第51話 激闘の後で

『ラストボスを討伐しました』


『経験値獲得 レベルが233アップしました』


『ラストボス討伐報酬 レベルが150アップしました』



 脳内に鳴り響くシステム音。

 4000レベルのオークジェネラルを討伐したためか、経験値の量がかなり多かったようで、討伐報酬と合わせて400近くレベルがアップした。

 まあ、ダンジョン周回を頑張れば1日で上がる量ではあるのだが、ありがたいことには違いない。


 しかし、素直にそれを喜んでいられる状況ではなかった。


 俺はまずこの場にいるもう一人の冒険者、黒崎 零に視線を向けた。

 キング・オブ・ユニークの中で、唯一の生存者だ。


 彼女は目を潤わせたまま、静かな笑みを浮かべる。


「凛……ありがとう。助けてくれて」

「……ああ」


 命が救われたことを盛大に喜べないのは、彼女以外の全員がオークジェネラルによって殺されてしまったからだろう。

 4人ともが無残な姿で転がっていた。



 その後、零から簡単に今回のいきさつを聞いた。

 おおよそは俺の予想通りの内容だった。

 最期は強敵を前にし、混乱したまま死んでいったという部分だけは違ったが。


「……そうか、そんなことが」


 正直、俺はアイツらのことが好きじゃなかったし、援軍を待たず自分たちだけでラストボスに挑んだことに対しては許されない行為だったと思っている。

 だからといって……死んで良かっただなんて、口が裂けても言えないが。


「次は凛の話を聞かせて。どうやって、ここに来たの? ボス部屋の扉は閉まっているのに」

「む、それは……」


 零の話が終わり、矛先が俺の方を向く。

 どのように説明するべきか悩んでいると、零は衝撃的な一言を告げた。


「――ダンジョン内転移、のおかげ?」

「ッ、知ってたのか……」


 既にバレていたとは思っていなかったため、かなり驚いてしまう。

 しかし零は以前、風見から俺について聞いたことがあると言っていた。

 ダンジョン内転移というワードさえ知っていれば、おのずと答えにはたどり着くだろう。


 そう考える俺だったが、衝撃はそこで終わらなかった。


「重ねて質問。ダンジョン内転移を使ったら、スパン中でもダンジョンの中に入れたりする?」

「………………しないよ」

「そっか、するんだ」

「今しないって言ったよな!?」


 思わず、大声でツッコんでしまう。

 しかし零は軽く微笑むだけ。


「大丈夫、それを周りに広めるつもりはない。この短期間であれだけ強くなれることがバレたら、凛が大変な目に合う」


 うん、これはもう誤魔化すのは無理そうだ。

 俺は諦めることにした。


「心配どうも。そうしてくれるなら俺も助かるけれど……」

「命の恩人を裏切ったりしない」

「なら、信じるよ」

「うん」


 こうなってしまった以上、零が誰にも話さないことを信じるしかない。

 約束を破らないタイプだってことは、なんとなく分かる。


 さて、問題の一つが解決したところで、話は次に移る。


「しかし、問題はこの後だな。もうすぐ転移魔法が発動して地上に帰還することになるけど、ラストボスを倒した流れをどう説明するべきか……」

「凛だけスキルでボス部屋の外に出て、地上に戻ることはできないの?」


 俺は首を横に振る。


「いや、そうじゃなくて。ラストボス討伐時は迷宮消滅にともなって、ダンジョン内にいる全員が同時に地上に帰還することになるんだ。ボス部屋の外にいるであろう奴らとも一緒にさ。だから俺がボス部屋の中に入ったこと自体は隠せると思うんだけど……そうなると、風見たちが殺された強敵を零が一人で倒したって説明せざるを得なくなる」

「たしかに、その説明はさすがに無理がある……なら、こういうのはどう?」


 続けて、零はこの問題を解決する方法を提案した。

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