第28話 ※一臣視点

***一臣視点***


来院したときから、顔色の悪さは気になっていた。


だから施術が終わって立ち上がろうとしたとき、彼女がぐらりとバランスを崩しても、前田一臣まえだ・かずおみはさほど驚かなかった。


即座に手を伸ばし、彼女の両肩をつかんで支える。


「すみません、私……」


言いながら、気分が悪いのか彼女は口元を手で覆う。


「大丈夫ですよ。ゆっくり横になってください」


一臣は目の前にある施術用ベッドに、再び彼女を寝かせることにした。


「あおむけより、横を向いたほうが楽ですか」


と聞くと、彼女は頷いてベッドの上で横向きになった。


「体育座りみたいな感じで足を折りたたんで、ふくらはぎを心臓に近づけてみてください。ちょっとましになると思います」


おとなしく彼女がハリネズミのように丸くなっているのを見て、一臣は近づいてきた先輩に声をかけた。

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