第147話 神速超えのレベルアップ ①

「っと、このまま続けて攻略するのもいいけど、その前にこっちも確認しておかなくちゃな」


 俺は小さくそう呟いた後、ステータス画面を開く。

 そして昨日、新たに獲得したスキルに視線を向けた。



 ――――――――――――――


 忍  耐LV10:耐久力を+2750

 金剛不壊こんごうふえLV5:耐久力を+50%(1秒につき10MPを消費する)

 精神強化LV10:精神力を+2750

 不撓不屈ふとうふくつLV5:精神力を+50%(1秒につき10MPを消費する)


 ――――――――――――――



 これらは耐久力や精神力の数値を上げてくれるスキル。

 高速移動や疾風の別バージョンといったところだ。


「常に瞬間転移タイム・ゼロ纏壁てんへきに頼るわけにはいかないからな」


 瞬間転移を使えば敵の攻撃を軽々と回避できるし、纏壁を使えば一定のダメージを無効化できる。

 普通のスキルと比べても、この二つはとびぬけて優秀だ。

 だが、強力だからこその問題もあるのだ。



「瞬間転移を使用できるのはあくまでダンジョンの中だけだし、そもそもMP消費量が尋常じゃない。あまりに多用すれば一秒で1000近く持っていかれるからな。これを使用しない戦い方にもしっかりと慣れておくべきだ」



 それに、戦闘が常にダンジョンの中だけで行われるとは限らない。

 地上に魔物が現れた際、足手まといになるのでは笑い話にもならない。

 その時にも備えておくべきだ。



「瞬間転移を使えなくなった時こそ、ダメージを無効化できる纏壁が最大限に活躍するんだが……それはそれで問題点があるんだよな」



 纏壁は再び発動するためのクールタイムが一分もある。

 一見大したことがないように思えるかもしれないが、このレベルの戦いになってくるとコンマ一秒以下で勝負が決まる。

 敵の攻撃がどうしても回避できないものだった場合、纏壁を突破された後、再発動が可能な時間まで生身で攻撃を浴びるのはあまりにも危険だ。


 というわけで、今回耐久力や精神力を高めてくれるスキルを獲得しようと思ったのだ。

 本当ならこれらを使わずに済むのが一番なのだが、もしもの時の保険として持っておく。



「纏壁はともかく、一度瞬間転移を封印した状態でハイオーガに挑むのもいいかもしれないな。この二回の戦いで、だいぶ行動パターンは読めてきたし」



 そうと決まればさっそく行動だ。


 俺は30階層に行き、三度目となるハイオーガとの戦いを繰り広げる。

 力だけならば相変わらず俺を大きく上回っているが、冷静に観察するとかなりの隙があった。

 適切に対処することで少しずつダメージを与えることに成功する。


 そして戦闘開始から約3分後。俺の前にはハイオーガの死体が転がるのだった。



『経験値獲得 レベルが1022アップしました』

『ダンジョン攻略報酬 レベルが100アップしました』

『エクストラボス討伐報酬 レベルが200アップしました』



「相変わらず、貰える経験値はとんでもないな……」


 エクストラボスの発生条件が易しいおかげで、一回攻略するごとにレベルアップ報酬が300も貰える。

 さらにはハイオーガのレベルが俺よりかなり高いため、経験値獲得のレベルアップがそれを大きく上回るくらいだ。


 たった一回攻略するだけで上がるレベルでさえも、通常の冒険者にとっては喉から手が出るほどの数だ。

 それを俺はダンジョン内転移のおかげで、一日のうちに何度でももらえる。


 改めて、このユニークスキルの力を思い知る。

 俺のレベルが上がり、優秀な攻略報酬をもらえるダンジョンに入れるようになるほど、この力は真価を発揮するのだ。

 これまでのさらに数倍の速度でレベルアップが可能となる。


 結局その後、もう一度だけダンジョンを攻略した。

 そして俺のレベルは驚くほど上昇するのだった。



『レベル:19438→23413』

(本日の上昇分、3975レベル)

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