第29話 ※一臣視点

「ちょっとの間、抜けてもいいですか。少し休んでもらって様子見たいので」


「貧血?」


「みたいですね。ちょっと目まいを起こされて」


それを聞いた彼女が、


「すいません」


と謝りながら体を起そうとしたので、


清瀬きよせさん。大丈夫ですよ。まだ起き上がらなくてもいいんで、ゆっくりしててください」


きっぱりと言い切られ、彼女は再び体を横たえて目を閉じた。


先輩が去った後、一臣はベッドのそばでカルテを確認した。


清瀬芽衣きよせ・めい、二十歳、会社員。


初来院は一年ほど前で、当時はデスクワークで肩こりが激しく、頭痛がしたり首が回らなくなるといった症状だった。


週に一、二回の通院を続けることで、これらの症状は徐々に改善されており、貧血や目まいといった症状を訴えたという履歴はなかった。

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