合図だ。


 発動を待つ僅かな間に、零がとあることを尋ねてくる。


「凛がダンジョンの中にいたことについては、外の人になんて説明するの?」

「……忘れてたな。これは本当に思春期を理由にするしかないのか?」

「?」


 頼む、零。

 何を言ってるんだコイツ、みたいな目で俺を見るのは止めてくれ。


「ああそれから、由衣にも事情を説明しなくちゃなんだった」

「あの子に? どうして?」

「アイツには俺が今スパン中だって話をしてしまったんだ。そんでもって、俺がダンジョンの中に入って行くのも見られたから、ダンジョン内転移についても説明しなくちゃいけない」


 頼みこめば、秘密にはしてくれそうだけど……

 ちょっと抜けているところがあるから、少々心配でもある。


 なんてことを考えていると、零は言った。


「……ねえ、由衣がわたしと同学年ということは、冒険者歴は浅い?」

「そうだと思うけど、それがどうかしたのか?」

「わたしにいい考えがある」


 自信ありげな表情を浮かべる零。

 しかし、それを聞くよりわずかに早く転移魔法が発動する。


「それについては後で聞かせてくれ」

「分かった」


 こうして俺と零は剣崎ダンジョンのラストボス討伐を終え、地上に帰還するのだった。



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 天音 凛 19歳 男 レベル:3056

 称号:ダンジョン踏破者(4/10)・無名の剣豪・終焉を齎す者(ERROR)

 SP:4010

 HP:24640/24640 MP:1360/5920

 攻撃力:5660

 耐久力:4150

 速 度:5880

 知 性:5480

 精神力:4140

 幸 運:5250

 スキル:ダンジョン内転移LV12・身体強化LV10・剛力LV10・金剛力LV3・高速移動LV10・疾風LV3・初級魔法LV3・魔力回復LV2・魔力上昇LV2・索敵LV4・隠密LV4・状態異常耐性LV4・鑑定LV1・アイテムボックスLV4


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 終焉をもたらす者(ERROR)

 ・ラストボスを単独ソロで討伐した者に与えられる称号。

 ・ラストボスと戦闘時、ステータスの全項目が+30%。


 ・ERROR発生。条件の一部が満たされていないことを確認しました。再び条件を満たすまで、この称号の効果は発揮されません。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る