第16話

「……それで何だよ」


高遠の背中を冷や汗が伝う。


黙っている薔子にれて、


「言っとくけど、その手には騙されないからな。俺は酔って女を襲うような人間じゃない。したがって、俺とお前の間には何の関係もない!以上、終わり!」


早口でまくし立てる高遠を、大きな瞳が見つめている。


そこにどのような感情が映っているのか、あるいは何も宿っていないのか、高遠には推しはかることができなかった。


やがてゆっくりと、神妙しんみょうな顔つきで薔子しょうこは言った。


「本当に覚えてないの?」


その一言が、高遠の威勢いせいにひびを入れた。

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