第32話 エクストラボス

 ダンジョンボス、ハイオークとの戦いに勝利した俺は、すぐに戦利品の回収を始めた。

 帰還のための転移魔法が発動する前に済ませなくちゃいけないしな。


 まずは魔石。

 ハイオークの心臓付近にある魔石を、短剣を巧みに扱い取り出す。

 これ一個で売却すれば20万はくだらない。


 次に注目したのはハイオークの使っていた棍棒だ。

 当然のように鑑定を使用する。


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【ハイオークの棍棒】

 ・ハイオークが装備していた棍棒。

 ・装備推奨レベル:500

 ・攻撃力+250


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「うーん、攻撃力は高いけど重くてでかいし、正直使えないな。まあ後は帰還するだけだから量は気にしなくていいし、一応持って帰って売却するか」


 ハイオークの死体は大した額で売れないため、不要。

 よって、これでハイオークから回収するものについては以上だ。


 次はダンジョン攻略報酬について。

 レベルの他に、爆煙魔石ばくえんませきも入手することができた。

 これは戦闘に使用するサポート用のマジックアイテム。売れば10万を超えるが、自分で使うように持っておくことにしよう。


 と、ここで俺は一つ、おかしな点に気付いた。


「あれ? 報酬はこれで全部なのか? 剣崎の剣が見当たらないが……」


 そう、事前調査ではこれともう一つ、剣崎の剣が入手できるとのことだったのだが、それが見当たらない。

 まさかデマ情報だったのだろうか? 信頼できるソースなため、とてもそうは思えないが……


 疑問に思うも、自分一人しかいない状況では確かめる手段もなく、立ち尽くすしかできない。

 不満はあるが仕方ない。地上に帰還した後に色々と調べてみよう。

 そう考え、気持ちを切り替える。


 が……


「……遅いな。転移魔法はまだか?」


 しばらく待つも、転移魔法が発動する様子はない。

 連続の異常事態に頭を悩ませていた、その時だった。


 なぜかこのタイミングで、脳内にシステム音が鳴り響く。



『本ダンジョンを初挑戦で攻略したことを確認しました』


『本ダンジョンを単独ソロで攻略したことを確認しました』


『ダンジョンボスの討伐に用いられた武器が刀剣類であったことを確認しました』


『攻略者が”刀剣類の技術上昇スキル”を保有していないことを確認しました』



『条件:【無名の剣豪】をクリアしました』


『エクストラボス、【無名の騎士ネームレス・ナイト】が出現します』



「――――は?」


 あまりにも突然のことだったので、俺は咄嗟に何を言われたか理解することができなかった。


 条件? エクストラボス?

 どうしてよりにもよって今、そんな言葉が――


「ッ!?」


 ――しかし、現実は厳しい。

 俺に考える時間をくれはしなかった。


 突如として、ボス部屋の中心に一人の騎士が現れる。

 銀色の鎧と兜に全身を包まれているため、中身がどのようになっているのかは見えない。

 ただ分かるのは、その敵がハイオークとは比べ物にならない程に強力で、そんな敵と俺が今から戦わなくてはならないという事実だけ。


「冗談……だよな?」


 俺は、ひきつった笑みを浮かべることしかできなかった。


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【無名の騎士】

 ・討伐推奨レベル:1000

 ・エクストラボス:剣崎ダンジョン


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 天音 凛 19歳 男 レベル:717

 称号:ダンジョン踏破者(2/10)

 SP:1310

 HP:5650/5650 MP:1520/1520

 攻撃力:1400

 耐久力:990

 速 度:1380

 知 性:1320

 精神力:870

 幸 運:1210

 スキル:ダンジョン内転移LV12・身体強化LV10・剛力LV4・高速移動LV4・初級魔法LV3・魔力回復LV1・魔力上昇LV1・鑑定LV1・アイテムボックスLV1


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