第71話 技能模倣

 ――技能模倣ストック

 偶然にも、華は俺と同じくユニークスキルを獲得した。


 俺の呟きを聞いた華は、少し困惑したように言った。


「ユニークスキルって、確か他に持っている人がいないスキルのことだよね? なんか、めちゃくちゃ凄い効果なことが多いって聞いたよ」

「ああ、時には例外もあるけどな」


 例えば、覚醒前のダンジョン内転移とかな。


「問題はこのユニークスキルがどんな効果を持っているかだ。確認してみよう」

「うん、分かった!」


 俺と華は一緒に技能模倣の効果を見る。

 そこにはこう書かれていた。


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 技能模倣(ストック)LV1

 条   件:対象者に直接触れることにより、相手が保有するLV1以下のスキルをコピーする。

 模倣可能数:最大で1種類

 模倣時間 :最大で10分(再度触れることで伸ばすことが可能)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「ええー」


 名前から予想はできていたが、見るからにとんでもない効果だった。

 なんだこれ、チートか?



 現時点でコピーできるのはLV1以下のスキルのみ、最大で1種類、時間は最大10分などの制限はあるが、恐らくこれは技能模倣のスキルレベルを上げるごとに増えていくはずだ。

 俺のダンジョン内転移とは違い、レベルが1つ上がるごとに効果が倍々になっていく分かりやすいタイプだろう。



 さらに凄いのはコピーできる条件がスキルレベルに依存している点だ。

 この説明を見るに、下級スキルはコピーできるが上級スキルはコピーできないといった制限はなさそうだ。

 レベルが3桁以下の時点で上級スキルを扱えるだとか、考えただけで恐ろしい。

 普通は上級スキルなんて、1000レベルを超えないと獲得できないからな。


 もちろん、上級スキルにもなると使用MPは増えるため、レベルが低い状態では使用できないのかもしれないが、中にはMPを使用しないスキルも存在するし、使用条件が保有MPの〇〇%といったスキルも存在する。

 適切なものをコピーすれば、上手く運用できるはずだ。


 そして、このスキルを持つ華が実力を最大限に発揮できるのはパーティーでいる時だろう。

 パーティーの理解さえあれば、メンバーのスキルを借りることで、戦況に応じて剣士、タンク、魔法使いが一人増えるといった形の運用が可能となる。



「いや、それだけじゃない」



 ここで俺は一つのとんでもない案を思いつく。

 その案とはつまり、華に俺のダンジョン内転移をコピーさせて、一緒にレベリングするのはどうかというものだ。

 ぶっちゃけ寄生のような形にはなってしまうが、そんな決まりよりは華の方が大切なので個人的には何も問題ない。


 ただそれができるようになるのは、技能模倣の条件にあるレベル制限がダンジョン内転移のそれを超えた時だ。

 現時点でダンジョン内転移はLV14。これからもレベルは上げていくつもりなので、もしかしたらコピーできるようになる日は一生こないかもしれないが、可能性として把握はしておくべきだろう。

 レベル制限自体がなくなる日もくるかもしれないからな。



 そんなふうに考える俺の横では、華が「うーん」と考え込んでいた。



「ねえ、お兄ちゃん。これって良いの? 悪いの?」

「そうだな、この力を公表したら今すぐ日本中のギルドから勧誘される程度にはやばい」

「ほんとっ!? そんなに凄い力なんだ……うーん、でもでも、スキルが凄いこと自体は嬉しいんだけど、それで面倒なことになるのはやだな」



 冒険者として名声を得たい者なら全力で喜ぶことのはずだが、どうやら華は違うみたいだ。



「なんだ、別に冒険者として活動していきたいってわけじゃないのか? てかそもそも、何で冒険者になろうと思ったんだ? 事故対策?」

「そ、それは秘密だよ! 乙女のプライバシーを暴こうとするなんてお兄ちゃん最低!」

「ええー」



 理不尽なお叱りを受けてしまった。

 怒った華もそれはそれで可愛い。



「けど、そういうことなら片桐さんたちにステータス獲得を報告するとき、技能模倣については隠しておいた方が良さそうだな。どこまでも拡散される可能性がある。このスキルについて教えるのは信頼できる相手に限るべきだ」

「でも、そんなこと可能なの? 報告の時にステータスを見せなくちゃいけないかもしれないよ」

「む、それもそうだな……いや、待てよ」



 とある方法を思いついた俺は、にっと笑って告げた。



「いい解決策がある。技能模倣の実験も兼ねて、試してみよう」

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