第21話

辛辣しんらつな口調で言った一臣は、声を改めて、


「なあ高遠。悪いこと言わないから、その女追い出せ。そいつの目的が何にせよ、関わり合いになったところでロクなことにならないぞ。分かってるだろ」


「いや、それがさ。今朝起きたらいなくなってたんだよ」


高遠の言葉に、しばらく唇を半開きにしていた一臣だったが、ほっとしたように言った。


「そっか。よかったじゃん、災難になる前で」


「まあ、そうなんだけどな。ちょっと気になることもあるんだよな……」


高遠は複雑な表情で呟く。


「放っとけって、忘れろ忘れろ」


両手を大きく打ち鳴らし、一臣はきっぱりと言い切った。


「全部お前の妄想だったんだよ、妄想。よしんば現実としても、そんな女、頭がおかしいに決まってる。まともに相手するようなもんじゃない」


腕組みすると、一臣は理路整然りろせいぜんと言ってのける。


「ついでに言うと、自業自得じごうじとくだぞ。高遠」


「俺?」


間抜けな声を上げて、高遠は自分で自分を指さす。

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