第203話 海龍ダンジョン②
眼前に広がる大海原を眺めながら、俺はこのダンジョンのギミックについて思い出していた。
「え~っと、確か」
基本的には階層ごとにエリアボスが存在し、それを討伐することで海が割れて下への階段が出現する――という仕組みらしい。
さらに面白い点が、このダンジョンでは階層ごとに一組のパーティーしか入れないそうで、挑戦者が入るたびに階段はランダム生成されるとのこと。
言ってしまえば、各階層がボス部屋と同じ性質を持っているようなものだ。
「基本的な攻略法としては、足場を歩いてると海から魔物が襲ってくるから、その中からエリアボスを見極めて討伐すればいいんだったよな――」
「シャウッ!」
「――うおっ」
その場に立ち尽くしながら情報をまとめていた俺に対し、さっそく海面から触手のようなものが襲い掛かってきた。
俺は
「あっちか」
視線を触手が飛んできた方に向けると、海面からイカの姿をした巨大な魔物が顔を覗かせていた。
俺は鑑定を使用する。
――――――――――――――
【ストームクラーケン】
・討伐推奨レベル:15000
・強靭な触手を相手に巻き付けた後、高速で回転させて竜巻を発生させるのが特徴。相手は宙を舞う。
――――――――――――――
「……ふむ。捕まったら面倒なことになりそうな魔物だな」
にしても竜巻か。
ちょっと体験したい気持ちがなくもないが、さっき華に注意した手前、魔物相手にふざけようとはおもえない。
「
「ッッッ!?!?!?」
なので俺は
その後、もう一度転移を発動して足場に戻ったあと、改めてこのダンジョンのギミックについて考える。
「なるほど、こんな風に突然攻撃してくる中からエリアボスを見つけ出すのが正攻法か……うん、かなり面倒そうだ」
そんな方法で攻略していたら、どれだけ時間がかかるか分からない。
とはいえ、当然ながら俺は正攻法でこのダンジョンを攻略するつもりはなかった。
「索敵、発動」
俺は索敵を発動すると、エリア全体の構造把握に努める。
海はかなりの深さと広さを誇っており、なかなかの魔力量を有する。
その中で俺はようやく、前方に400メートル、下に100メートルの地点に次の階層へと続く階段と、その先に広がる新しいエリアを見つける。
あと、ついでにエリアボスらしきサメっぽい魔物も見つかった。コイツが一番魔力が高い。
普通の冒険者ならここで取れる方法は二つ。
本来の攻略法通りエリアボスを倒して海を消すか、魔物に襲われること前提で素潜りして突破するか。
だけど俺は、そのどちらでもない方法でこのエリアを突破することができる――
「――そう、ダンジョン内転移があればね!」
――――――――――――――
【ダンジョン内転移LV30】
使用MP:1MP×距離(M)
条 件:全てのダンジョン内に対して転移可
転移距離:最大で1000メートル
発動時間:0.2秒×距離(M)
対象範囲:発動者と発動者が身に纏うもの
――――――――――――――
いつ使うんだと思っていた転移距離1000メートルが、やっと日の目を見ることになった。
「さあ、いくか――ダンジョン内転移」
直線距離で、ざっくり420メートル程度。
時間にして84秒を必要とするが仕方ない。
そんな風にして、ダンジョン内転移と唱えてから発動するまでを待っていると――
「シャァァァァァ!」
――ただ立ち止まる俺を見て隙だらけだと思ったのか、海から巨大なトビウオのような魔物が飛び出してきて攻撃してくる。
この攻撃を受けて今いる位置を変えられてしまえば、ダンジョン内転移の発動が中断されてしまう。
しかし――
ガン!
トビウオは俺に届くことはなく、一メートルほど離れた空中で何かにぶつかると、そのまま落下していった。
その光景を見て、俺は内心でほくそ笑む。
「うん、うまくいったな。さっきの経験を活かして、事前に留壁を発動しておいてよかったよ」
俺を取り囲むようにして発動した留壁のおかげで、魔物に襲われる心配はなくなった。
これでダンジョン内転移の発動が妨げられることはないだろう。
そんなこともありながらも数秒後、俺は無事、次の階層への転移に成功するのだった。
◇◆◇
それから同じ方法でダンジョンを突き進むこと早40分。
通常、突破に24時間は必要とされる最下層に、俺はたったそれだけの時間で到着するのだった。
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