第61話 魔狼ダンジョン①

 一週間の再挑戦期間スパンが終わり、俺は再びダンジョン挑戦を開始する。

 ただ、その前に踏破用のダンジョンを幾つか回っておくつもりだ。


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 ダンジョン内転移LV12

 条  件:発動者が足を踏み入れたことのあるダンジョン内に対してのみ転移可


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 攻略はせず、足を踏み入れるだけにしておけば、次のスパンを考慮する必要がなくなる。

 家から通える範囲にあるCランク以下のダンジョンは、Eランクが4つ、Dランクが4つ、Cランクが3つだ。

 レベルアップの効率だけ考えればEランクやDランクは微妙だが、とりあえず入るだけはしておこう。


 冒険者が町中で力を発揮することは基本的に禁止されているため、面倒だが公共交通機関で移動することにした。

 ダンジョンに入る前には隠蔽を使用し、それぞれにあったレベルに書き換えておくことは忘れない。


 その結果、1つのCランクダンジョンを除く10個のダンジョンを回ることができた。



 そしてさらに翌日、俺は最後の1つ、魔狼まろうダンジョンにやってきていた。

 攻略推奨レベルは2000と、Cランクダンジョンの中ではトップクラス。

 最後に残した理由はもちろん、このダンジョンには初挑戦時のボーナス報酬があり、俺がそれを欲しているからだ。


 ただ初挑戦以外にもクリアしなければならない条件があり、それが少々面倒なため、改めて気合を入れる必要がある。


「まずするべきはっと……」


 ステータス画面のレベルを適当に2152として、ダンジョン管理人に見せる。

 年齢の割にレベルが高くて少々驚かれたが、この程度ならまだ許容範囲なためすぐに通してくれた。

 本来のレベルを見せたら、もう少し面倒なことになっていたかもしれない。

 

「よし、それじゃ行くか」


 こんなふうにして、俺は魔狼ダンジョンの中に入っていくのだった。



 それから約10分後、さっそく俺は魔物とエンカウントした。

 赤色の毛並みが特徴的な、高さ1メートルほどもある大きな狼――ファイアウルフだ。


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【ファイアウルフ】

 ・討伐推奨レベル:1200

 ・防火性に優れた赤色の毛皮に包まれた、狼型の魔物。俊敏な動きと、口から放たれる炎が強力。


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 ファイアウルフには、これまで俺が戦ってきた魔物とは大きく異なる特徴が存在する。

 それが――


「バウッ!」

「さっそくか!」


 ――ファイアウルフの口から放たれた炎の塊を、軽いステップで回避する。

 炎の塊は後方の壁にぶつかり、当たった箇所をチリッと燃やした。


 そう、その特徴とはずばり魔法を使うかどうか。

 厳密に言えば俺たちがスキルで使用する魔法とは少し違うんだが、効果としてはほとんど同じだ。


 そして俺は魔法を使う敵とほとんど戦ったことがない。

 強制的に遠距離戦を強いられるため、正直苦手としている。

 例えば相手が人間の魔法使いならば、速度に頼って接近し近距離戦を押し付ければいいんだが、魔物の場合はそうもいかない。

 魔法を使えるだけじゃなく、運動能力まで優れている場合が多い。


 だけどいつまでも苦手とばかり言ってられない。

 これから上のランクに行くにつれて、こういった敵は増えていくのだ。

 少しでも経験を積み、俺なりの戦い方を見出す必要がある。


「――――ッ、いま!」


 ただ苦手とは言っても、いま相対しているのは俺よりレベルが3分の1の相手。

 出会い頭の炎には驚いたが、冷静に立ち回れば相手にすらならない。

 

 ファイアウルフが再び炎を放とうとしたときに生まれた隙をつき、高速で接近する。

 そして手に持つ無名剣ネームレスを勢いよく振り上げた。


「!?」


 一閃。

 たった一撃でファイアウルフの首は斬り落とされ、その場に崩れ落ちていく。


「ま、この程度なら楽勝か」


 小さくそう呟いた後、俺はファイアウルフの魔石を回収するのだった。

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