第2話

思い出そうとして諦め、高遠たかとおは頭を振った。


ともかく、この状況を何とかしなければならない。


だが、どうしたものだろうか。


起こさなければ話は始まらないが、彼女が起きたとき、どんな反応を示すのか想像もつかなかった。


悲鳴を上げられたら――つかみかかってこられたら――泣き出されたら――。


考えれば考えるほど深みにはまって動けなくなる。


口の中がからからに渇いて、心臓がこれまでにない熱さで鼓動を打っている。


意味もなく左右に二、三回ステップを踏んだところで、彼女が『ぱっちり』という擬音が聞こえてきそうな様子で目を開けた。


ベッドに身を横たえたまま、高遠を目に映してにっこりと笑う。


「おはよー」


甘い声で言い、小首を傾げてみせる。


愛らしさとなまめかしさが奇妙に溶け合った表情だった。


「あの」


言いかけて口ごもり、高遠は再び口を開いた。


「あの……」


何も言葉が出てこない。


人間、動転するとここまで舌が回らなくなるものなのかと、他人事ひとごとのような感想を覚える。

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