俺の部屋に住みついた美少女が出ていってくれない件

橘むつみ

第1話


「……嘘だ…………」


深緑色のカーテンの隙間から差し込む朝の光も、鳥のさえずりも本物だが、ベッドの上で眠る女の姿だけは思考が拒否していた。何かの間違いだと。


午前六時五十六分。


枕元に置いたスマホの時刻表示を見て、小村高遠こむら・たかとおはベッドからはね起きた。


古びたスプリングが悲鳴を上げ、しわの寄ったシーツの上で女性が「うう~ん」と身を丸めて寝返りを打つ。


その拍子ひょうしに薄い青のタオルケットがめくれ、なまめかしい姿があらわになった。


その女性は、薄桃色のブラジャーにショーツという下着姿で、高遠のベッドの左側にくの字になって横たわっていた。


肌は気味が悪いほど白く、赤味がかった茶髪はウェーブして、腰のあたりまでゆるやかに流れ落ちている。


形のいい胸と細い腰、太ももから足の先にかけての美しい線に息を飲む。


「う……うわあ……」


何より高遠を混乱させていたのは、『その女性に全く見覚えがない』ということだった。


こんな綺麗な女性、見たことがない。


もちろん、知り合いにもいない。


記憶の底を探ってみても、頭痛がするばかりで何も出てこない。


昨日の夜、職場の同僚と飲みに行ったところまでは覚えているのだが――。

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