第62話
街灯が月明かりのように白く優しく照らす道をしばらく走った後、高遠のマンション付近までやってきたころに一臣は口を開いた。
「似てるんだよ。お前とあの子」
言葉の趣旨が理解できず、高遠は首を傾げた。
「いろんなことを抱え込みやすくて、甘えるのが苦手。不器用で自分の周りに壁を作るくせに、本当は誰よりも寂しがり屋」
一臣は軽やかに並べた。
「当たってるだろ」
「清瀬さんはそうかもしれないけど、俺は違う」
「あっそ」
一臣は笑ってブレーキを踏み、路肩に車を停車させる。
「とにかく気になるんだよ。しばらく誰かがちゃんと見てあげないとなって思ってさ。だから、お前がいてくれてよかった」
「どういたしまして」
高遠は車を降りながら思った。
あの子を見たとき感じた、どこかで見たという感覚。
あれは、もしかすると自分に似たものを感じ、引き寄せられたのかもしれない。
一臣の言うとおり、芽衣と自分には何かしら通じるものがあるのかもしれなかった。
「送ってくれてサンキュ。じゃ、またな」
スポーツバッグを肩にひっかけて帰ろうとすると、
「高遠」
一臣は呼びとめて言った。
「自分を責めるなとは言わない。でも、今とは別のやり方で、お前は人を愛せるはずなんだ。だから……」
親友の切迫した瞳を見つめ、高遠は寂しく微笑んだ。
「おやすみ」
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