第70話 初討伐

 俺は目の前に出てきたスライムに対して鑑定を使用した。


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【スライム】

 ・討伐推奨レベル:1

 ・流動性のある透明な体が特徴的な魔物。攻撃力はほとんどなく、体の中心にある核を破壊することで討伐できる。


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「討伐推奨レベル1か。うん、これなら華でも倒せそうだな」


 鑑定結果を見て、俺はそう呟いた。


 スライム系の魔物は何種類もいるのだが、一番基本のスライムについてはRPGの序盤に出てくるザコキャラと同様、簡単に倒せる魔物だ。

 無論、スライム種の中には非常に強力な魔物も存在する。

 例えばクラーケンスライムなんかは討伐推奨レベルが10000を超えていたはずだし、何より女性の纏う装備(服)のみを溶かすという特有の能力が非常に厄介だという噂が――


「お兄ちゃん? 急に天井を見上げてどうしたの?」

「いや、何でもない。そんなことより早くスライムを討伐しなくちゃな」


 華の呼び掛けによって現実に戻ってきた俺は、すぐに切り替えて話を進める。


「スライムの中心に見える赤色の球体が見えるか? あれはスライムの核で、あの核を壊すことによってスライムを倒せるんだ」

「わ、分かった。やってみる!」


 華は冒険者協会から支給されたナイフを握り、恐る恐るスライムに近付いていく。

 スライムは生身の人間でも簡単に倒せる程度の強さなんだが、初めてなこともありかなり慎重になっているみたいだ。


 うん、素晴らしい!

 冒険者にとって慎重さは何よりも大切だからな。

 間違っても、自分よりレベルの高い相手に真っ直ぐ挑むような馬鹿にはなってほしくないな!


 俺はどこぞの誰かを棚に上げながら、華の行動を見守る。


 華はスライムの前で立ち止まり、ゆっくりとナイフを振りかぶる。

 そして――


「えいっ!」


 勢いよく振り下ろしたナイフが、スライムの核を貫く。

 次の瞬間、スライムはパンッと破裂した。

 素材や魔石が残らないから、スライムは冒険者にとって人気がなかったりする。


 さて、問題はここからだ。

 華がステータスを獲得することができたかどうか、無言で見届ける。


 その直後、華は驚いたように目を見開いた。



「ステータスを獲得しました? それから経験値獲得に、レベルがアップって……お兄ちゃん、なんか変な声が聞こえるんだけど!」



 戸惑ったような華の声を聞いて、俺は「よしっ」と呟いた。


「どうやら獲得に成功したみたいだな。おめでとう、華」

「そっか、私、無事にステータス獲得できたんだ……やったよ、お兄ちゃん!」


 嬉しそうにその場で跳びはねる華。

 その手には当然ながらナイフが握られている。

 なんかこう……捉え方を間違えたらちょっとだけまずそうな光景だなと思いました。



「さて、第一関門はこれで突破だけど、本当に大事なのはここからだぞ。獲得したスキル次第で今後が決まってくるからな」

「そうだった! えーっとたしか、自分のステータス画面を見る方法は……」

「ステータスオープン、な」

「それそれ! ステータスオープン! わあっ、すごい! なんか目の前に出てきたよ! 見て、お兄ちゃん!」

「はいはい、分かった分かった」



 華に言われるまま、彼女のステータス画面を確認する。

 どのようなスキルを獲得しているだろうか。

 身体強化か、魔力系か、それとも技術上昇か。

 そんなふうに考える俺の目の前に飛び込んできたのは、信じられないような文字の羅列だった。


「これは……!」


 そこにはこう書かれていた。



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 天音 華 18歳 女 レベル:2

 SP:100

 HP:15/15 MP:5/5

 攻撃力:3

 耐久力:3

 速 度:3

 知 性:5

 精神力:3

 幸 運:3

 スキル:技能模倣ストックLV1・身体強化LV3・魔力操作LV3・魔力上昇LV5


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 身体強化LV3、魔力操作LV3、魔力上昇LV5など、一つでも保有していれば十分だというスキルが3つも。

 そして何より、それらが霞むほどの衝撃的な単語。


 技能模倣ストック

 そのような名前のスキルなど、これまで一度も見たことがない。

 すなわち――



「――ユニークスキルだ」

「ふえっ?」



 かくして、華はユニークスキル――技能模倣ストックを獲得した。

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