第169話 二つの疑問

「さて……どうしたものか」


 退院が明日に迫った今日この頃。

 俺はとある疑問を抱いていた。


 入院中に、カインを倒した後のステータスがどうなっているか確認しようと思ったのだが、そこに予想もしていなかった情報が書かかれていたのだ。


「ステータスオープン」


 唱えると、自分のステータスが表示される。



 ――――――――――――――


 天音 凛 19歳 男 レベル:44286

 称号:ダンジョン踏破者(10/10)・無名の剣豪・終焉を齎す者(ERROR)・賢者を超えし者

 SP:29250

 HP:348400/348400 MP:94460/94460

 攻撃力:80300

 耐久力:68780

 速 度:82900

 知 性:72470

 精神力:68370

 幸 運:70040

 ユニークスキル:ダンジョン内転移LV30・略奪者LV1

 パッシブスキル:身体強化LV10・剛力LV10・忍耐LV10・高速移動LV10・精神強化LV10・魔力回復LV2・魔力上昇LV10・状態異常耐性LV4

 アクティブスキル:金剛力LV10・金剛不壊LV10・疾風LV10・不撓不屈LV10・起死回生LV1・初級魔法LV3・纏壁LV5・浄化魔法LV1・索敵LV4・隠密LV4・鑑定LV1・アイテムボックスLV8・隠蔽LV1


 ――――――――――――――



 イフリートとカインを討伐したことにより、レベルが格段に上昇している。

 それについてはいい。問題はここからだった。


 俺はユニークスキル・ダンジョン内転移の詳細を確かめてみる。

 すると――



 ――――――――――――――


【ダンジョン内転移LV30】

 使用MP:1MP×距離(M)

 条  件:全てのダンジョン内に対して転移可

 転移距離:最大で1000メートル

 発動時間:0.2秒×距離(M)

 対象範囲:発動者と発動者が身に纏うもの


【派生スキル:瞬間転移タイム・ゼロ

 100MPを使用することにより、半径20メートル以内なら0秒で転移可。


【派生スキル:全景支配ピース・ルーラー

 発動対象に含まれる魔力と同量のMPを消費することにより、視界に映るものを転移させることが可能。人や魔物、およびそれらが身に纏っているものに対しては使用不可。

 継続時間:10秒

 クールタイム:10時間


 ――――――――――――――


 ダンジョン内転移LV30→LV31(条件を満たしていないため、スキルレベルを上げることはできません)


 ――――――――――――――



「条件を満たしていないため、スキルレベルを上げることはできません……か」


 こんな表示はこれまで見たことも聞いたこともない。

 レベルがMAXなら、そう表示されるはず。

 となると、このスキルにはまだ先があるんだろうが……条件が分からない以上、俺にはどうすることもできない。


「まあ、言ってもユニークスキルだからな。どうして一部の人間にしかユニークスキルが発言しないのかもまだ解明されてないし、現時点で答えを求めるのは無理そうだ」


 それに、このままでもスキルとしては十分以上に活用できるからな。

 しばらくはこのままでも構わない。

 条件については、今後じっくりと調べていくことにしよう。


 そんなわけで、次の疑問。

 俺はアイテムボックスの中からを取り出す。


 鮮血のような赤色の刀身が特徴的な短剣。

 魔奪剣グリードと同じく、短剣としては少し大きめの刃。

 魔奪剣が綺麗に反った片刃の短剣なのに対して、こちらは血飛沫ちしぶきのような歪な形をしていた。


 俺は鑑定を使用する。



 ――――――――――――――


吸血きゅうけつ短剣たんけん

 ・装備推奨レベル:40000

 ・攻撃力+60%

 ・敵(人・魔物)を切り裂いた際、刃に触れた血液を吸収することができる。吸収した血液に含まれる魔力を、HP、MPに変換することも可能。


 ――――――――――――――



 これが、気が付いた時にはアイテムボックスの中に入っていたのだ。

 まあ、いつ入手したのかはだいたい予想がつくが。


の短剣って言うくらいだから……やっぱりカインを倒した時だよな」


 あの時は意識が朦朧としていたからはっきりとは覚えていないが、確か『管理者討伐報酬』というシステム音が流れていた気がする。

 その報酬としてもらえた武器なのかもしれない。


 一瞬だけ、略奪者の力が働いたのかとも考えたが、首を横に振る。

 俺は略奪者を発動した覚えはないし、そもそも発動条件である、敵の体に直接触れるという工程をクリアできていない。

 それに、そもそも奪うのはスキルであって、武器ではないはずだ。



 こちらについても、結局なんでこの力が得られたのかについては分からないが……まあ、ありがたく貰っておこう。

 敵を倒すだけでHPとMPを回復してくれるという破格の性能。

 無名剣ネームレスや魔奪剣のような対格上の武器とは異なり、対格下の集団戦、および持久戦なんかで役立ってくれることだろう。

 この前の迷宮発生の時だって、これがあればわざわざボスに挑むこともなく、待機策を取れたはずだしな。



「ただ、吸血の短剣って呼ぶのは長いな……吸血剣ブラッディでいいか」


 そんな風にカイン戦後の情報をまとめていると、コンコンとノック音が飛び込んでくる。


「入ってきても大丈夫だぞ」

「こんにちは、天音さん。その後、体調の方はどうですか?」


 そう言いながら病室に入ってきたのは、透き通るような白銀の長髪に、深い蒼色の瞳が特徴的な少女――クレアだった。

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