第5話


柔らかな胸の感触に、高遠はぎょっとして振り向いた。


「え、何」


言葉はキスによってさえぎられた。


彼女の甘い唇が、花弁はなびらのように重ねられる。


振りほどくと、彼女は潤んだ瞳で、


「ねえ。もう一回しよ?」


「しよって何を」


乾いた声で問うと、くすくす笑っている。


高遠の顔から血の気が引いた。


昨日のことは酔っていて、まるっきり覚えていない。


けれど、この状況。


同じベッドに寝ていた女。下着姿の見知らぬ女。


しかも妙に落ちつき払った様子の、手慣れた風なこの女。

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