第221話 やっぱガチャってクソだわ

 合獣ダンジョンの踏破を終え、地上に帰還した後。

 ステータスの称号欄を見た俺は、小さく首を傾げた。


……?」


 そこにはこう記載されていた。



 ――――――――――――――


 万物を喰らう者

 ・数多の強者と殺意を喰らい続けてきた者に与えられる称号。

 ・魔石を消費することで、新しいスキルを極低確率で獲得することができる。

  ただし、消費できる魔石は自分が討伐した魔物から入手したものに限られる。


 ――――――――――――――



 俺自身が倒した魔物の魔石を消費することにより、新しいスキルを極低確率で獲得できるという見るからに優秀なスキル。

 ――なのだが、一つ気になるのはこの称号を入手した経緯だった。


 先ほど、この称号を入手する直前、システム音はこう告げていた。



『解析が終了しました』

『対象者は分類:【殺意を喰らう者】に認定されていることを確認しました』

『称号が【強者を喰らう者】から【万物を喰らう者】へと進化します』



 要領を得ない説明。

 ただ、その中のある単語に俺は引っかかった。


「【殺意を喰らう者】って確か、【隔絶かくぜつ魔塔まとう】を攻略した時に俺が認定された分類……だったよな? あの時は何のことか分からずじまいで、それは今も同じわけだが……まさかここに来てあの出来事が関わってくるとは」


 分からないことだらけだが、とりあえず隔絶の魔塔での経験があったおかげで、より優秀な称号を得られたのだと考えておこう。

 元の【強者を喰らう者】の効果が分からないため確かなことは言えないが、システム音が進化と言っていた以上、間違いないはずだ。


 うん、そういうことにしよう!

 考えても仕方ないし!


 俺は切り替えると、改めてこの称号について考えることにした。


「それじゃせっかくだし、さっそくこの称号を試してみるか」


 俺はアイテムボックスの中から、この二日間で獲得した魔石たちを取り出していく。

 そのほとんどがダンジョンボスであるアルス・キマイラのものだ。

 40回攻略した分があるため、一つ二つなくなったところで、稼ぎに大した影響はないだろう。


 称号効果の発動方法は、不思議と直感的に分かった。

 魔石を握りしめ念じることで判定が行われるようだ。


 俺は一つの魔石を握ると、強く念じる。


「頼む! 何かいいスキルを獲得してくれ!」


 その直後だった。

 魔石がひび割れたかと思えば、眩い光となり俺の体に吸収されていく。


 そして、



『称号【万物を喰らう者】によるスキル獲得判定を行います』

『判定終了。スキル獲得に失敗しました』



「………………」


 普通に失敗した。


 俺はしばらく呆然とした後、「いやいや」と首を左右に振る。


「もともと極低確率って話だし、そりゃ一発で成功とはいかないよな! とはいえ、ここから数回以内に何かしらは獲得できるはずだ!」


 その後、俺は一つ、また一つと魔石を消費していく。

 始めは数個だけ挑戦するつもりだったのが、回数を重ねるごとに、次こそ、次こそと躍起になり――


 ものの数分後、アルス・キマイラの魔石は全滅し溶け、残されたのはジオ・イクシードの魔石一つだけとなるのだった。



 今回の感想。

 やっぱガチャってクソだわ。

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