第149話 顔文字とスタンプ

 鬼塚ダンジョンの踏破を終えた後、俺は自身のステータスを改めて確認していた。


「……まさかこの一週間で、レベルが倍以上になるとはな」


 感慨深くそう呟く。

 このとんでもなさは、誰に説明されるまでもなく理解している。


 俺はそのまま視線をスキル欄に向けた。

 注目するのは、纏壁LV5とダンジョン内転移LV29の文字。


「纏壁は普通のスキルと同じで、スキルレベルをあげるごとに必要SP量が増えてくるから、LV5の段階でいったん止めてダンジョン内転移に回したんが……結局LV30には届かなかったか」


 LV29まで上げたというのに、大きな成長は見られない。

 だが、落ち込む必要はない。ダンジョン内転移をLV1からLV10に、LV10からLV20に上げる時も似たようなものだったからな。


 それよりも、


「ここまで一つスキルレベルを上げるのに必要なSP量が10000だったのに、LV30にする時だけ50000ときたか……いったい、どんな成長をしてくれるのやら」


 もしかして、瞬間転移タイム・ゼロに匹敵する技を覚えられたりとか?

 いや、それはさすがに高望みか。

 というか俺には、このスキルがこれ以上どの方向性で成長するのか皆目見当がつかない。

 LV30になったらドンッと成長するという予想も、ただ俺がそう信じ込んでいるだけかもしれないしな。


「まあ今考えることじゃないか。どうせすぐに分かることか」


 50000SPを獲得するまでには、あと1500ちょいレベルを上げる必要があるが、二日もあれば到達できる数字だ。

 その時を楽しみに待っておくとするとしよう。



 その日の夜。

 夕食の場で、俺は華に向かって言った。



「そうだ、華。この前言ってたギルドに関する説明だけど、明日の午後なら時間を取ってもらえるみたいだ。いけそうか?」

「うん、午後なら平気だよっ」

「午前は何か用事があるのか?」

「由衣先輩や零先輩と一緒に遊ぶ約束してるんだけど……そうだ、せっかくだしお兄ちゃんも一緒にくる?」

「俺も?」



 聞くところによると、遊ぶ場所は都心のショッピングモール。

 宵月の本部には近いし、改めて待ち合わせする必要がないから、悪い案ではないんだが。


「いきなり俺が現れたら、二人が困るだろ」

「そんなことないと思うけど……ちょっと待ってて」


 華がスマホに何かを打ち込む。

 そして、


「ほら!」


 メッセージアプリが開かれた画面を見せられる。

 華、由衣、零の三人のグループがあるみたいだ(知らなかった)。



 俺が参加してもいいかという問いに対して、

 由衣からは『大丈夫だよ!』という言葉と元気いっぱいな顔文字。

 零からは『OK』と書かれたスタンプと、『やったー』と書かれたスタンプが返事として送られてきていた。

 なんだか二人の性格が見えるようでちょっとだけ面白い。



「なら、せっかくだし参加させてもらおうかな」

「それでこそお兄ちゃん!」


 華はルンルン顔で、俺の参加が決定したことを二人に伝える。

 こうして、俺の明日の予定が決まるのだった。

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