第30話 剣崎ダンジョン②
それから、俺は順調に攻略を進めていた。
オークとの戦闘も一度慣れてしまえば簡単で、5体までなら同時に相手しても一切ダメージを負わず倒せるようになっていた。
そのまま第5階層に到着する。
そこでようやく、別の魔物が出現した。
ホーンラビット。その名の通り、額に角が生えたウサギの魔物だ。
それが1体、ポツンと目の前に現れる。
「思ってたより小さいんだな」
これなら簡単に討伐できるだろう、そう思った次の瞬間だった。
「っ、あぶねっ!」
恐ろしい跳躍力で迫ってきたホーンラビットの角を、短剣で受け止める。
今のはかなり危なかった。ホーンラビットはスピードに秀でた魔物。一瞬の隙が命取りになると実感させられる。
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【ホーンラビット】
・討伐推奨レベル:300
・額に角がある兎型の魔物。力強い跳躍から放たれる角による突きや、強靭な足腰から放たれる蹴り技が強力。その肉は美味と言われている。
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「けど、それさえ分かれば!」
「ッ!?」
耐久力ではオークに圧倒的に劣る魔物だ。
短剣の一撃で倒すことができた。
俺が簡単に倒せたのは速度重視型というのもあったのだろう。
タンクなどの重量型では、かなり苦労したはずだ。
と、ここで聞き慣れたシステム音が脳内に響き渡る。
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
「お、レベルアップか。まだ数十体くらいしか倒してないんだけどな」
いや、違うな。
Dランクレベルで千体以上の魔物を倒してようやく1レベルアップしていたのとは事情が違う。
ここにいる魔物たちは、一体一体から得られる経験値が段違いなのだ。
ありがてぇありがてぇ。
その後、さらに俺は階層を順調に下っていく。
想像していたより、体力や集中力を保てている。
体力についてはレベルが上がったからなんだろうが、集中力については、きっと何日も何日もダンジョンの周回をしていたからだ。
あの経験は俺をかなり強くしてくれた。
そんなこんなで、第15階層に辿り着いた。
ここで新しく出てきた魔物はレッドボアだ。
巨体にもかかわらず、凄まじい速度で突進してくる恐ろしい敵である。
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【レッドボア】
・討伐推奨レベル:350
・厚い毛皮に覆われた、全身赤色の猪型の魔物。その重量から放たれる突進攻撃が強力。その毛皮は様々な装備に使用されるほど頑丈。
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ただ、一直線にしか攻撃してこないので横に躱せばいい。
そして躱したタイミングで、短剣を振るい攻撃を浴びせていく。
途中で、レッドボアの皮が厚くあまりダメージを通っていないことに気付いた。
「なら、これはどうだ……!」
俺はアイテムボックスからオークの石斧を取り出し、レッドボアの脳天に力いっぱい振り下ろす。
するとレッドボアは脳震盪を起こしその場に横たわったので、後は連続で攻撃を与えれば倒すことができた。
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
「うーん、レッドボアは高く売れるから持って帰りたいんだけど、重量がありすぎるのが問題なんだよな……」
アイテムボックスは入れられる量に限界がある。
今回は泣く泣くレッドボアの回収は諦めた。
魔石を取り出すにも、体の中心近くにあるため、かなり時間がかかる。スルー確定だ。
それからも俺は破竹の勢いでダンジョン内を突き進んでいく。
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
『経験値獲得 レベルが1アップしました』
――攻略開始からおよそ5時間後、レベルが6上がったころ。
最下層の第30階層に到着した。
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