第156話 白銀と蒼
盛大な破砕音が、空間いっぱいに
俺は。いや、ここにいる誰もが空を見上げた。
天井が砕け散り、太陽が真っ二つに両断される。
その狭間から、これまで隠れていた満月が姿を現した。
「――いや、違う」
それは満月ではなかった。
そう見間違えるほどにまで美しく輝く、白銀の長髪を靡かせる少女――クレアだった。
直後、真っ二つにされたことによって、魔力を留めておくことができなくなった太陽が暴発する。
数十の炎塊が、辺り一帯に降り注ぐ。
その一部が俺たちに向かってくる中、クレアは小さく口を開く。
「――――
それは骨の髄まで凍え切ってしまいそうなほど、冷たくも透き通った声だった。
その小さな一言とともに、クレアは手に持つ氷葬剣を振るった。
振るわれた刃から放たれた冷気は、地獄の業火をやすやすと喰らう。
空に氷の花々が咲き乱れる中、クレアはスッと俺の前に着地する。
その様子を見ながら、俺の頭の中は疑問で埋め尽くされていた。
なぜスパン中の彼女がここにいるのか。
ボス部屋の天井をどうやって破壊したのか。
訊きたいことがありすぎて、何から尋ねるべきか分からない。
そんなことを考える俺の前で、クレアは事も無げに言う。
「やはり破壊不能である外装に比べたら、こちらはいくらか脆いですね」
「…………」
「お待たせして申し訳ありません。あとは私に任せてください」
クレアは振り返ることもなくそう告げると、体を半身にし、切っ先をイフリートに向けるようにして剣を構える。
そして、
「
そう唱えると同時に、彼女を中心にして氷の魔法陣が展開される。
魔法陣は俺や後ろの華たちまで巻き込むほどの大きさだった。
その魔法陣から、大量の魔力が俺たちの体に注がれる。
「うそ、だろ……?」
死ぬ一歩手前だった傷が瞬く間のうちに治っていくのを目の当たりにし、俺は目を見開いた。
いや、それだけじゃない。この一瞬のうちに、HPはおろかMPまで全回復していた。
これはいったい……?
「クレア、これは……」
ようやくまともに話せるようになった俺は、疑問を口にしようとして、止めた。
いや、無意識のうちに止めてしまっていた。
そんな疑問がどうでもいいと思えるほど、彼女の姿が綺麗だったから。
氷の花々が咲き乱れる中で、氷の剣を構えるクレアはただただ美しかった。
その背中が、今はもう曖昧になった、かつての記憶を書き換える。
「あなたに罪はないかもしれませんが……これ以上、彼らを傷つけさせるわけにはいきません」
そう言って、クレアは深い海のような蒼の双眸で炎の怪物を見据える。
そして――――
「今ここで、
――――そして、俺は最強を知る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます