第127話 VSサラマンダー

 ロックリザードの戦闘後は魔物と遭遇することもなく、順調に最下層まで下りることができた。

 目の前には、ボス部屋に繋がる大きな扉が立ちはだかっている。



「結局、ここまで30分もかからなかったな。初めてのBランクダンジョンをこんな簡単に進んで、本当にいいのかって気分になるが……まあ文句を言ってくる奴がいるわけでもないんだ。気にせず行こう」



 というわけで、さっそく扉を開けて中に入る。

 部屋の中心には、炎を纏ったトカゲ型の魔物――サラマンダーが鎮座していた。

 その大きさはかなりのもので、高さは1メートルに届くだろうか。


 ダンジョン挑戦前にボスの情報自体は調べていたが、念のため鑑定を使用する。


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【サラマンダー】

 ・討伐推奨レベル:10000

 ・体に火炎を纏った魔物。火炎を自由自在に操ることができ、さらには強靭な肉体による攻撃も強力。


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「うん、聞いた通りだ。これならなんとかなりそうだな」


 魔奪剣グリードを構えると、真正面からサラマンダーと向かい合う。

 先に動いたのは、相手だった。


「ガァアアア!」


 空間いっぱいに響き渡るサラマンダーの咆哮。

 呼応するように炎が一か所に集まったかと思えば、螺旋を描くようにして、一直線に俺めがけて放たれた。


 絶大な熱量を誇るその一撃を喰らえば、大ダメージは避けられないだろう。

 ――もっとも、当たればの話だが。


「喰らえ、魔奪剣」

「――!?」


 一閃。

 透明に輝く刃が触れた瞬間、炎の渦が一瞬で消滅する。

 同時に、魔奪剣の刃が赤く染まった。


「――いくぞ」


 想定外の事態を前にして動きを止めるサラマンダー。

 俺はその隙を逃さなかった。


 瞬間転移タイム・ゼロを使うまでもない。

 速度パラメータに頼った超速移動によって、一瞬でサラマンダーに肉薄する。

 攻撃を浴びせるべく魔奪剣を振り上げた直後、ふと思った。



 ……サラマンダーの体を纏うこの炎も、吸収できたりするんじゃないか?



 魔物が放つ炎や雷を吸収できるのであれば、それも不可能ではないはずだ。

 実験の意味も込めて、俺は吸収を試みた。

 結果――


「――っ、いけた!」


 見事、炎を吸収することに成功した。

 サラマンダーの体が大気に晒される。

 それはすなわち、サラマンダーを守る炎の鎧がなくなったということ。


 サラマンダーの鱗は、岩石のようだったロックリザードほどは硬くない。

 続けて振り下ろした刃が、深々とその体を貫いた。


「ガウゥゥゥ!」

「うおっ」


 とはいえ、さすがに一撃で死ぬほど甘い敵でもなかったらしい。

 サラマンダーは自分の体に突き刺さった刃さえお構いなしといった風に、勢い任せで体当たりを仕掛けてくる。

 魔奪剣を体から抜き、身軽な動きでそれを躱した俺は、その勢いを利用して――



「はあッ!」

「ガァァァアアアアアア!」



 ――全力で振るった刃が、サラマンダーの顔面を切り裂いた。


 それがトドメとなり、サラマンダーは断末魔を上げながらその場に崩れ落ちるのだった。



『ダンジョンボスを討伐しました』


『経験値獲得 レベルが1アップしました』


『ダンジョン攻略報酬 レベルが50アップしました』



「よし、攻略完了っと」


 脳内に鳴り響くシステム音を聞き、俺はそう呟いた。

 初めてのBランクダンジョンだったが、思っていたよりも随分楽に攻略が可能だった。

 まあ、レベルがレベルだから、それも当然なんだけどな。


「にしても……炎を吸収できたのはいいが、だいぶMPを使ったな」


 視界の片隅に浮かぶMPバーが、4分の1以上減少していた。

 そのほとんどはサラマンダーの纏う炎を吸収した際に減っていた。



 ああいった魔法は、魔物自身もかなりの魔力を使用して発動しているのだろう。

 たとえば、纏雷獣の纏雷とか。

 戦う魔物によっては有効な対抗手段になりそうだけど、使いどころは考えないといけないな。



 さて、後はサラマンダーから魔石を取り出し、報酬を受け取って地上に戻るだけだ。

 ちなみに鈴鹿ダンジョンの攻略報酬は魔力増幅石まりょくぞうふくせきという名の魔導具である。

 中に魔力が込められている石という点では魔石と同じなのだが、魔力増幅石の場合、単純なエネルギー資源として以外にも有効な活用方法がある。


 それが魔法の威力強化。

 魔法を放つ際、魔力増幅石の内部にある魔力を使用することで、格段に威力が跳ね上がるのだ。

 そのため魔法使いの方々には大人気。かなりの値段で売却可能というわけだ。


 俺はわくわくしながら、その報酬が現れるのを待っていたのだが……



「全然こないな」



 どれだけ時間が経っても、報酬が与えられる様子がなかった。

 普通だったらとっくに与えられているはずなのだが……


「待てよ。この展開、どこかで経験した気が――」


 嫌な予感がした、その直後だった。



『本ダンジョンを初挑戦で攻略したことを確認しました』


『本ダンジョンを単独ソロで攻略したことを確認しました』


『本ダンジョンに足を踏み入れてから60分以内に攻略したことを確認しました』



『条件:【神速(しんそく)の狩人(かりうど)】をクリアしました』


『エクストラボス、【グリフォン】が出現します』



「やっぱりか!」


 いつの間に出現したのか、翼がはためく音を響かせながら上空に浮かんでいたのは、大鷲の上半身と翼に、獅子の下半身を持った魔物――グリフォンだった。



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【グリフォン】

 ・討伐推奨レベル:25000

 ・エクストラボス:鈴鹿ダンジョン


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 天音 凛 19歳 男 レベル:14418

 称号:ダンジョン踏破者(10/10)・無名の剣豪・終焉を齎す者(ERROR)・賢者を超えし者

 SP:4510

 HP:112500/112500 MP:23150/31680

 攻撃力:25740

 耐久力:22060

 速 度:25930

 知 性:25180

 精神力:21850

 幸 運:23420

 ユニークスキル:ダンジョン内転移LV21・略奪者LV1

 パッシブスキル:身体強化LV10・剛力LV10・高速移動LV10・魔力回復LV2・魔力上昇LV10・状態異常耐性LV4

 アクティブスキル:金剛力LV10・疾風LV10・起死回生LV1・初級魔法LV3・纏壁LV1・浄化魔法LV1・索敵LV4・隠密LV4・鑑定LV1・アイテムボックスLV6・隠蔽LV1


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