第64話 VSキングレインボーウルフ
魔狼ダンジョンが発生した当初、ここは道中の魔物から稀にとれる属性魔石を目的とした冒険者で溢れかえっていた。
ボスを討伐した際の攻略報酬は40レベルアップに、何の効果も付与されていないただの指輪だけ。
ダンジョンの難易度に比べたら非常に価値が低かったため、攻略を目的とした者は少なかった。
そんな中、とある初挑戦のパーティーが属性魔石を入手後、キングウルフに挑んだ。
戦闘の最中、パーティーの中の一人がウィンドウルフの属性魔石を落とすと、キングウルフはすぐさまそれを食べ――キングウィンドウルフへと変わった。
キングウィンドウルフ討伐後、ボーナス報酬として与えられたのは魔狼の指輪(風)だった。
この指輪を装備することで、風属性の魔法のダメージを15%も軽減することができると判明した。
それから様々なパーティーが試した結果、取り込んだ属性魔石の種類に比例してキングウルフが強化されていくこと。
そして初挑戦時にその敵を倒すことで、取り込んだ属性の魔法ダメージを15%軽減してくれる指輪を入手できることが改めて明らかになった。
――と、ここまでがボーナス報酬の入手方法が分かった経緯である。
9種類の属性に対応できる魔狼の指輪が欲しかった俺は、こうしてキングレインボーウルフと対峙するに至った。
後は、この敵を倒すことさえできれば万事解決なのだが――
「くそっ、やっぱり相性は良くないか」
――戦闘を繰り広げながら、俺は思わず悪態をついた。
まず、キングレインボーウルフは俺よりレベルが少し低いため、
そして何よりも、高度に接近戦と遠距離戦を混ぜて戦う敵がかなり厄介なのだ。
「ガウッ!」
「くっ!」
反応が遅れ、キングレインボーウルフの放った炎の球が肩をかする。
ダメージこそ大したことはないが、かなり熱かった。
しかし、それを気にする余裕はない。
1つの攻撃に対応している間にも、次々と新たな魔法が飛んでくるのだから。
「このまま魔法をかわしながら隙をうかがい続けてもジリ貧だな……仕方ない、覚悟を決めるか!」
俺はスキルの中から疾風と金剛力を同時に発動する。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
金剛力 LV3:攻撃力を+30%(1秒につき10MPを消費する)
疾 風LV3:速度を+30%(1秒につき10MPを消費する)
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おそらく、この戦いは長く続かない。
いきなりクライマックスだ!
「――――いくぞ!」
地を強く蹴り、加速。
飛んでくる魔法を次々とかわしながら、瞬く間に敵との距離を詰めていく。
「ガルウッ!」
しかしそれをやすやすと許してくれる敵ではない。
キングレインボーウルフは炎の球体や風の砲弾などをいくら放っても無駄だと悟ったのか、方針を変えて前方広範囲に炎を吹き出してきた。
――読み通り!
「迷うな、いけ!」
自分に活を入れ、さらに加速する。
球体のように魔力が凝縮されたものならばともかく、拡散した炎は威力が低くなっている。
一瞬だけならば耐えきれるはずだ!
目論見は成功。
1000HPを犠牲にして、俺は炎の壁を突破することができた。
「ガウー―」
「させるか!」
再び魔法を放とうとしたキングレインボーウルフの口に、爆石を放り込む。
その名の通り、盛大な爆発を起こして敵にダメージを与える魔石であり、体力回復薬と同様もしもの時に備えて購入しておいたものだ。
キングレインボーウルフが口内に溜めた魔力に反応し、爆石はドォン! と爆発した。
「ギャウッ!?」
内部からの唐突な大ダメージに、キングレインボーウルフは混乱していた。
畳みかけるなら今!
「これで終わりだと思うなよ!」
懐に入ってしまえばこちらのものだ。
無名剣を高速で振るい、足と腹を中心に切り刻んでいく。
速く、鋭く、正確に。
このチャンスで必ず仕留め切る!
それからおよそ30秒。
魔法の発動や退避を試みる敵の動きを先読みし防いだうえで、攻撃を与え続ける。
そして、
「これでトドメだ!」
動きがかなり鈍くなったキングレインボーウルフ目掛けて、最後に大振りの一撃を浴びせた。
剣の柄から伝わる重々しい感触とともに、レインボーウルフの首が宙に舞う。
それと同時に、討伐を知らせるシステム音が鳴り響いた。
『ダンジョンボスを討伐しました』
『経験値獲得 レベルが5アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが40アップしました』
「ふー、終わったな」
かくして俺は、キングレインボーウルフに勝利するのだった。
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