第38話 称号の効果
剣崎ダンジョンに戻ってきた後、再度攻略に挑戦する。
今度は無名剣ではなく、霧久地の短剣を手にして。
そして今、俺は15階層でレッドボアを相手にしていた。
「はあッ!」
短剣の刃がレッドボアの皮に深く突き刺さり、スライドさせることで大きな裂傷が生まれる。
レベルやスキルが成長し、武器も変わったからだろう。前回挑戦した時とは違い、短剣だけで簡単にレッドボアを討伐することができた。
レッドボアは売却価格が非常に高いが、大きさと重量があり持ち帰るのは困難だったため、これまでは放置していた。
しかし大金で短剣を購入した今、できればこれも資金源にしたいところだ。
今後も様々な装備やマジックアイテムを購入していくだろうからな。
「どこかのタイミングでアイテムボックスのレベルを上げようと思っていたけど、今がその時だな」
1000SPを使い、アイテムボックスをLV1からLV3に上げる。
これでかなり保管できる量が増えたはずだ。
レッドボアの死体がダンジョンに吸収されて消滅する前に、アイテムボックスの中に入れる。
よし、この調子ならまだまだ中に入りそうだ。
次からレッドボアの死体はできるだけ回収することにしよう。
「じゃあ、改めて出発っと!」
気合を入れて、最深部を目指し出発した。
慣れた短剣を使用していることもあり、第30階層に辿り着くまで一時間程度で済んだ。
ちなみに、ここにくるまでに経験値獲得で2レベルアップしている。
目の前にはボス部屋に繋がる扉があり、さっそく挑戦する――
「――の前に、武器を変えなくちゃな」
ここでいったん霧久地の短剣をアイテムボックスに保管し、代わりに無名剣を取り出す。
わざわざこんなことをするのには、昨日手に入れたとある称号が大きく関係している。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
無名の剣豪
・他者に頼ることなく、刀剣と自らの力のみで困難を乗り越えた者に与えられる称号。
・称号保持者がレベルアップした際、装備している刀剣類の武器の性能もアップする。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
無名の騎士討伐後、入手した称号【無名の剣豪】。
この称号の効果は、俺がレベルアップした際に装備していた武器の性能もアップするというものだ。
霧久地の短剣と無名剣では、武器として無名剣の方が圧倒的に優秀だ。
できれば今後も使い続けるであろうこちらの性能を上げたいと思っている。
だからダンジョンボスに挑む際には、無名剣を使用すると決めていた。
ダンジョンボスであるハイオークの討伐推奨レベルは俺より下であるため、無名剣の特殊能力は発動しない。
そのため少しは戦いにくくなるんだろうが、将来的なことを考えればこうするのが最善であると判断した。
「よし、いこう」
覚悟を決めて、ボス部屋に入る。
目の前に現れるのはダンジョンボス、ハイオーク。
恐ろしい膂力が特徴的な強力な魔物だ。
それでも、負ける気は一切しない。
「さあ、養分になってもらうぞ」
そして戦闘が始まった。
巨大な棍棒を乱暴に振り回してくるハイオーク。
前回の対戦ではそれを全て回避した上で反撃するという作戦を取っていたのだが、今回それは難しそうだ。
だからと言って、ただ不利な状況で戦ってやる気はない。
速度が衰えたとしても、攻撃力に関しては比較にならないほど上昇している。
今度は真正面から叩きのめしてやればいい!
「これでどうだッ!」
無名剣を力強く振り上げ、頭上の棍棒を弾き飛ばす。
まさか力負けするとは思っていなかったのか、ハイオークは勢いよくのけぞる。
……速度が衰えたといっても、これだけ大きな隙があれば話は別だ。
十分、全力の一撃を浴びせられる!
「喰らえ!」
一閃。
ハイオークのどでかい胴体を、深く切り裂いた。
「ガァァァアアアアア!」
ハイオークは痛みを誤魔化すように、その場で咆哮する。
たった一撃であれだけの大ダメージ。この方法でも十分通用しそうだ。
「さあ、あと何発耐えられるかな!」
戦闘を繰り広げること、約3分。
俺の攻撃を8回喰らったところで、ハイオークは倒れるのだった。
『ダンジョンボスを討伐しました』
『経験値獲得 レベルが2アップしました』
『ダンジョン攻略報酬 レベルが25アップしました』
「さすがに今回は、エクストラボスとの戦いはないみたいだな」
爆煙魔石(ばくえんませき)に剣崎の剣と、攻略報酬が正しいことを確認して俺はそう呟いた。
まあ、そう何度もあんなイレギュラーが起こることはないと分かっていたんだけどな。
「さて、ハイオーク討伐でレベルが合計27上がったけど……称号の効果の方はいかほどかな」
俺は鑑定を無名剣に使用した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【
・無名の騎士が装備していた剣。
・装備推奨レベル:1000
・攻撃力+1020
・敵のレベル(討伐推奨レベル)が自分より高かった場合、HPとMPを除くステータスの全項目を+20%。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「攻撃力が+20か……結構上がったな」
1レベル上昇につき、だいたい+1といったところか。
これが今回だけでなく、レベルアップするごとに生じるのだ。
かなり優秀な称号だということを実感する。
「今日はもういい時間だから帰るとして、明日からまた頑張るとするか!」
今日の攻略を切り上げ、俺は帰宅することにした。
そして翌日から、ダンジョン内転移を使用した超速レベルアップを開始する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます