第3話


小さなあくびを一つして、「よいしょ」と女性は身を起こしてベッドの縁に座った。


怖がる様子も泣くそぶりもなく、ごく自然な動作だった。


それでようやく、高遠たかとおは切り出すことができた。


「すいません。俺、あなたに何かしましたか」


まともな口調のつもりだったが、途中で声が引っくり返って変な調子になった。


女性はきょとんとした顔でこちらを見上げている。


その様子を見て、高遠は早口でまくし立てた。


「実は俺、昨夜のこと何も覚えてなくて。本当に失礼なんですが、あなたの名前も知らないんです。どういう流れでこうなったのか、よかったら教えてもらえませんか」


話しているうちに少しずつ気が落ちついてきて、高遠は目の前の女性をもう一度よく観察する機会を得た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る