第130話 肩透かし

 帰宅後、俺はさっそく溜まったSPを割り振ることにした。


「今あるのは10210SP。確か纏壁をLV2にするのに必要なのが10000SPだったよな? なら、それに決まりか」


 纏壁は非常に強力なスキル。

 しかし、今後のことを考えれば、スキルレベルは上げておいた方がいいだろう。


 思い出すのは柳戦。

 奴は総合力としてはレベルからかけ離れた実力を有していたが、攻撃力に限るなら、それ相応の範囲に収まっていた。

 その攻撃を数回喰らって突破される程度の強度なら、この先戦うことになる魔物には通用しなくなるだろう。


 そんな考えのもと、ステータス画面を開き、纏壁のスキルレベルを上げようとしたのだが、



 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−


 ダンジョン内転移LV21→LV22(必要SP:10000)

 纏壁LV1→LV2(必要SP:10000)


 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−



 その表記を見て違和感を覚えた。


「あれ? ダンジョン内転移をLV22にするのに必要なSPも10000なのか?」


 LV20→LV21にするのに必要なのが10000SPだったから、次は15000SPか20000SPあたりになるんじゃないかと思っていたが……。

 これは少し想定外だ。


「……本当なら纏壁を上げるつもりだったけど、しばらくは鈴鹿ダンジョンに潜るつもりだし、ここは確認も込めてダンジョン内転移のレベルを上げるか」


 もしかしたら、また大きな進化が待っているかもしれない。

 そんな期待のもと、俺はダンジョン内転移にSPを割り振ったのだが――。



『ダンジョン内転移のスキルレベルが22に上がりました』


『転移距離が変更されます』


『最大で400メートル→最大で600メートル』



 結果は、なんとも肩透かしなものだった。


「これはかなり微妙……というか、消費したSP量を考えたら相当悪いな」



 転移距離が400メートルから600メートルに増えたところで、メリットは0といってもいい。

 常に自分にとって、望むべき成長を遂げてくれるわけではないことは、これまでの経験で重々承知しているから、そこまで心は痛まないが……。

 いや、やっぱりちょっとだけショック。



 念のためLV23に上げるのに必要なSP量を見てみると、これもまた10000と書かれていた。


「ってことは、今回と似たような成長しかしないってことか? やっぱりこれからは纏壁を優先的に上げた方がよさそうだな」


 そうして、俺は今後の方針を決定する。

 その後、華の作ってくれたご飯を食べてから就寝した。



 そして翌日から翌々日にかけて、俺は鈴鹿ダンジョンで神速のレベルアップを開始した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る