第36話
「だから、勝手に人のベッドで寝るなって」
いらだちを抑えきれずに高遠は声を荒げた。
「勝手に出ていってごめんね。寂しかった?」
――駄目だ。この女、日本語通じない。
諦めかけた高遠だったが、楽しげにくつろいでいる薔子を見ていると、『これ以上この女の好きにさせてたまるか』という思いが強まった。
「お前さ、分かってる?勝手に他人の家の合鍵作って入るっていう行為は、立派な犯罪なの。通報されても文句言えないんだぞ」
「分かってるよー」
あくびをしながら、薔子は
「でも、結婚してるなら別でしょ?」
「誰がいつお前と結婚したよ」
「ちょっと順番が前後しただけだもん。いつかはするんだからいいよね」
「よくない。全然よくない。お前な、」
言葉の途中で薔子が唇を重ねてきたので、高遠の主張は一時中断された。
相変わらずキスがうまい。たまらなく甘い味がする。
薔子は高遠の背中に左手を回し、右手で高遠の手をとって自分の頬に当てる。
その頬は濡れたように冷たかった。
「駄目?」
小さなささやき声、熱を帯びた潤んだ目だった。
計算ずくだと分かっていても、
高遠は頬に当てられた手を握って薔子の肩を押さえ、ベッドの上に軽く押し倒した。
薔子はなすがままにされていたが、高遠が彼女の着ていたスカートの裾をめくり上げると、かすかに顔を強張らせた。
「これ、何だよ」
押し殺した声で高遠は言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます