第13話 効率アップ

「よし、これでSPが500溜まったな」


 これでダンジョン内転移のスキルレベルを上げることができる。

 俺は迷うことなく500SPをダンジョン内転移に注ぎ込んだ。



『ダンジョン内転移のスキルレベルが11に上がりました』


『転移距離が変更されます』


『最大で20メートル→最大で50メートル』



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ダンジョン内転移LV11

 使用MP:2MP×距離(M)

 条  件:発動者が足を踏み入れたことのあるダンジョン内に対してのみ転移可

 転移距離:最大で50メートル

 発動時間:3秒×距離(M)

 対象範囲:発動者と発動者が身に纏うもの


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


「おっ、転移距離が一気に2.5倍か」


 500SPを注ぎ込んだこともあり、なかなかの成長度合いだ。

 ただ、予想を超えるほどのものではなかった。


 それに加え、正直なところ、転移距離が増えたところであまり恩恵を感じることはできない。

 現在、俺がダンジョン内転移を使用するのは、スパンを無視してダンジョンに挑む場合に限られているからだ。

 20メートルも50メートルも、大した違いではない。


 今回のスキルレベル上げの結果は残念に終わったが、次の機会に期待しよう。

 そう意識を切り替えようとした瞬間だった。


「っ……待てよ」


 頭の中に、一つの考えが浮かび上がる。

 その考えを現実のものにすることができれば、俺のレベルアップ効率はさらに良くなるはずだ。


「よし、さっそく明日試してみるか」


 明日への期待を込め、俺はそう呟くのだった。



 翌日。

 いつものように夢見ダンジョンにやってきた。


 今日のダンジョン管理人は昨日と違うようで、ほっと胸を撫で下ろす。

 本来なら再挑戦期間スパン中にもかかわらず、ダンジョンにやってきたことを疑問に思われることはなさそうだ。

 もっとも、ダンジョン内転移を使ってバレないようにダンジョンの中に入るつもりではあるが。



「よし、行くか。ダンジョン内転移」



 さっそくダンジョンの中に入った俺は、さっそく昨日の考えを実行してみる。

 その考えとはつまり、ダンジョン内転移を使った階層移動だ。


 本来ならば、下の階層に繋がる階段に辿り着くまでに数分かかるところを、ダンジョン内転移でショートカットすることができれば効率が格段に跳ね上がる。

 さらなるレベルアップが見込めるはずだ。


 初めてこの方法を思いついたのは、冒険者になってすぐのことだった。

 しかし、当時のダンジョン内転移の転移距離は最大で5メートル。

 階層と階層の距離が10メートル以上あるダンジョンでは、空中に投げ出されてしまう危険性があるため、実現できなかった。


 スキルレベルを上げ、転移距離が最大で10メートルを超えてからも、幾つかの障害があった。

 一つは、転移先に大量の魔物がいた場合、俺一人での対処が難しいこと。

 もう一つが、ダンジョン内転移を何度も使用するために必要なMPを、俺が保有していなかったということだ。


 しかし、今の俺ならばそれらの条件を満たしている。

 MPは450を超えているし、夢見ダンジョンの魔物程度ならば100体が同時に襲ってこようが敵ではない。

 仮に転移先で他の冒険者と鉢合わせたとしても、本来の目的でダンジョン内転移を使用したと説明すれば問題ない。

 ダンジョン内転移というユニークスキルがあること自体は、別に隠していないからな。



 そんなわけで、問題がないことを確認した俺は、さっそくこの方法を試してみることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る