第68話
「もういい」
「施術中だ、勝手に動くな」
「いいっつってんだろ。お前の説教聞くために来たんじゃねえんだよ」
足のツボを刺激され、高遠は「うおおお!!!」と激痛にのたうち回った。
悲鳴を聞いて飛んできた男性に、
「すいません、院長。知り合いだったので、ちょっと話が盛り上がっちゃって」
にこやかに説明する一臣の背後で、高遠は拳を握り締める。
「後で覚えてろよ」
恨みを込めて罵ると、
「とにかく。お前のそれ、一種の病気だから。『女を助けたい病』」
何事もなかったかのように施術を再開し、一臣は的確に言い切った。
「お前が求めてるのは恋人を持つことじゃなく、女の子の恩人になることなんだよ。だからいつまでたってもすれ違うし、気持ちが噛み合わない。
困っている子を助けてあげるのが悪いとは言わない。芽衣ちゃんの件もあるし、むしろ俺はお前に感謝してるぐらいだよ。でもな」
一臣はいったん言葉を切って、あおむけになった高遠の目を覗き込んだ。
「お前はそれで気持ちがいいんだろうけど、中途半端に優しくされて、突き放されたほうはたまったもんじゃないぞ」
ベッドの上では逃げ場すらなく、目を逸らすことしかできない。
「その女と地獄の果てまで行く覚悟なら、俺はもう止めない。でも、そうじゃないんだったら、無理やり追い出してでも関係を切れ。時には心を鬼にすることだって必要なんだよ。いつまでも今みたいなこと続けてたらお前、いつか」
そのときタイミングよくスマホが振動し、一臣の言葉を遮った。
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