第156話
「やっぱりそうなんじゃん」
芽衣は辛辣な笑みを浮かべる。
「呆れた。どんだけ男好きなの。ドン引きだよ」
「誤解だよ、芽衣ちゃん。由衣は」
言いかけた高遠を、
「高遠さんは黙っててください!」
ぴしゃりと芽衣は撥ねつけた。
そして嘲りと敵意に満ちた表情で、由衣を見下ろす。
「お姉ちゃんには高遠さんがいるじゃない。なのに、私に元カレをとられるのが嫌なわけ?
分かってるよ。お姉ちゃんは私に一つでも負けるのが嫌なんでしょう。
昔からそうだったもんね。勉強も運動も友達や男の子のことも、全部一人占めしなきゃ気がすまないんだよ。たとえもう入らない服だろうと、使い古しのおもちゃだろうと、私が欲しがるものは何一つ譲らなかったもん。そういうことなんでしょ?」
高遠は由衣に目で言っていた。
黙ってないでちゃんと話せ。自分が言いたいこと、本当の気持ちを伝えろと。
だが由衣は力なく打ちしおれたまま、芽衣と目を合わせることができずにうつむいている。
これでは説得どころか、会話にすらならない。
やむを得ず高遠は、もう一度だけ口を開こうとした。
しかし、それに先んじて芽衣が言った。
「とにかく、二人とも帰って。私はあなたたちと一緒には住まない。二人でどうぞお幸せに」
「芽衣ちゃん」
「離して!!」
肩をつかもうと伸ばしかけた手を思いっきり振り払い、芽衣は高遠を睨みつけた。
このまま別れたら駄目だという心と、ここは一度引きあげて、頭が冷えたころにもう一度来ようという理性が同時に声を上げている。
高遠は深呼吸して、言った。
「頼む。話を聞いてほしい。信じられないかもしれないけど、君は桐生って人に騙されてるんだ」
「騙したのは高遠さんじゃない!」
芽衣は激昂した。
「辛くなったらいつでも電話してって、待ってるからって言ったのに……」
その瞳から大粒の涙が溢れ出し、高遠は心底うろたえた。
目から頬へ流れる涙を拭うこともせず、芽衣は高遠を
「嘘つき。高遠さんも結局お姉ちゃんと同じ。一番大事なときに、私を置いて逃げていく。二人で一生やってれば?私はもう、あんたたちとは何の関係もない」
由衣の背を突き飛ばし、高遠の肩を押しやって、芽衣は玄関ドアの前で言い放った。
「帰って。……二度と来ないで」
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