第118話 ※薔子視点・鬱展開注意
***ご注意*******************************
この話以降、いわゆる鬱展開になります。
救いのない話、ハッピーエンド以外の話が苦手な方は閲覧をお控えいただきますようお願い申し上げます。
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自分の家が、ほかの家と違うということに気づいたのは小学校に上がるころだった。
母親は腎臓に病を抱えていて、芽衣を産んでからは頻繁に入退院を繰り返していたし、父親は不在のことが多かった。
母方の祖母が同居していて、由衣と芽衣の世話をしてくれた。
普通の家じゃお父さんとお母さんがいて、由衣のようにおばあちゃんにご飯をつくってもらったり、運動会に来てもらったりするのは、どうやら変なことらしい。
おばあちゃんの古臭いお弁当の味も、参観の日に他の両親に比べて見劣りする容姿も恥ずかしくてたまらなかった。
でも十歳のころ、その祖母も死んで、後から襲ってきた地獄の日々に比べたら、そんなの笑い話だった。
昔から冷静に周囲と自分を観察する目を持っていたから、由衣はかなり早い段階で自分の容姿が極めて優れているということを理解していた。
目上の人間や男からはかわいがられ、ちやほやされるという利得がついたが、同性からは既に保育所時代からこれでもかといういじめと嫉妬を喰らっていた。
優遇と嫌がらせと、秤にかけたら少し嫌がらせのほうに傾くかと思われた。
それでも由衣は自分が好きだった。
自分の武器はこれしかないと思っていた。
明るく可憐な子供として周囲の大人の庇護を買い、自立できるまで生き延びなければならない。
大人しくて引っ込み思案の芽衣を守ってやらなければならない。そう思っていた。
祖母が死んで年金がストップし、病弱な母と働かない父に貯金などあるはずもなく、
生活保護費を得ても、それを翌日には全てパチンコですってしまうような父親で、家にいるときは常に酔っぱらって酒臭い息をしている。
ほかに比べるものもないから、父親はそういうものだと由衣は思っていた。
ある日、風呂場から出ると、待ち構えていたような父親に出くわした。
パンツ一枚にバスタオルを巻いていた由衣は、汚らわしい視線に身震いがした。
「何?」
思わず棘のある言い方になったが、それが相手にきっかけを与えてしまったのか、父親は物も言わず由衣を殴りつけた。
それが最初だった。
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