第9話

高遠がそのことについてコメントしようとしたところ、


『そろそろ・家を出る・お時間です』


スマホのアラーム機能が、ご丁寧にも出勤時間を教えてくれた。


「やばい、乗り遅れる」


高遠は焦ったように薔子しょうこを振り向き、


「いいからとにかく出ていけ。鍵は閉めなくていいから。分かったな」


と言い残すと、玄関を飛び出して勢いよく走っていった。






「どうしたの。何か顔色悪くない?」


職場に足を踏み入れるなり先輩から声をかけられ、高遠は大げさな笑顔を顔に張りつけた。


「そんなことないっすよ」


「さては昨日、飲みすぎたな? 理美と佳織から聞いたぞ。高遠、大暴れだったんだって?」


茶化すように言って、先輩の女性は高遠をひじで小突いた。

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