第69話 初遭遇
住福ダンジョンの中に入った俺たちは、少し空間がひらけた場所まで移動する。
そこで、片桐は皆に向けてこれからのことを告げる。
「それでは、これから皆様にはステータス獲得に挑戦してもらいます。既にご存じの通り、ステータスは初めて魔物を討伐した際に獲得できるのですが、その可能性は約50%となっております」
その言葉を聞き、学生たちがざわざわと騒ぎ始める。
「そっか、ステータスを手に入れられるのってここにいる半分だけなんだよね。すごく怖くなってきた……」
「ようやくここまで来たんだ、絶対に獲得する!」
「ユニークスキル来いユニークスキル来いユニークスキル来いユニークスキル来いユニーク――」
なんとも形容しがたい光景だった。
まあ、この数分で自分の一生が左右されることになるんだから、それも当然か。
ふと横を見ると、華もまた両手をぷるぷると震わせていた。
なので、俺は自分の手を華の両手の上に乗せる。
「お兄ちゃん?」
「ステータスを獲得できるかどうかは完全に運なんだから、そう緊張する必要はないぞ。って、これを言ったら元も子もないか……」
励まし方を間違えてしまったかもしれない。
そう思っていると、華はぷっと噴き出した。
「何それ、励ますなら最後までやり遂げてよね、お兄ちゃん」
「わ、悪い」
「ううん、おかげで少し気持ちが楽になったよ。ありがと」
言葉通り、華の表情は落ち着いていた。
とにかく、華の緊張を解く手助けができたのなら何よりだ。
それにしても、と。俺は疑問を抱いた。
そもそも華はどうして冒険者になりたいと思ったんだろう?
これまでそんな話を聞いたことはなかった。
尋ねようかとも思ったが、それよりも早く片桐が説明を再開する。
「基本的には私が3人ずつ魔物のもとに連れて行き討伐の補助を、残りの者はこの場で柳とともに待機してもらいます。ただ、レベル100以上の同行者がいる方は、その方と自由に行動してもらっても構いません。ただしステータスを獲得できた者は、私か柳のもとまで報告に来てください」
その説明を聞き、俺は「ふむ」と頷いた。
「協会の人に手伝ってもらうか、自分たちだけで行くかを選べるんだな。華はどっちがいい?」
「うーん、やっぱり他人に見られながらはちょっと嫌かも。二人で行こっ」
「ああ、じゃあそうするか」
方針は決まったので、俺と華は集団から離れて自分たちだけで魔物を倒しに行くことにした。
見る限り、どうやら半数近くが俺たちと同じ選択をしたみたいだ。
それから歩くこと数分。
すぐにその魔物は現れた。
「お兄ちゃん、これってもしかして」
「ああ、ゲームなんかで有名なのとは見た目がかなり違うが、あってるよ」
俺と華の前にいるのは、目や鼻を持たない流動性のある透明の生命体――スライムだった。
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