第205話 光速レベルアップ ①

 リヴァイアサン討伐後。

 転移魔法で地上に帰還した俺は、ここでいったん今のステータスを確認することにした。


 レベルアップのおかげで、多くの数値が順調に上がっている。

 そんな中、ある一項目で俺の目が止まった。



 ――――――――――――――


 MP:76920/101840


 ――――――――――――――



「ふーむ、思ったよりも減ってるな……」


 Aランクダンジョンを攻略する以上、それなりにMPを使うことは覚悟していたが、これは想像以上の消費量だった。

 まあ、攻略の経緯を思い返してみればこれも当然かもしれないが。


 海龍ダンジョンの各階層をギミック無視して突破するためには、長距離のダンジョン内転移を使用する必要がある。

 加えて、発動時には自分の身を守るため留壁りゅうへきも発動している。

 合わせて考えれば、1階層につき約1000MPといったところか。

 海龍ダンジョンは全部で20階層なため、最下層に行くだけで20000MPも消費することになる。


「そして、その後にボスであるリヴァイアサンが待ち構えてるときた」


 リヴァイアサン戦では各強化系のスキルに加え、纏壁てんへき、留壁、そして瞬間転移タイム・ゼロを連続使用することで優勢を築いている。

 それらのスキルを出し惜しみせず使っていることもあり、俺の予想を上回るペースでMPを消費してしまっていたみたいだ。


「一応、高品質なMP回復薬ポーションは幾つも用意してきたけど、これには使用制限があるかな……よしっ」


 今後の攻略ペースを上げるためには、より効率的にMPを使えるようになった方がいい。

 そこで俺は1つのスキルのレベルを上げることに決めた。



 ――――――――――――――


 魔力回復LV2→魔力回復LV10

 合計消費量:10400SP


 ――――――――――――――



 レベル上げの操作を終え、俺はこくりと頷く。


「よし、これで完了っと。これまではダンジョン内転移を含めて、他の戦闘用スキルを優先して後回しにしていたけど、今は少しでも攻略効率を上げなくちゃな」


 他のスキルに比べて即効性に欠けることは間違いない。

 しかし、1日かけてダンジョンを周回する際にはかなり役立つスキルだ。

 具体的に言えば、1日に攻略できる回数が最低でも1回は増えるはず。

 このダンジョンの攻略報酬が400レベルアップ(4000SPに相当)と考えれば、数日もすれば元が取れる計算だ。


「よし、準備もできたことだし、2周目に入るとするか!」


 そうして俺は、再び海龍ダンジョンに挑戦するのだった。



 ◇◆◇



 約40分後。

 再び転移を繰り返して最下層にたどり着いた俺は、海面を眺めながらリヴァイアサンが出現するのを待っていた。


 隙を見せないよう、周囲に意識を向け続ける。


「強さだけなら大した問題じゃないが、こうして集中し続けなくちゃいけないのは少し面倒だな」


 これまでのダンジョンボスは、どれもボス部屋に入ればすぐに出現してくれていた。

 なかなか便利な仕様だったんだなと、改めて実感する。


 などと考えていると、とうとうリヴァイアサンに動きが見えた。

 ただし一戦目のように、レーザーを放ってきたりはしない。

 盛大に水しぶきを上げながら、なんとリヴァイアサンはその巨体で陸に上がってきた。


「っと、今回はそう来たか」


 海面から顔を覗かせたタイミングで瞬間転移タイム・ゼロを発動して接近しようと思っていたんだが、あてが外れた。

 とはいえ状況が悪くなったわけではない。

 地上で戦えるというなら、俺にとっては望むところだ。


「シャァァァ」

「――これは」


 リヴァイアサンの雄叫びに応じるように、周囲の海水が地上を中心に輪っかを描くようにして、空に向かって勢いよく噴出する。

 かと思えば、それらは空中で数十の水球へと姿を変えた。


 事前に調べた情報で、俺はこの攻撃に心当たりがあった。


「これは確か、リヴァイアサンが地上に上がってきた時の攻撃パターンの一つだったな。レーザーが敵単体を狙って直線的な軌道を描くのに対して、こちらは多数の敵を面で制圧するんだったか」


 その情報は正しかったようで、リヴァイアサンによって次々と水球が陸地に落とされ、衝突と同時に巨大な魔力爆発を起こしていく。

 このまま地上にいると、いずれその攻撃に飲み込まれることだろう。


「だったら、地上からいなくなればいいだけだ――瞬間転移タイム・ゼロ


 瞬間転移タイム・ゼロを発動し、俺はリヴァイアサンの頭上へと転移する。

 先ほどリヴァイアサンを上空へ投げ飛ばした時とは、しくも立場が入れ替わった形だ。


 そして上空ここからなら、狙うべき獲物エサがよく見える。


「隙だらけだぞ、リヴァイアサン!」

「ッ!? シャァァァ!」


 落下の勢いも加え、リヴァイアサンの頭上から全身全霊で無名剣ネームレスを振り下ろす。

 白銀の刃は敵の硬質や鎧を突破し、これまでで最も深いであろう一撃が入った。


「シャ、シャァァァ」


 そのダメージによって魔力操作もおぼつかなくなったのか、水球は形を失い、雨粒となって周囲に降り注ぐ。

 そんな海水のシャワーを浴びながら、俺は混乱のただ中にあるリヴァイアサンに連撃を加えていった。


 そして、それから数分後――



『経験値獲得 レベルが477アップしました』

『ダンジョン攻略報酬 レベルが400アップしました』



 ――見事リヴァイアサンの討伐に成功し、レベルが877もアップするのだった。


「よし、順調だな」


 今回は瞬間転移の発動回数も抑えられたので、MPもかなり節約できた。

 この調子でガンガン攻略するとしよう!



 その後、俺はMPが尽きるまで海龍ダンジョンを周回した。

 結果的に今日1日だけで、海龍ダンジョンを計6回も攻略するのだった。



『レベル:46879→51704』

(本日の上昇分、4825レベル)

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