第66話 インフレベルアップ

「じゃ、ガンガン進めていくか!」



 魔狼ダンジョン初攻略の翌日から、俺はダンジョン内転移を使用した超高速レベルアップを開始した。



 ここまで周回を繰り返せばもう手慣れたもので、戸惑うことなくどんどん突き進んでいく。

 1、2周目はまだ警戒しながら戦っていたキングウルフも、数を重ねレベルが上がるごとに、余裕で討伐できるようになっていた。

 5周目を超えたあたりからは、無名剣ネームレスの一振りでおしまいだ。



『ダンジョン攻略報酬 レベルが40アップしました』

『ダンジョン攻略報酬 レベルが40アップしました』

『ダンジョン攻略報酬 レベルが40アップしました』

『ダンジョン攻略報酬 …………



 15周目を終えたころ、魔狼ダンジョン内にて発生したとある事件に巻き込まれた。

 まさかあんなことになるなんて……

 すごく、その、あれな印象を抱いた。

 そう、とても悲惨な事件だった。


 だが、なんとか解決したので周回を再開する。

 時間は失ったが、改めて考えればそこまで悪い時間じゃなかった。

 本当の愛って、きっとああいうことを言うんだなって思いました。



『ダンジョン攻略報酬 レベルが40アップしました』

『ダンジョン攻略報酬 レベルが40アップしました』

『ダンジョン攻略報酬 レベルが40アップしました』

『ダンジョン攻略報酬 …………



 そして間も無く、その瞬間が訪れる。



『貴方は本ダンジョンを規定回数攻略しました』

『ボーナス報酬 レベルが80アップしました』

『今後、貴方が本ダンジョンを攻略しても報酬は与えられません』



「おっ、終わりか」


 数日後、計40周を終えたタイミングでそのシステム音が脳内に鳴り響いた。

 どうやらこれで魔狼ダンジョンの踏破が完了したらしい。


「途中面倒な事件に巻き込まれたのを除けば、かなり順調に進んだな。1周で40レベルアップするところを40周もしたもんだから、レベルがとんでもないことになってるし」


 ちなみにここまでで獲得したSPを使用して、金剛力をLV4からLV6に、疾風をLV3からLV6に上げていた。


 そして踏破を終えた今、残っているSPは4010となっている。

 これを使って片方をLV7に上げるのもいいが、俺はここで次の段階に進むことにした。


「そろそろ、こっちも上げる頃合いだよな」


 そして俺はあるスキルに視線を向ける。


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 ダンジョン内転移LV12→LV13(必要SP:1500)


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 ダンジョン内転移。

 俺だけが持つ、ユニークスキル。


 このスキルをLV13にするためのSPは十分足りている。

 予想だが、LV14にするために必要なSPは2000と踏んでいるので、一気にそこまで上げられるかもしれない。


「ただでさえ鑑定、アイテムボックス、隠蔽なんかの非戦闘スキルを獲得してるんだから、少しでも金剛力なんかの戦闘スキルを獲得した方がいいっていう思いもあるが……ダンジョン内転移のレベルが上がって周回の速度が上がれば、レベルアップの効率も格段に変わってくるはず。結果的にはこっちの方が早く強くなれるはずだ」


 スキルと同等以上に、ステータス値は重要だからな。

 どれだけ優れたスキルを持っていても圧倒的格上に勝つことは難しいというのは、風見たちの例が示す通りだ。


「どっちみち、最低でもLV20にはするつもりだったしな。よっと」


 俺は、1500SPを使用してダンジョン内転移をLV13に。

 続けて、2000SPを使用してLV14にまで上げた。



『ダンジョン内転移のスキルレベルが13に上がりました』


『転移距離が変更されます』


『最大で50メートル→最大で100メートル』



『ダンジョン内転移のスキルレベルが14に上がりました』


『発動時間が変更されます』


『2秒×距離(M)→1.5秒×距離(M)』




 変更内容はこのようになった。


「転移距離が倍になって、発動時間が少し短くなったって感じか」


 言ってしまえばこれまでの傾向通りで決して悪いわけではないんだが、正直微妙なところだ。

 発動時間が短くなったのはともかく、転移距離が増えたのはあまり効果がない。

 実際、戦闘や周回においては10メートル以内に転移することがほとんどだからな。


 だからと言って落ち込んだりはしない。

 LV10に上げるまでも、同じことの繰り返しだったのだ。

 それに比べたら、今の状況はだいぶマシになった。


「よし! じゃあ明日からも、既にインフレが起き気味なレベルアップ――インフレベルアップを続けていくか!」


 気合を入れるように、高らかに叫ぶ。

 だけど聞いてくれる人は誰もいなかったので、ちょっとむなしかった。



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 天音 凛 19歳 男 レベル:5054

 称号:ダンジョン踏破者(6/10)・無名の剣豪・終焉を齎す者(ERROR)

 SP:510

 HP:40620/40620 MP:8940/9920

 攻撃力:9280

 耐久力:7140

 速 度:9560

 知 性:8980

 精神力:7060

 幸 運:8520

 スキル:ダンジョン内転移LV14・身体強化LV10・剛力LV10・金剛力LV6・高速移動LV10・疾風LV6・初級魔法LV3・魔力回復LV2・魔力上昇LV2・索敵LV4・隠密LV4・状態異常耐性LV4・鑑定LV1・アイテムボックスLV4・隠蔽LV1


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無名の騎士ネームレス・ナイトつるぎ

 ・無名の騎士が装備していた剣。

 ・装備推奨レベル:4700

 ・攻撃力+4700

 ・敵のレベル(討伐推奨レベル)が自分より高かった場合、HPとMPを除くステータスの全項目を+40%。


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