第111話

高遠の心の声が聞こえようはずもなかったが、門田はややあってから、まるで今思いついたように切り出した。


「当時、実行犯だった少年の連絡先を知っています」


息を呑む音が電話越しに響き渡る。


「恐らく、由衣さんがそこに身を寄せている可能性は低いでしょう。しかし一応、念のため、私のほうから連絡をとってみることはできる」


「会わせてください」


高遠は周囲を憚ることなく叫んだ。


「会わせてください、その人に」


「先方に申し入れてみます。もし彼が承諾してくれるなら、面会できるよう取り計らいましょう」


「ありがとうございます」


高遠は見えもしないのに、膝につくほど頭を下げて礼を言った。

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