第40話 爆速レベルアップ

 翌日もまた、剣崎ダンジョンにて超速――否、爆速レベルアップを開始する。

 喉が枯れるまでダンジョン内転移と唱え続ける。


 道中に出てくる魔物は極力無視していく。

 転移先に現れたとしても、魔物が4秒以内に攻撃してこない限り、戦う必要はないからだ。


 ただし、相手がレッドボアだった場合は話が別だ。

 レッドボアの死体はかなり高く売れる。

 無名剣で一刀のもとにレッドボアの首を両断し、キレイな状態のままアイテムボックスに保管する。

 アイテムボックスの容量がいっぱいになるまで討伐すれば、剣崎の剣を回収するまでもなく、かなりの金額が稼げるのだ。


「金はいくらあっても困らないからな。多少時間がかかっても、今のうちに稼いでおくべきだ」


 方針としては、レベルアップが最優先だが、金稼ぎも忘れない。

 そんな意識で俺は攻略を続けていくのだった。



「はあッ!」


 無名剣を力強く振るい、本日16回目となるハイオーク討伐に成功する。

 俺のレベルが1000を超えたからか、既に無名剣を扱う際に動きが鈍くなることはない。

 ただ、使いやすさの観点から両手剣のように使用しているが。



『ダンジョン攻略報酬 レベルが25アップしました』



「よし、きたきた」


 与えられる爆煙魔石と剣崎の剣のうち、爆煙魔石のみを回収。

 その後、慣れた手つきでハイオークの体から魔石を取り出す。

 そしてアイテムボックスの中に入れようとするも、できないことに気付いた。


「容量に限界が来たのか。一応さっきLV4にしたんだけどな……まあ、いい時間だし今日はこの辺りで切り上げるか」


 その後、本日手に入れた迷宮資源のうち爆煙魔石を除き、全てを売却した。

 今日は400レベルアップし、400万円以上を稼ぐことができた。



 そしてそのまた翌日。

 当然のように、俺は剣崎ダンジョンで爆速レベルアップを続けていた。


 今、眼前にいるのは本日20回目の戦闘となるハイオーク。

 数日前まで、その圧倒的な膂力に戦々恐々としていたものだが――


「軽いな」


 ハイオークによる全力の一撃、巨大な棍棒の一振りを、左手の甲でやすやすと弾く。


「喰らえッ!」


 そして、右手に握られた無名剣を力強く振るう。

 それだけでハイオークの胴体は両断され、上半身がスッと滑り落ちていった。



『ダンジョン攻略報酬 レベルが25アップしました』



 脳内に鳴り響くシステム音。

 そして、とうとう待ちに待った瞬間がやってくる。



『貴方は本ダンジョンを規定回数攻略しました』

『ボーナス報酬 レベルが60アップしました』

『今後、貴方が本ダンジョンを攻略しても報酬は与えられません』



「よし、これで剣崎ダンジョンも踏破できたな!」


 ここまでにかかった攻略回数は計50回。

 夢見ダンジョン、紫音ダンジョンに引き続き、3つ目となるダンジョン踏破だ。


 ここで、俺は少し疑問を抱いた。


「Eランクの紫音ダンジョンは200回、Dランクの夢見ダンジョンは50回ときてるんだから、Cランクの剣崎ダンジョンは40回や30回程度かと思ってたんだけど、そうじゃなかったな。ダンジョンのランク以外にも、規定回数に関係する要素が何か存在するのか?」


 とても気になるところだが、残念ながら今の俺にはその答えを得るための情報が欠けている。

 ここは素直に、踏破できたことを喜ぶことにしよう。


「やったー」


 その場で両手を上げて喜んでみたが、一人だったため、なんだかむなしかった。

 一人きりで万歳とかマジするもんじゃねぇな。

 良い子の皆は、仲のいいお友達としようね!

 友達がいたらの話だけどな。


「って、そんなことはどうでもよくて! とりあえず、溜まったSPをどう割り振るかを考えるか」


 ダンジョン画面を開き、1万を超えるSPを見ながら、俺はそう呟くのだった。

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