第58話 隠蔽

 スキル【隠蔽いんぺい】。

 このスキルを使えば、ステータス情報を自由に書き換えることができる。


 とはいえ、攻撃力を1000から10000にしたところで、実際の攻撃力が10倍になったりはしない。

 このスキルを使う目的は、ステータス画面を他者に見せる時に限られる。


 というのも、ステータス画面を他者に見せる時、


 ・名前だけ

 ・名前とレベルだけ

 ・名前とスキルだけ


 のように、自分が見せたいものだけを選択して見せることができる。

 ただその際に、見せる情報の一部を隠したりすることはできない。


 例えばレベルが1000だった場合、一番右の0を隠して100にはできないし、身体強化と初級魔法のスキルを持っている場合、身体強化を隠して初級魔法のみを見せることができない仕様となっている。

 そしてそれをできるようにするのが、この隠蔽というわけだ。


 ……察しのいい人なら、もうこのスキルの危険性が分かったと思う。



 隠蔽によって偽物のステータス画面を作ることで、他人を簡単に騙すことが可能になる。

 自分を低レベルだと見せかけて、本来より低いランクのパーティーに潜り込み所有物を奪おうとするだとか、逆に高レベルを装って他のパーティーに寄生しようとしたりだ。

 そのため、隠蔽のスキルを取得することは禁止されている。


 というのも、実際問題どの冒険者が隠蔽を保有しているかを確かめる術はない。

 そのため、罰する手段がないというのが現状だ。

 反面、隠蔽を利用した犯罪行為が判明した場合、通常の何倍もの罰が与えられるようになっている。



「ダンジョン関連の法整備は遅れ気味だしな。まあ、年々新しい現象が発生するから仕方ないと言えば仕方ないんだけど……」



 なんにせよ、取得した段階で罰せられるというわけではない。

 一切の躊躇をすることなく、俺は隠蔽のスキルを取得した。


「よし、これで当面の問題は解決できそうだな」


 今後、俺はダンジョン踏破数を増やすため、Cランクダンジョンを中心に周回するつもりだ。

 しかし、初挑戦時にはダンジョン内転移を使用できないのでゲートを通るしかない。

 その際、明らかに場違いなレベルであることが判明すれば、不審に思われてしまう恐れがある。


 一度や二度なら誤魔化せたとしても、何度も繰り返せばレベルの上昇速度も含めて周囲に知れ渡ることになるかもしれない。

 そうなってしまえば、普通の数倍数十倍で成長できるものの現時点で弱者である俺は、国内外問わず命を狙われる可能性がある。

 それは避けなければ。


「Bランク以上になると、挑戦条件が少し変わるから誤魔化しようはあるんだが……さすがに今のステータスでBランクダンジョンに挑むのは無謀だしな」


 Bランクダンジョンに挑戦する際の最低基準である3000レベルは超えているが、安全を考慮すれば5000レベルは欲しい。

 そんなわけで、俺はBランクダンジョンに挑む前に、称号の条件を満たす計10個のダンジョンを踏破してしまおうと考えている。

 今日の有川ダンジョンで踏破数は5になったため、残りは5個だ。


「よし、明日から気合を入れてまた頑張るぞ。おー!」


 一人で片手を上げて気合を入れてみるも、やっぱりむなしかった。


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 天音 凛 19歳 男 レベル:3357

 称号:ダンジョン踏破者(5/10)・無名の剣豪・終焉を齎す者(ERROR)

 SP:2010

 HP:27050/27050 MP:5360/6520

 攻撃力:6240

 耐久力:4550

 速 度:6460

 知 性:6040

 精神力:4520

 幸 運:5760

 スキル:ダンジョン内転移LV12・身体強化LV10・剛力LV10・金剛力LV3・高速移動LV10・疾風LV3・初級魔法LV3・魔力回復LV2・魔力上昇LV2・索敵LV4・隠密LV4・状態異常耐性LV4・鑑定LV1・アイテムボックスLV4・隠蔽


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